リニア中央新幹線開業後を見据え東海道新幹線「倉見新駅」具体化へ 神奈川県が概略設計に着手 相模線倉見駅付近

東海道新幹線N700系 JR東海

神奈川県は、寒川町倉見地区への東海道新幹線の新駅誘致に向けて、2026年度9月補正予算案に関連費用を計上しました。

新駅による経済波及効果などを推計するとともに、駅の構造や配置などの「概略設計」を実施するもので、長年にわたって構想されてきた「倉見新駅」が、具体的な駅の姿を検討する段階へ進むことになります。

ただし、現時点で東海道新幹線の新駅設置が決定したわけではありません。今後、JR東海による判断につながるのかが注目されます。

東海道新幹線「倉見新駅」概略設計に着手。JR東海も協力、実現へ一歩

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東海道新幹線新駅の誘致

令和8年度9月補正予算案等の概要

神奈川県ホームページ

寒川町倉見地区に東海道新幹線の新駅を誘致

今回、新駅の誘致が進められているのは、神奈川県寒川町の倉見地区です。

東海道新幹線では、新横浜駅と小田原駅の間に新駅を設置する構想として、以前から「倉見新駅」の誘致活動が行われてきました。

新横浜駅と小田原駅の間は約51.2kmあり、東海道新幹線の駅間距離としては長い区間となっています。神奈川県では、この区間のほぼ中間に位置する倉見地区への新駅設置を目指しています。

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神奈川県が示す倉見新駅の位置と周辺の構想(出典:神奈川県)

新駅の候補地となっている倉見地区には、JR相模線の倉見駅があります。

そのため、東海道新幹線の新駅が実現すれば、JR相模線と東海道新幹線を乗り換えられる新たな交通結節点になることが期待されます。

また、相模線沿線にはリニア中央新幹線の駅が設置される予定となっており相模線は二つの新幹線をつなぐバイパスとしての役割が期待されています。

一方で、神奈川県では、相模川を挟んだ平塚市大神地区と寒川町倉見地区を一体的に整備する「ツインシティ」の都市づくりも進めています。

つまり、倉見新駅は単独で新幹線駅を設置する構想ではなく、JR相模線や周辺の道路網、さらに駅周辺のまちづくりと一体となった計画として検討されているのが特徴です。

新駅の「概略設計」を実施へ

今回の大きなポイントは、神奈川県が新駅の「概略設計」に進むことです。

神奈川県は2026年度9月補正予算案で、寒川町倉見地区への新幹線新駅誘致に向け、新駅による経済波及効果などを推計するとともに、新駅の構造や配置などの概略設計を実施するとしています。

神奈川県が公表した資料では、2026年度から2028年度にかけて、倉見地区への新幹線新駅誘致に向けた調査・検討を進めることが示されています。

リンク:令和8年度9月補正予算案等の概要

2026年度には1,430万円を計上し、2026年度から2028年度までの継続費として総額2億7,000万円を設定しています。

これまでの倉見新駅誘致は、JR東海への要望活動や周辺のまちづくり、経済効果などの調査が中心でした。

それが今回、新駅そのものの構造や配置を具体的に検討する段階へ進むことになります。

神奈川県議会でも、JR東海が新駅設置の可否を判断するためには新駅の概略設計が必要だとして、県がその費用を先行して負担する考えが示されています。

リニア中央新幹線の開業が倉見新駅のカギに

倉見新駅の構想で重要になるのが、リニア中央新幹線です。

現在、東海道新幹線では東京~新大阪間を結ぶ「のぞみ」が多数運転されています。

リニア中央新幹線が開業すれば、東京~名古屋・大阪間の旅客輸送の一部がリニアへ移行することが想定されています。

神奈川県では、リニア中央新幹線の神奈川県駅(仮称)が整備される橋本地区を「北のゲート」、倉見地区の東海道新幹線新駅を「南のゲート」と位置づけ、県央・湘南地域の交通ネットワークを強化する構想を進めています。

