和歌山県御坊市を走る紀州鉄道は、鉄道事業の譲渡に向けて交渉を進めていましたが、最終的な合意に至らなかったことが明らかになりました。2026年6月には譲渡先が決まったと発表され、路線の存続に向けて前進したかに見えましたが、再び先行きが不透明になっています。
今回は、紀州鉄道の鉄道事業譲渡をめぐる経緯と、今後の課題について紹介します。
NHK ONE
紀州鉄道の鉄道事業譲渡が合意に至らず
紀州鉄道は、JR御坊駅から西御坊駅までの約2.7kmを結ぶ鉄道路線です。「日本一短いローカル私鉄」として知られ、通学など地域住民の移動手段であるとともに、観光資源としての役割も担っています。
しかし、利用者の減少などによって厳しい経営が続いており、運営会社は2026年中の鉄道事業廃止も視野に入れ、譲渡先を探していました。
2026年6月には、御坊市から鉄道事業の譲渡先が決まったことが発表され、存続に向けて一定の道筋が見えたと受け止められていました。
ところが、10月1日に開かれた御坊市地域公共交通活性化再生協議会の紀州鉄道部会で、運営会社から譲渡交渉が合意に至らなかったとの説明がありました。
御坊市の三浦源吾市長は10月9日の会見で、交渉がまとまらなかったことを明らかにしています。現時点で新たな譲渡先の候補は見つかっておらず、譲渡計画は白紙に戻りました。
譲渡先が見つからなければ廃線の可能性も
今回の交渉が合意に至らなかったことで、紀州鉄道は再び存続の危機に直面しています。
御坊市は鉄道の公共交通としての価値や観光資源としての価値を調査し、持続可能な運行に向けた支援のあり方を検討してきました。
ただし、鉄道事業を別の会社に譲渡できれば、それだけで経営上の課題が解決するわけではありません。利用者の確保に加え、車両や線路、踏切などの維持にも費用がかかります。
御坊市長も、運営会社側が今後の方向性を決めたうえで、市としての関わり方を考えたいとの考えを示しています。
今後、別の譲渡先が見つかるのか、あるいは鉄道事業の廃止という判断に至るのか、運営会社の方針が注目されます。
地域の鉄道をどう維持していくのか
紀州鉄道の存続問題は、鉄道会社だけで解決できるとは限らない課題を示しています。
鉄道を公共交通として維持するのであれば、利用者を増やす取り組みとともに、地域にとってどのような役割があるのかを整理し、必要に応じて自治体などがどこまで支援するのかを考える必要があります。
一方で、観光資源としての価値があることと、日常の交通手段として十分な利用があることは、必ずしも同じではありません。地域住民の移動手段としての必要性や、維持に必要な費用などを踏まえた検討も求められます。
紀州鉄道は、地域の人々に長く親しまれてきた鉄道です。譲渡交渉が合意に至らなかったことで、今後の存続をめぐる議論は改めて重要な局面を迎えています。


