(2026年9月7日追記)読売新聞の記事によると接近した列車は下りの作業用列車のようです。
【あわや…】JR西 線路内で作業中の作業員に列車が接近 ダイヤより3分早く現場に到着 作業員は退避しケガなし 岡山・伯備線
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岡山県内を走る伯備線で今年3月、線路内で作業していた複数の作業員に列車が接近し、重大な事故につながる危険があったことが分かりました。
作業員は列車の到着時刻を把握したうえで安全対策を取っていましたが、列車がダイヤより約3分早く現場付近に到着。
列車の接近を知らせるGPSを利用した装置も、現場の電波状況が悪く使用できませんでした。
幸い、近くの踏切が鳴動したことで作業員が列車の接近に気付き、退避。接触やけがはありませんでした。
JR西、伯備線であわや重大事故 作業員待避は列車通過の1分前
共同通信ホームページ
伯備線・備中神代駅付近で作業中に列車が接近
今回の事案が発生したのは、伯備線の備中神代駅付近です。
2026年3月31日午後2時半ごろ、作業員が線路内に入り、トンネル内にある設備の撮影を行っていました。
線路内での作業ということで、もちろん列車の接近に備えた安全対策も取られていました。
作業現場には見張り員を配置。
さらに、ダイヤに記載された列車の到着時刻を基準として、その3分前にアラームが鳴るようタイマーをセットしていました。
ところが、今回の事案では、この想定よりも早く列車が現場付近に到着することになります。
「列車が来るのはまだ3分後」のはずだった
今回の事案で特に気になるのが、列車がダイヤより約3分早く到着したという点です。
作業員側では、列車の到着時刻をもとに安全を確保するため、3分前にアラームが鳴るようタイマーを設定していました。
ところが、列車はその想定より約3分早く到着。
つまり、作業員からすると「列車が来る時間に備える」ためのアラームが鳴るよりも前に、列車が接近してきたことになります。
なお、今回報じられた内容からは、なぜ列車がダイヤより約3分早く到着したのか、その詳しい理由までは分かっていません。
そのため、「列車が何らかの理由で3分早く運転された」といった推測はできません。
今回の事案では、ダイヤを基準にした安全確保と、実際の列車の接近との間にずれが生じたことが重要なポイントになります。
(2026年9月7日11時35分追記)読売新聞の報道によると接近した列車は、特急「やくも」ではなく、下りの作業用列車のようです。
なお、報道では接近した列車の列車名は明らかにされていません。発生時刻から特急「やくも13号」もしくは「やくも18号」が候補として考えられますが、「やくも13号」と「やくも18号」は新見駅は停車駅ですし、足立駅で列車交換を行いますのでどちらの列車も備中神代駅に3分早く到着すること自体も難しい(新見駅・足立駅を早く発車していることは基本的にないはず)ように思われます。
そこを考慮すると、列車そのものがダイヤより早く現場に到達したのか、作業員側の時計やタイマーなどに時刻のずれがなかったのかなど、今回の報道だけでは判断できません。
伯備線では過去にも「やくも」と作業員の重大事故
alt="特急「スーパーやくも」381系" class="wp-image-15310"/>実は、伯備線では過去にも線路内で作業していたJR西日本の社員が、特急「やくも」にはねられる重大な事故が発生しています。
2006年1月24日、鳥取県内の伯備線・根雨~武庫間で保線作業をしていた社員4人が、岡山発出雲市行きの特急「スーパーやくも9号」にはねられ、3人が死亡、1人が負傷しました。事故から20年となった2026年1月にも、現場近くで追悼の献花が行われています。
当時の事故では、列車の遅れや行き違い変更に関する情報の認識に誤りがあり、列車見張員が本来とは逆方向を警戒する状況が生じていました。
この事故を教訓として、その後はGPS列車接近警報装置などの安全対策が導入されています。
もちろん、今回の備中神代駅付近で発生した事案は、2006年の事故とは場所も状況も異なります。
また、当時は米子支社が担当していた区間で、現在は組織改編により山陰支社の管轄となっています。そのため、単純に「同じ支社で同じ事故が繰り返された」と見ることもできません。
それでも、伯備線という同じ路線で、20年前には実際に線路内作業員が特急列車にはねられる死亡事故が起きていることを考えると、今回のヒヤリハット事案は決して軽く見ることのできない出来事です。
特に今回は、2006年の事故後に導入された安全対策の一つでもあるGPSを利用した列車接近警報装置が、現場の電波状況によって使用できなかったとされています。
今回の事案が2006年の事故と直接結びつくものではないとしても、過去の事故から積み重ねられてきた安全対策を、さまざまな現場環境の中でどう機能させるのかという課題を改めて考えさせられます。
GPSを利用した接近警報装置も使えず
さらに今回の現場には、もう一つの問題がありました。
現場周辺は電波状況が悪く、列車の接近を知らせる衛星利用測位システム(GPS)を利用した装置が使用できなかったとされています。
もしGPSを利用した装置が正常に使えていれば、列車の接近を別の手段で把握できた可能性があります。
しかし、今回はその装置が使えない環境だったため、作業員はダイヤやタイマー、見張り員などによって安全を確保していました。
そうした中で、想定より早く列車が接近するという事態が発生しました。
作業員を救ったのは「近くの踏切」だった
今回、最終的に作業員が列車との接触を避けることができたきっかけは、近くにあった踏切でした。
列車の接近に気付いていなかった作業員でしたが、近くの踏切が鳴動したことで異常を察知。慌てて線路から退避しました。
そして、作業員が退避した約1分後に列車が現場を通過しました。
接触事故には至らず、作業員にけがもありませんでした。
結果だけを見れば「何事もなかった」とも言えますが、線路内で作業している人のすぐ近くまで列車が接近していたことを考えると、重大な事故につながっていてもおかしくない状況でした。
まさに「ヒヤリハット」と呼べる事案だったと言えそうです。
JR西日本は設備や運用面も含め改善へ
今回の事案について、JR西日本は「作業安全の向上に向け、各種設備や運用面も含め改善に取り組んでいく」としています。
鉄道では、線路やトンネル、信号設備などを維持するために、列車が走る線路内で作業を行う必要があります。
そのため、作業員が列車の接近を確実に把握し、安全に退避できる仕組みは非常に重要です。
特に今回は、現場の電波状況によってGPSを利用した装置が使えなかったこと、そしてダイヤを基準に設定したタイマーよりも早く列車が到着したことが重なりました。
一つ一つの要素だけでなく、複数の条件が重なった場合にも安全を確保できる仕組みが求められます。
今回は無事だったものの、線路内作業の安全確保を考える事案に
今回の伯備線の事案では、幸いにも列車と作業員が接触することはありませんでした。
しかし、もし近くの踏切が鳴動していなければ、あるいは作業員がその音に気付かなければ、結果は大きく変わっていた可能性があります。
線路内での作業は、わずかな時間のずれや情報伝達の行き違いが重大な事故につながる可能性があります。
今回の事案を一つの教訓として、JR西日本がどのように設備や作業方法を改善していくのか、今後の対応にも注目したいところです。
なお、今年8月には栃木県内で東武鉄道の特急列車が線路内にいた作業員4人と接触し、4人が亡くなる痛ましい事故も発生しています。
鉄道の安全を守るための保守作業そのものが危険にさらされることのないよう、列車と作業員双方の安全を確実に確保できる仕組みが、これまで以上に重要になっています。

