JR東日本の烏山線(EV-E301系)、男鹿線(EV-E801系)およびJR九州の筑豊本線・香椎線(BEC819系)で運行されている蓄電池駆動電車ですがいずれも交流用の車両であり直流用の車両は実用化されていません。しかし、JR西日本も直流用の223系2000番台を用いた試験列車を製作し実用のための実験を行っています。そこで、JR西日本で蓄電池駆動電車を導入するとすればどの路線となるのか考えてみたいと思います。
蓄電池駆動電車について
蓄電池駆動電車とは
走行に用いる電力を架線からではなく、あらかじめ̠架線下で充電を行った充電池から供給を行う車両です。現時点では、交流電力で充電を行うタイプの車両が実用化されており、JR東日本およびJR九州で実用化され運行されています。
JR東日本では、2014年3月から栃木県の烏山線(宝積寺駅~烏山駅)でEV-E301系、秋田県の男鹿線(追分駅~男鹿駅)でEV-E801系が運行されています。また、JR九州では筑豊本線(折尾駅~若松駅)と香椎線(西戸崎駅~宇美駅)でBEC819系が走行しています。なお、これらの路線は交流電化されている路線ですが、JR西日本でも直流用の試作車を製作した経緯がありますので直流電力により蓄電池に充電を行い走行することは可能でしょう。
蓄電池駆動電車導入の条件
蓄電池駆動電車を導入するにあたっては、次の条件が必要であると考えています。
- 非電化区間が30キロメートル以下であること
現在使用されている蓄電池の性能上の問題です。将来的には長距離が走行可能である車両が開発される可能性がありますが、技術上の問題で現時点ではこれぐらいの距離が上限と考えられます。
- 投入される路線が非電化路線であること
電化されている路線に蓄電池駆動電車を投入する意味はないので、必然的に非電化路線が対象と考えられます。蓄電池駆動電車導入により、電化工事期間の列車の運休が避けられることと車両性能の向上により速達化(現在のディーゼル車には性能が高い車両もありますが・・・)を図ることが可能となるでしょう。特にキハ40系等の古い車両を使用している区間では大きな効果が得られるものと思います。
- 列車本数がある程度ある路線(最低でも2時間に1本程度)
技術的には、列車本数は影響はないでしょうがコスト面から考慮した場合に車両価格が高額となる蓄電池駆動電車を列車本数の少ない路線に投入するメリットは小さいと考えます。利用者が日常的に利用できる範囲の列車本数が確保されている路線(最低限2時間に1本程度と考えますが1時間1本程度あることが望ましい)が対象となるでしょう。
- 電化路線と接している路線
駅構内に架線が必要となるため、既存の電化路線と接している路線が対象になるでしょう。もし、電化路線と接していないのであれば電力施設を設置する必要があるため蓄電池駆動電車よりも性能の高い気動車を導入するほうがコスト的に安くつくと思われます。
JR西日本の非電化路線で対象と考えられる路線
次の路線が対象としてふさわしいのでないかと思います。なお、氷見線(高岡駅~氷見駅)・城端線(高岡駅~城端駅)については、新型気動車投入および「あいの風とやま鉄道」への経営移管が決定しているため対象から外します。また、高山本線(猪谷駅~富山駅)についても「あいの風とやま鉄道」への経営移管となりそうなので同様に対象外とします。
姫新線(姫路駅~播磨新宮駅 22.1キロメートル)
列車本数も多く(日中でも1時間2本程度)、距離的にも条件を満たしています。また、姫路駅は電化路線である山陽本線・播但線が乗り入れています。蓄電池駆動電車を投入するには最適の場所でしょう。ただし、この区間は税金により新型の軌道車キハ122形・キハ127形が投入されているためこれらの車両が老朽化してからとなる可能性が高いです。地元の合意が得られれば、これらの車両を転属させて蓄電池駆動電車の投入となるかもしれません。
吉備線(桃太郎線)(岡山駅~総社駅 20.4キロメートル)
吉備線も条件を満たしていると思います。列車本数も日中は1時間1本あり、通勤通学時間帯は1時間に2本あります。また、岡山駅・総社駅の双方ともに電化路線である山陽本線・伯備線が乗り入れています。こちらの路線は、現在LRT化計画があるのでそれが実現の壁となる可能性が高いです。
しかし、私個人の意見では電化工事中に列車を止める必要があり、JRのネットワークから外れるLRTよりは、蓄電池駆動電車の投入が好ましいと考えています。
境線(米子駅~境港駅 17.9キロメートル)
境線は、列車本数が1時間に1本程度で非電化(米子駅~後藤駅は一応直流電化していますが・・・)であり、非電化路線のため対象となりえると思います。米子駅で電化路線である山陰本線と接続しているので条件を満たしています。また、この路線は計画の支障になる計画は現在ないため、JR西日本最初の蓄電池駆動電車の導入例となる可能性が高いと思います。
山陽本線(下関駅~門司駅 6.3キロメートル)
JR西日本の区間からは外れますが、関門海峡部分の区間も可能性があると思います。
この区間は、電化されていますが門司駅構内にデッドセクションがあり直流区間と交流区間の両方が存在しています。そこで、蓄電池駆動電車を投入することで車齢の高くなっている関門海峡専用の交直両用車両415系を置き換えることが可能です。列車本数的にも1時間あたり2~3本程度あり列車本数も十分にあります。門司駅で充電すれば既に開発済みのBEC819系で運行できるため開発費を抑えることが可能となるでしょう。
まとめ
JR西日本の区間で蓄電池駆動電車の導入について検討してみました。最後の山陽本線はJR九州の区間であるため対象外と考えても3つの区間が候補として考えられます。他の計画等による影響を考慮すると境線が一番可能性が高いのではないかと思われます。是非、境線を走行する蓄電池駆動電車の姿を見てみたいものです。