2026年度も猫又止まり黒部峡谷鉄道が“全線復旧を急がない”という選択

黒部峡谷鉄道紅葉シーズン ダイヤ改正2026

 2025年12月19日に、黒部峡谷鉄道は2026年度の運行予定について発表しました。それによると、2026年度は2026年4月20日(月)より宇奈月駅~笹平駅で運行開始し、4月23日(木)より宇奈月駅~猫又駅の区間で運行します。なお、2026年度も猫又駅での折り返し運転ですが復旧工事の進捗次第では10月1日(木)~11月30日(月)の期間は全線運行の可能性もあります。

2026年度 営業運転(予定)のご案内について│黒部峡谷鉄道トロッコ電車

黒部峡谷鉄道ホームページ

2026年度も続く猫又止まり

それでも黒部峡谷鉄道がトロッコ列車を走らせるのは

 2025年12月19日のプレスリリースで、黒部峡谷鉄道トロッコ列車は2026年9月30日までは、猫又止まりで運行されることが明らかになりました。なお、10月1日以降については復旧工事次第となりますが夏の観光シーズンには欅平まで運行されることはありません。

 観光客の視点で見た場合、「また全線走らないのか」と受け取られますが、鉄道ファンとしては“なぜ猫又まででも走らせるのか”に注目したいと思います。

猫又止まり=中途半端なのか

宇奈月駅〜猫又駅間は、距離だけを見れば全線の半分にもなりませんがこの区間には、

  • 黒部川に沿った急峻な地形
  • トンネル・橋梁が連続する線形
  • 工事用鉄道としての本来の姿

といった、黒部峡谷鉄道の本質が詰まっていると思います。

欅平駅に行けないから価値が落ちる、というのは観光的な見方であり鉄道として見た場合「最も黒部らしい区間が生きている」とも言えるのではないでしょうか。

黒部峡谷鉄道は「復旧を急がない」という選択

注目すべきポイントは、2026年度も無理に全線復旧を目指していない点だと思います。

黒部峡谷鉄道は、

  • 観光鉄道
  • 工事用鉄道
    という二つの顔を持っています。

災害後の復旧においては、黒部峡谷鉄道は安全性と工事効率を最優先し、観光側は“できる範囲で運行する”という姿勢が一貫していています。

これは地方私鉄や第三セクターでよく見られる「とにかく全線再開をアピールする」動きとは対照的で、極めて工事用鉄道らしい合理的判断と言えるのではないでしょうか。

10月以降「工事次第」という含みを持たしている点について

2026年10月以降について、「復旧工事次第」と表現されている点もまた見どころです。

これは、

  • 完全に可能性を閉ざしていない
  • しかし確約もしない

という、非常に慎重な言い回しをしています。

紅葉シーズンに欅平まで到達できれば理想ですが、黒部峡谷という場所を考えた場合、自然条件ひとつで計画が崩れるのは日常でもあります。

期待を煽らず、淡々と現実を伝える姿勢に、長年この地で鉄道を維持してきた事業者の“慣れ”すら感じることが出来るのはないでしょうか。

鉄道ファンとしてどう見るか

猫又止まりが続くことを「残念」と捉えるのは簡単ですが。

  • 災害後も線路を生かし続けていること
  • 工事用鉄道としての使命を優先していること
  • 無理な復旧をしない判断力

これらを含めて、今の黒部峡谷鉄道の姿だと考得るのが鉄道ファンとしての見方ではないでしょうか。

むしろ今は、

「全線走らない黒部峡谷鉄道を、どう記録し、どう語るか」

という、鉄道ファンにしかできない楽しみ方がある時期にあると思います。

まとめ

黒部峡谷鉄道は、2026年度は9月30日までは猫又駅止まりで運転します。また、10月1日以降は復旧工事の新着次第で欅平駅まで運行する可能性があります。観光よりも安全・工事を優先するという”黒部らしさ”が来年度も続きます。猫又駅止まりの今こそが、鉄道そのものを見る視点が問われるのではないでしょうか。

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