2022年8月の豪雨で被災し、現在も一部区間で運休が続いているJR米坂線をめぐり、沿線自治体の考え方に大きな動きが出てきました。
新潟県側の関川村と村上市が相次いで、条件付きながらバス転換を「現実的な選択肢」として容認する考えを示しました。
一方、山形県側では鉄路復旧を第一とする姿勢が残っており、今後は新潟・山形両県の沿線自治体がどのように意見をまとめるのかが焦点となりそうです。
「3つの条件を前提にバス転換を容認する」JR米坂線復旧問題 関川村 加藤村長が沿線自治体で初の意向示す | TBS NEWS DIG
JR米坂線「バス転換が現実的」村上市長が事実上容認 関係自治体と協議を進める方針 新潟県 | 新潟のニュース・天気|BSN NEWS|BSN新潟放送 (2ページ)
JR米坂線の復旧めぐり飯豊町長が方針を言及「鉄路復旧が第一だが…」 4年過ぎても具体的な方針決まらず 「米坂線沿線絆まつり」開催(山形) | 山形のニュース│TUYテレビユー山形
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米坂線は2022年8月の豪雨で被災
米坂線は、山形県の米沢駅と新潟県の坂町駅を結ぶ路線です。
2022年8月の記録的な大雨により大きな被害を受け、現在も坂町駅~今泉駅間で運転見合わせが続いています。
JR東日本は米坂線について、単独での復旧は困難との考えを示しており、これまで沿線自治体などとの間で今後の復旧方法について協議が続けられてきました。
これまでの議論では、鉄道を復旧したうえで自治体などが施設を保有する「上下分離方式」、第三セクターによる運営、そしてバスへの転換などが選択肢となっています。
しかし、被災から4年以上が経過しても具体的な復旧方法は決まっていません。
関川村が条件付きでバス転換を容認
大きな動きとなったのが、9月10日の関川村の対応です。
関川村の加藤弘村長は村議会で、3つの条件を満たしたうえで、利便性の高いバス路線への転換を容認する考えを表明しました。
条件として示されたのは、
- 地域住民の利便性を確保すること
- 村に実質的な財政負担を生じさせないこと
- 地域公共交通の維持についてJR東日本が主体的な役割を果たすこと
の3点です。
関川村としては、単に鉄道をバスに置き換えるのではなく、現在の鉄道よりも住民にとって使いやすい交通手段を確保することが前提となります。
加藤村長は、豪雨から4年が経過しても新たな一歩が見えていない状況を踏まえ、「そろそろ次の決断をしなくてはならない」との考えを示しています。
村上市も「バス転換が最も現実的」
関川村の表明を受け、9月11日には村上市の高橋邦芳市長も記者会見を開きました。
高橋市長は、上下分離方式や第三セクターによる鉄道運営については可能性が低いとの認識を示したうえで、
「バスに転換するのがより現実的な選択」
との考えを表明しました。
村上市も、関川村と同様に、
- 住民の利便性を確保する
- 市に実質的な財政負担を生じさせない
- JR東日本が地域公共交通の維持に主体的な役割を果たす
という3つの条件を求めています。
また、村上市にとっては米坂線だけでなく羽越本線も重要な鉄道路線です。
高橋市長は、バス転換を前提とした場合でも、坂町駅の機能向上やバリアフリー化などを含め、交通ネットワーク全体として利便性を確保していく必要があるとの考えを示しています。
山形県側は「鉄路復旧が第一」
一方、山形県側では、現時点でも鉄路復旧を重視する姿勢が残っています。
9月5日に飯豊町で開催された「米坂線沿線絆まつり」では、米坂線の復旧を願う沿線自治体などが集まりました。
飯豊町の嵐正人町長は、鉄路による復旧を第一としながらも、自治体の負担を考えればバスへの転換も十分に考えられるとの考えを示しています。
つまり、山形県側も「鉄道を残すか、バスにするか」の二択をめぐって、現実的な負担を考慮しながら意見をまとめる段階に入っているといえそうです。
新潟県側と山形県側で温度差
今回の動きで明確になったのは、新潟県側と山形県側の温度差です。
| 地域 | 現在の考え方 |
|---|---|
| 関川村 | 3条件を満たせばバス転換を容認 |
| 村上市 | バス転換が最も現実的な選択肢 |
| 飯豊町 | 鉄路復旧が第一。ただしバスも選択肢 |
| その他の沿線自治体 | 今後、意見集約へ |
新潟県の花角知事も9月1日の記者会見で、バスの場合は鉄道と比べて停留所や運行ルートを柔軟に設定でき、病院や商業施設などへのアクセスを改善しやすいとの考えを示しています。
ただし、この時点では「バス転換を決めたわけではない」と明言しており、関係自治体の意見を集約している段階だと説明しています。
被災区間ではない米沢市・川西町も関係者?
