JR西日本は2026年11月4日、輸送密度(平均通過人員)が1日2000人未満となっている19路線32線区について、2025年度の利用実績を踏まえた線区別の経営状況を公表しました。
岡山県に関係する区間も複数該当していますが、赤穂線の播州赤穂~長船間について少し気になる点がありました。
今回公表された数字を見ると、輸送密度1,729人に対して同区間の営業係数は652円となりました。
単純に数字だけを見ると、仮に輸送密度が1万人を超えるほど利用者が増えたとしても、赤字が解消しない可能性があります。
今回は赤穂線の数字を確認してみます。
輸送密度2,000人/日未満の線区別経営状況に関する情報開示
JR西日本ホームページ
赤穂線播州赤穂~長船間の営業係数は652円
JR西日本が公表した資料によると、赤穂線播州赤穂~長船間の経営状況は次の通りです。
| 項目 | 数値 |
| 営業キロ | 31.8km |
| 線区運輸収入 | 2.0億円 |
| 線区営業費用 | 13.0億円 |
| 収支率 | 15.3% |
| 線区営業係数 | 652円 |
※収入・費用・収支率・営業係数は2023~2025年度の3年間平均。
営業係数は100円の収入を得るために必要な費用を示す数字です。
つまり、赤穂線の播州赤穂~長船間では、100円の収入を得るために652円の費用がかかっている計算になります。
年間の収入は約2億円ですが、営業費用は約13億円。単純な差し引きでは約11億円の赤字です。
なお、ここでいう営業費用には本社や支社などの管理費は含まれていません。
輸送密度が1万人を超えても赤字になる?
単純計算すると
今回の数字で少し気になったのは、輸送密度が増加した場合に収支がどうなるのかという点です。
赤穂線播州赤穂~長船間の輸送密度は、1987年度には3183人でしたが、2025年度には1729人となりました。
1987年度と比較すると、およそ54%まで減少しています。
一方、仮に現在の輸送密度が約6倍になり、1万人を超えたとしたらどうでしょうか。
もちろん、実際には輸送密度と運輸収入が完全に比例するわけではありませんが、単純に現在の収入が利用者数に比例すると仮定してみます。
現在の年間収入約2億円が6倍になれば、約12億円です。
しかし、営業費用は約13億円ですから、単純計算ではまだ赤字が残ることになります。
さらに、利用者が6倍になれば、現在の列車本数では対応できず、増発や車両の増備が必要になる可能性があります。
実際はそんなに甘くないですが・・・
電車の消費電力や車両・設備の維持費なども増加するでしょう。
もちろん、既存の列車に余裕があれば、利用者の増加がそのまま収支改善につながる部分もあります。
しかし、赤穂線(播州赤穂~長船間)は利用者が増えても既存の列車で対応できるほど、輸送力に余裕があるわけではありません。
2023年5月8日には、利用者が列車に乗り切れない積み残しが発生し、JR西日本が急遽増便したこともありました。
一方、利用者が少ない岡山駅を5時台に出発する播州赤穂行きには、朝の岡山方面への通勤通学需要に対応するための送り込みのために6両編成や5両編成の列車が設定されています。また、岡山駅を20:41に発車する日生行き列車も6両編成となっています。
また、そのほかの時間帯でも岡山から長船間の利用者に対応するためこの区間での2両編成での運転は岡山駅を11時~15時までの時間帯に出発する列車のみとなっています。
このように、時間帯によって輸送力の供給には大きな差があります。利用者が多い時間帯には輸送力の確保が必要ですが、線区全体で見ると輸送力に余裕がある列車も存在します。
赤穂線(播州赤穂~長船間)の営業係数が652という数字になっている背景には、こうした時間帯ごとの需要の違いや、列車を運行するための固定的な費用なども関係していると考えられます。
輸送密度だけでは、線区の経営状況を判断できないことが分かります。
赤字額だけでなく費用の集計方法にも注目
鉄道会社が公表する線区別の収支は、実際の利用状況だけでなく、収入や費用をどのように各線区へ配分するかによっても数字が変わります。
例えば、先日JR四国が公表した2025年度の線区別収支では、予土線などの算定方法が見直され、過年度の営業係数も新しい方法で再計算されました。それにより予土線の数値が大きく変わっていることを取り上げました。
今回のJR西日本の資料でも、営業費用には本社・支社などの管理費が含まれていないことに注意が必要です。
また、JR西日本とJR四国が同じ基準で計算しているかは資料からは読み取れません。
営業係数や輸送密度は線区の状況を知るための重要な数字ですが、それだけで鉄道の価値や将来性を判断できるわけではありません。
赤穂線播州赤穂~長船間についても、利用者を増やす取り組みとともに、運行に必要な費用や地域交通としての役割を含めて考えていく必要がありそうです。


