京阪電鉄10月1日からカスハラ対策で名札の着用を廃止 東京メトロは4月1日・JR九州は2024年1月1日から

京阪13000系 京阪電気鉄道

京阪電鉄は2026年10月1日から、運輸系現業社員とアテンダントの名札の着用を廃止しました。社員のプライバシー保護やカスタマーハラスメント(カスハラ)対策が目的です。

鉄道業界では、東京メトロが2026年4月1日から名札の着用を省略しているほか、JR九州も2024年1月1日から在来線車内での乗務員の氏名表示を廃止しています。

今回は京阪電鉄の取り組みと、鉄道業界で名札や氏名表示の見直しが進んでいる背景について紹介します。

名札着用の廃止について

京阪電鉄ホームページ

京阪電鉄が10月1日から名札の着用を廃止

京阪電鉄は2026年9月28日、運輸系現業社員とアテンダントの名札着用を10月1日から廃止すると発表しました。

今回の対象は、駅係員や乗務員などの運輸系現業社員と、プレミアムカー・ライナーのアテンダントです。

京阪電鉄は、SNSなどへの無断投稿や個人情報の特定によるプライバシー侵害のリスクを踏まえ、社員の安全とプライバシーを守るために名札の着用を廃止します。

なお、今回の廃止に先立ち、2026年6月から一部の駅などで試行を実施していました。

名札の着用を廃止することで、社員の名前が第三者に知られ、インターネット上で個人が特定されるといった問題の防止を図ります。

東京メトロも2026年4月から名札の着用を省略

東京メトロも2026年4月1日から、社員の名札の着用を省略しています。

東京メトロは、社員の顔や名札が無断で撮影され、個人情報が拡散・特定されることによるプライバシー侵害やカスタマーハラスメントの発生を未然に防ぐことを目的に挙げています。

対象には、駅構内や乗務員室などで業務に従事する運輸系現業社員や技術系現業社員などが含まれます。

一方、名札の着用を省略しても、駅社員や乗務員はこれまでどおり制服を着用します。東京メトロは、利用者が困ったときにはこれまでどおり声をかけるよう案内しています。

リンク: 東京メトロ「名札の着用を省略します」

JR九州は2024年1月から乗務員の氏名表示を廃止

鉄道業界では、駅係員の名札だけでなく、列車内での乗務員の氏名表示についても見直しが進んできました。

JR九州は2024年1月1日から、在来線車内での運転士・車掌の氏名表示を廃止しています。

このように、鉄道会社によって対象や実施時期は異なりますが、利用者に氏名を表示する従来の方法を見直す動きが見られます。

名札の着用を省略する会社と、車内の氏名表示を廃止する会社では対応が異なりますが、社員のプライバシー保護や安心して働ける環境づくりが共通する背景となっています。

バス・タクシーでは2023年に氏名表示の義務を廃止

乗務員の氏名表示をめぐっては、鉄道以外の公共交通機関でも制度の見直しが行われています。

国土交通省は2023年8月1日、バスやタクシーなどの車内における乗務員等の氏名掲示義務を廃止しました。

この改正では、利用者の利便性を確保しながら乗務員等のプライバシーにも配慮し、安心して働ける職場環境の整備を促進することが目的として示されています。

ただし、これは道路運送法関係の制度改正であり、鉄道会社の名札廃止が同じ法改正によって義務付けられたわけではありません。鉄道各社は、それぞれの判断で名札や氏名表示の見直しを進めています。

リンク: 国土交通省「バス、タクシーなどの車内における乗務員等の氏名表示がなくなります!」

2026年10月1日からカスハラ対策が事業主の義務に

今回、京阪電鉄が名札の着用を廃止した2026年10月1日は、カスタマーハラスメント対策をめぐる制度上の節目でもあります。

2025年6月に公布された改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日から、事業主にはカスタマーハラスメントを防止するための措置を講じることが義務付けられました。

カスタマーハラスメントとは、顧客などによる社会通念上許容される範囲を超えた言動によって、労働者の就業環境が害されることなどを指します。

対策としては、会社の方針を明確にして従業員に周知することや、相談体制を整備することなどが求められます。

ただし、法律によって名札の廃止そのものが義務付けられたわけではありません。名札の着用を見直すことは、社員のプライバシー保護やカスハラ対策として各社が選択する取り組みの一つです。

リンク: 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」

乗務員の名前が車内に流れていた時代から

今回の名札廃止について調べていると、鉄道を長く見てきた人にとっては「時代が変わった」と感じる部分もあります。

現在では乗務員の名前を利用者に知らせない方向へ進んでいますが、かつては特急列車や新幹線などで、車内放送を使って運転士や車掌の名前を紹介することが珍しくありませんでした。

特に特急や新幹線の乗務は、乗務員にとっても一つの目標であり、花形列車を担当することが誇りにつながっていたと語られることがあります。

乗務員の名前を利用者に知らせることは、当時の鉄道における「責任を持って列車を運行している」という姿勢の表れでもあったのでしょう。

それが現在では、SNSなどを通じて名前や顔が簡単に拡散され、個人を特定される可能性があります。

そのため、乗務員個人の名前を利用者に公開するのではなく、会社として問い合わせやトラブルに対応できる仕組みを整える方向へ変わってきました。

昔は「名前を知ってもらうこと」が乗務員の誇りにもつながっていたのに対し、現在は「名前を公開しないことで社員を守る」ことが重視されるようになったわけです。

鉄道会社の名札や氏名表示をめぐる今回の動きは、単なる表示方法の変更だけではなく、鉄道の仕事に対する社会の見方や、社員と利用者との距離感が変化してきたことを感じさせるものなのかもしれません。

名札の廃止で利用者への対応はどう変わる?

駅係員や乗務員の名札は、利用者にとって、誰が対応したのかを確認する手段の一つでもありました。

一方で、名前と顔、勤務場所などの情報が組み合わされると、個人が特定される可能性があります。SNSが普及した現在では、業務中の写真や動画が本人の意図しない形でインターネット上に公開されるリスクも考えられます。

鉄道会社には、利用者からの問い合わせや苦情に適切に対応することと、社員個人のプライバシーを守ることの両方が求められます。

名札を廃止したからといって、利用者からの問い合わせや苦情に対応できなくなるわけではありません。必要な確認や対応を会社として行える仕組みを整えることも重要になります。

今回の京阪電鉄の取り組みは、東京メトロやJR九州などの動きとともに、公共交通機関における接客と個人情報保護のあり方を考える事例といえそうです。

今後、ほかの鉄道会社でも名札や氏名表示の見直しが進むのか、引き続き注目したいと思います。

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