米坂線の存続問題をめぐる協議には、沿線の7市町村が参加しています。
- 新潟県(村上市・関川村)
- 山形県(米沢市・川西町・長井市・飯豊町・小国町)
現在、米坂線で不通となっているのは坂町駅~今泉駅間です。
自治体で見ると、村上市・関川村・小国町・飯豊町・長井市が被災区間に関係しています。
一方で、米沢市・川西町は被災区間には含まれていません。
では、なぜ米沢市・川西町も米坂線の復旧問題に関わっているのでしょうか。
米坂線の経営状況は?
JR東日本が発表した被災前の2019年度における米坂線の輸送密度と営業係数は、次の通りです。
| 米沢~今泉 | 今泉~小国 (被災区間) | 小国~坂町 (被災区間) | |
|---|---|---|---|
| 輸送密度 | 776 | 298 | 169 |
| 営業係数 | 1,241 | 2,659 | 2,575 |
米沢~今泉間は、今泉~小国間や小国~坂町間と比べると、輸送密度が高く、営業係数も低くなっています。
そのため、単純に「利用者が少ないから米沢市・川西町も廃線問題に関係している」という話ではありません。
むしろ、米沢~今泉間は今回の被災区間ではないにもかかわらず、米坂線全体の今後を考えるうえで重要な区間となっています。
米坂線は狭軌の路線です
米坂線が接続する米沢駅を通る奥羽本線は奥羽本線は、山形新幹線の開業に伴って標準軌(1,435mm)に改軌されています。
一方、米坂線は狭軌(1,067mm)のままです。
そのため、米沢~今泉間は今泉駅で山形鉄道のフラワー長井線と接続しているものの、JR東日本の他の狭軌在来線とは鉄路でつながっていない、いわば孤立した区間となっています。
現在は米坂線が今泉~坂町間までつながることを前提にすれば、車両は米坂線を経由して新潟・新津方面などと行き来できます。
実際、米坂線では新潟車両ベース(旧新潟車両センター)のキハ110系・GV-E400系が使用されています。
しかし、仮に今泉~坂町間が鉄道として復旧しない場合、米沢~今泉間だけがJR東日本の路線として残ることになります。
そうなると、米沢~今泉間についても、現在とは違った形で将来の運営を考える必要が出てきます。
豪雨被災後には車両の搬出も問題に
alt="JR東日本・山形鉄道 今泉駅" class="wp-image-15782"/>そのため2022年8月の豪雨で今泉~坂町間が不通となった後、米沢~今泉間の車両運用にも影響が出ています。
JR東日本は2023年4月、米坂線の車両搬出に伴う一部列車の運休を発表しました。
当時、米沢~今泉間で折り返し運転を行っていましたが、今泉駅に留置していた車両について、被災によって坂町方面を経由した検査車庫への回送ができなくなったため、車両を搬出すると説明しています。
つまり、米沢~今泉間だけを見れば列車を運転できる状態であっても、今泉~坂町間が不通になることで、車両の検査や移動といった面にも影響が出ることが分かります。
このことからも、米坂線の問題は単純に「米沢~今泉間は列車が走っているから大丈夫」と考えることはできません。
今泉~坂町間が鉄道として復旧しない場合、米沢~今泉間をどのように運営していくのかという問題も出てきます。
つまり、米坂線の復旧問題は「被災した今泉~坂町間を鉄道として復旧するのか、バスに転換するのか」という問題だけではありません。
その先に残る米沢~今泉間をどうするのかという問題にもつながっています。
だからこそ、被災区間には含まれない米沢市・川西町も、米坂線全体の将来を考える今回の協議に関係していると考えられます。
まとめ 米坂線はバス転換に決まったわけではない
今回の関川村と村上市の表明は、米坂線のバス転換が正式決定したことを意味するものではありません。
JR東日本、国、両県、そして沿線自治体の協議が今後も必要になります。
特に米坂線は新潟県と山形県を結ぶ路線であるため、片方の県だけで決めることはできません。
今後は、山形県側の自治体がどのような方向性を示すのか、そして新潟・山形両県と沿線自治体が最終的にどのような意見をまとめるのかが重要になります。
被災から4年を超え、米坂線をめぐる議論は「鉄路を復旧するかどうか」だけでなく、地域にどのような公共交通を残すのかという段階に入ってきたように感じます。
今後の協議の進展に注目したいところです。