リニア中央新幹線の開業によって東海道新幹線のダイヤに余裕が生まれれば、現在よりも新駅を設置しやすくなる可能性があります。

つまり倉見新駅にとって、リニア中央新幹線の開業は大きな転機になると考えられます。

JR東海が新駅設置を決めたわけではない

一方で、今回の発表を「東海道新幹線の倉見駅が建設されることになった」と受け取るのは早いでしょう。

新駅の設置を最終的に判断するのは、東海道新幹線を運行するJR東海です。

神奈川県はこれまでJR東海に対して倉見地区への新駅設置を要望してきましたが、JR東海は現時点では新駅設置について厳しい姿勢を示しています。

その一方で、JR東海は新駅や駅周辺のまちづくりについて、技術的な相談には対応してきました。神奈川県もこうした技術面での協力を踏まえながら、新駅の実現に向けた取り組みを進めています。

今回の概略設計も、JR東海が新駅の設置を決定したことを意味するものではありません。

むしろ、県側が新駅の具体的な構造や配置、経済効果などを示すことで、今後のJR東海との協議や判断につなげていくための準備といえそうです。

相模線の倉見駅と新幹線駅は同じ場所になる?

新駅の候補地となっている倉見地区にはJR相模線の倉見駅があります。

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JR東日本 相模線倉見駅

ただし、神奈川県が誘致しているのは「倉見駅への東海道新幹線乗り入れ」ではなく、倉見地区への東海道新幹線新駅の設置です。

倉見駅は相模川に近い場所にあります。一方で、東海道新幹線の新駅を設置する場合には、ホームや駅舎、駅前広場などの用地を確保する必要があります。

また、東海道新幹線は高速列車が通過する路線であるため、停車列車だけでなく通過列車の運転を考慮した駅構造も必要になります。

相模線を運行するJR東日本と、東海道新幹線を運行するJR東海では事業者が異なるため、実際に新駅が実現した場合も、現在の倉見駅とは別の新幹線駅として整備される可能性があります。

北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅と、近接する津軽線の津軽二股駅のように、事業者の異なる在来線駅と新幹線駅が近接する形も考えられます。

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北海道新幹線「奥津軽いまべつ」駅と津軽線「津軽二股」駅

「倉見駅=新幹線駅になる」と単純に考えるより、「倉見駅付近に新幹線の別駅ができる」と考えた方が現実的かもしれません。

倉見駅と新幹線駅を一体的に整備?

倉見新駅の面白いところは、単に東海道新幹線の駅を新設するだけではないことです。

神奈川県が進める「ツインシティ」構想では、寒川町倉見地区と平塚市大神地区を一体的に整備し、新たな都市の形成を目指しています。

県が過去に作成した整備イメージでは、東海道新幹線の新駅とJR相模線の倉見駅を結ぶ動線や、駅周辺の歩行者空間なども想定されています。

相模線の倉見駅に東海道新幹線の駅が隣接する形になれば、相模線沿線から新幹線を利用する際の利便性が大きく向上する可能性があります。

また、平塚市大神地区では大型商業施設や物流施設の開業など、まちづくりも進展しています。神奈川県は2027年度をめどに倉見地区で都市計画の手続きを進められる状況を整えることを目指しています。

まとめ 「倉見新駅」は実現するのか

今回、神奈川県が概略設計に着手することで、長年にわたって構想されてきた倉見新駅は新たな段階に入ります。

もっとも、新幹線駅の建設には多額の費用が必要となるほか、実際にどれだけの利用者が見込めるのか、東海道新幹線のダイヤをどのように設定するのかなど、解決すべき課題も残されています。

それでも、駅の構造や配置を具体的に検討できるところまで進んだことは、これまでの誘致活動と比べても大きな動きです。

リニア中央新幹線の開業によって東海道新幹線の役割がどのように変わるのか。そして、その変化が倉見新駅の実現につながるのか。

今後は神奈川県による概略設計の内容とともに、JR東海が倉見新駅についてどのような判断を示すのかにも注目したいところです。

「相模線の倉見駅」と「東海道新幹線の新駅」が接続する未来が実現するのか、長年構想されてきた倉見新駅の今後が気になります。

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