2024年春にデビューした273系特急「やくも」。振り子制御の刷新や車内設備の大幅改善など、381系からの進化は鉄道ファンのみならず一般の利用者からも注目を浴びました。さて、今回はJR西日本が増備を発表した273系についてモノクラス編成のみの3両編成があり得るのか見てみたいと思います。
381系時代は、なぜ6両・9両編成が成立していたのか
国鉄〜JR初期は「ピーク輸送重視」の時代だった
381系が活躍していた頃の「やくも」は、現在とは役割がまったく異なっていました。
- 帰省・団体利用
- 修学旅行
- ビジネス出張
- 航空・高速道路が未発達な時代の都市間輸送
これらを背景に、「やくも」は山陽と山陰を結ぶ幹線特急としての性格が強い特急列車でした。
そのため、
- 基本4両(4両化以前は3両)
- 多客期は8両もしくは9両
- 臨時増結も日常的
という、輸送力を最優先した編成思想が成り立っていたのでしょう。
人手とコストを“今ほど気にしなくてよかった”時代
381系時代は、
- 編成ごとに両数が違う
- 連結・切り離しが頻繁
- 車掌・検修の負担が大きい
といった点も、現在ほど問題視されなかった時代と言えるでしょう。
言い換えれば、
「非効率でも混雑をさばく」ことが正義だった時代でした。
273系で4両固定になった最大の理由
基準は「繁忙期」ではなく「平日昼間」
現在の「やくも」の利用実態を見ると、
- 平日昼間:空席が目立つ
- 休日:一定の利用
- 繁忙期:混雑するが限定的
という傾向がはっきりしていると言えるでしょう。
JR西日本はここで、
「年に数日の混雑」に合わせて車両を持つことをやめたものと思われます。
その結果として選ばれたのが、「365日の平均需要に最も合う4両編成」としての「やくも」でした。
固定編成化は、経営的には“非常においしい”
4両固定にすることで、
- 編成管理が単純になる
- 予備車を減らせる
- 検査・保守計画が立てやすい
- 乗務員運用を平準化できる
つまり、走らせるほどコスト効率が上がる構造になっています。
227系・521系・DEC700系など、近年のJR西日本の車両設計と同じ思想に基づいて製造された車両と言えるのではないでしょうか。
振り子特急は「短く・軽い」ほど有利
273系は振り子式車両です。
振り子車両は、
- 編成が短い
- 軽量
- 制御が単純
であるほど、
- 曲線通過性能
- 乗り心地
- 保守性
すべてが有利になります。そういう意味では、JR東海の「しなの」は編成が長いため「やくも」とは違い大変ではないかと思わ
れます。
381系時代には可能だった8両・9両編成は、現代のコスト・保守基準では“重すぎる”存在になっているようです。
なぜ3両編成やモノクラスは採用されなかったのか
3両編成が難しい理由
仮に3両編成を設定すると、
- 繁忙期に輸送力不足
- 指定席比率が低下
- 本数増加が必要になる
結果として、列車本数や要員で逆にコストが膨らむものと予想されます。
4両は、「最低限これだけは必要」という現実的なラインとしての設定だと思われます。実際に2025年12月27日の「やくも5号」に乗車した際は、立席の乗客が数人デッキで立っており8両でも輸送力の不足が発生していました。
グリーン車を外さなかった理由
273系のグリーン車は、
- 観光需要の取り込み
- ブランド価値の維持
- 価格差による収益確保
を担う“稼ぐ座席”としての存在です。
普通車を1両減らすより、グリーン車を1両外す方が経営的ダメージが大きいのではないでしょうか。
そのため、モノクラス編成が採用される可能性は低いと思います。
増備の際に、編成は変わるのか?
仮に今後、273系の追加増備が行われたとしても、
- 4両固定
- グリーン車付き
という基本構成は維持される可能性が高いと思います。
繁忙期の対応策は、
- 編成数の増加
- 臨時列車の設定
- 時間帯調整
といった「本数での対応」になると予想されます。
まとめ
381系の8両・9両編成は、「輸送力こそ正義」だった時代の象徴でした。
一方、273系の4両固定は、「持続可能な特急経営」を選んだ結果であると言えるでしょう
増結しない、短くならない――
それは「やくも」が衰退したからではなく、JR西日本が現実を見据えた選択をした証拠と言ってよいでしょう。


