JR西日本は、2023年7月の大雨による被災以降、運転を見合わせている美祢線について、2026年10月1日から代行バスの運行内容を変更すると発表しました。
今回の変更では、沿線住民の利用状況や要望などを踏まえて新たな停留所を設置するほか、一部の駅では代行バスの駅前への乗り入れを取りやめます。
さらに、JR西日本は今回の取り組みについて、将来のBRTを見据えた停留所設置場所の検証という意味合いも示しています。
美祢線の復旧・BRT化を考えるうえでも、注目される変更となりそうです。
美祢線代行バスの停留所新設・移設(ダイヤ変更含む)および
JR西日本ホームページ
山口DC期間中の道の駅「センザキッチン」までの延伸について
10月1日から美祢線代行バスの運行内容を変更
美祢線は、2023年7月の大雨によって厚狭駅~長門市駅間で大きな被害を受け、現在も鉄道による運転が再開されていません。
現在は鉄道の代わりに代行バスが運行されていますが、10月1日からその運行内容が変更されます。
今回の変更で大きなポイントとなるのが、代行バスの停留所新設です。
沿線住民からの要望などを踏まえ、これまでよりも地域の生活に近い場所に停留所を設けることで、利用しやすい交通手段を目指します。
新設される停留所は7カ所です。
駅だけを発着地点とするのではなく、沿線の道路事情や住民の利用を考慮して停留所を配置することは、鉄道とは異なるバスならではの特徴といえるでしょう。
BRTを見据えた停留所設置場所の検証も
今回の変更で特に注目したいのが、JR西日本が「BRTを見据えた停留所設置場所の検証」を行うとしている点です。
美祢線については、今後の地域交通のあり方としてBRTへの移行が検討されています。
BRTは「Bus Rapid Transit」の略で、バスを活用しながら専用道路や停留所の工夫、運行方法の改善などによって、鉄道に近い利便性を目指す交通システムです。
なお、美祢線で検討されているBRTは、専用道を整備する方式ではなく、一般道を走行するバスを基本とした形が想定されています。
BRTについては、鉄道駅をそのままバス停に置き換えるだけではなく、実際に利用する住民にとって便利な場所へ停留所を設置することが重要になります。
今回新設される停留所についても、実際に代行バスを運行しながら利用状況を確認することで、将来のBRTでどこに停留所を設置するのが適切なのかを検証することになります。
もちろん、今回の代行バス停留所がそのままBRTの正式な停留所になると決まったわけではありません。
しかし、実際の利用者の動向を確認しながら将来のBRTを考える取り組みと考えると、今回の変更は美祢線の今後を考えるうえで重要な意味を持ちそうです。
一部の駅では代行バスが駅前に乗り入れなくなる
alt="美祢線代行バスの乗り入れが中止となる湯ノ峠駅" class="wp-image-14258"/>一方で、今回の変更では新設だけでなく、既存の駅への乗り入れにも変化があります。
湯ノ峠駅・四郎ケ原駅・南大嶺駅・重安駅・板持駅では、代行バスの駅前への乗り入れを中止するなど、停留所の位置が変更されます。
これは一見すると利用者にとって不便になるようにも見えますが、道路幅が狭い場所での安全性や、バスの速達性を考慮したものです。
鉄道では駅の位置が固定されていますが、バスでは道路事情に合わせて停留所を移動できるというメリットがあります。
今回の変更は、こうしたバスの特性を生かしながら、美祢線沿線の交通をより利用しやすくしていくための取り組みともいえます。
山口DC期間中は仙崎地区へ快速便が3往復
alt="山口DC期間中 快速便3往復が乗り入れる「センザキッチン」" class="wp-image-14259"/>もう一つの注目点が、観光利用を意識した運行です。
2026年10月から12月まで開催される「山口デスティネーションキャンペーン(山口DC)」に合わせ、土休日には「山口DC快速」が運転されます。
この快速便は厚狭駅方面と長門市・仙崎地区を結び、道の駅「センザキッチン」付近まで3往復乗り入れる計画です。
「センザキッチン」へ乗り入れるのは、次の3往復です。
- 厚狭→長門市・仙崎方面
- 厚狭(9:45発)→センザキッチン(10:56着)
- 厚狭(11:45発)→センザキッチン(12:56着)
- 厚狭(13:35発)→センザキッチン(14:46着)
- 仙崎・長門市→厚狭方面
- センザキッチン(11:13発)→厚狭(12:24着)
- センザキッチン(13:43発)→厚狭(14:54着)
- センザキッチン(15:48発)→厚狭(17:00着)
通常の代行バスとは異なり、観光客にも利用してもらうことを意識した運行となっています。
仙崎地区には、道の駅「センザキッチン」のほか、金子みすゞ記念館などの観光スポットがあります。
美祢線を利用して長門市・仙崎方面を訪れる観光客にとって、乗り換えなしで観光エリアまで移動できることは大きなメリットになりそうです。
今回の快速便についても、単なる代行輸送ではなく、美祢線を活用した観光需要をどの程度取り込めるのかを確認する機会になるでしょう。
「山口DC」は、山口県とJRグループ、地元の観光関係者が一体となって展開する国内最大級の大型観光キャンペーンです。2026年10月1日~12月31日の期間に開催され観光列車・各種イベント・お得なきっぷの販売などが行われます。
美祢線のBRT化に向けた一歩となるのか
2023年の豪雨災害から3年あまりが経過した美祢線。
鉄道としての復旧には大きな費用が必要となる一方、沿線地域にとって美祢線は重要な交通手段です。
そのため、鉄道を復旧するのか、それともBRTなど別の交通手段へ転換するのかという議論が続いています。
今回の代行バスの変更は、そうした今後の美祢線のあり方を考えるうえでも興味深いものです。
特に、JR西日本がBRTを見据えた停留所の検証を明らかにしていることから、代行バスを単なる「鉄道が復旧するまでの代替交通」として運行するだけではなく、将来の地域交通を考えるための実証の場として活用していることが分かります。
新しい停留所を実際に利用する人がどれくらいいるのか、駅前と駅以外の停留所で利用状況にどのような違いが出るのか、そして観光客が快速便をどの程度利用するのか。
こうしたデータは、今後のBRTの運行ルートや停留所配置を考える際の重要な材料になると考えられます。
美祢線代行バスは、10月1日から新しい運行形態となります。
沿線住民にとっての「使いやすさ」を高めるとともに、山口DCでは観光需要も取り込みながら、将来の美祢線の姿を探る今回の取り組み。
美祢線のBRT化に向けて、実際のバス運行を通じた検証がどのように進んでいくのかにも注目したいところです。



