レバノンで、太陽光パネルを搭載し、再生可能エネルギーを利用して走行する列車が登場しました。
長年使われていなかった鉄道の線路を活用する取り組みでもあり、環境に配慮した鉄道として興味深い事例です。一方で、太陽光発電を列車の動力に利用するには、いくつかの課題もありそうです。
今回は、レバノンで登場した太陽光発電を利用する列車について紹介します。
ヤフーニュース
レバノンで太陽光発電を利用する列車が登場
レバノンのバルバラ地区で、太陽光発電を利用して走行する電車「BaraTrain」が登場しました。
この列車は、長年使われていなかった既存の鉄道路線を活用するもので、約3.5kmの区間を走行します。最高速度は時速15~20km程度で、観光や学校などの教育活動に活用することを目的としています。
現地報道によると、乗車は無料で、学校や大学の学生向けの運行を予定しているほか、週末や夏季にも運行を拡大する構想があるようです。
レバノンでは、1975年~1990年の間の内戦などの影響もあり、鉄道網の多くが長年にわたって使われていませんでした。今回の取り組みは、既存の線路を活用しながら、鉄道への関心を取り戻そうとするものでもあります。
なお、今回の列車は、かつての鉄道網がそのまま復活したというわけではありません。あくまでも短い区間を活用した観光・啓発目的の取り組みです。
太陽光発電で列車を走らせることはできるのか
太陽光発電を利用して列車を走らせるという発想は、環境負荷の低減という点で魅力があります。
一般的な鉄道では、電車線などの設備を通じて電力を供給します。非電化路線では、ディーゼルエンジンを搭載した気動車などが使われています。
これに対し、車両に太陽光パネルを搭載すれば、太陽光から電気をつくり、走行に利用できます。蓄電池を組み合わせれば、発電量が少ない時間帯にも対応できる可能性があります。
ただし、ここで考えておきたいのが、太陽光パネルだけで、どれだけの電力をまかなえるのかという点です。
車両の屋根に搭載できる太陽光パネルの面積には限りがあります。発電量は日照条件やパネルの性能などに左右されるため、列車の走行に必要な電力を常に確保できるとは限りません。
また、乗客を乗せて走る場合には、車両の重量や乗車人数、走行距離、速度などによって必要なエネルギーも変わります。
今回のような短距離・低速の観光列車と、都市間を結ぶ高速列車や通勤電車とでは、求められる輸送力もエネルギーも大きく異なります。
そのため、今回の事例をもって、一般的な鉄道車両も太陽光発電だけで走行できると考えるのは難しいでしょう。
鉄道として実用化するには課題も多そう
今回の列車は、既存の線路を活用して運行する点でも興味深い取り組みです。
鉄道を新たに整備するには、線路や駅、信号設備などの整備に多額の費用がかかります。一方、休止状態にある線路を利用できれば、新たな路線を一から建設する場合とは異なる形で鉄道を活用できる可能性があります。
ただし、長期間使われていなかった線路であれば、線路や橋梁などの状態を確認し、必要な修繕を行わなければなりません。安全に運行するための設備や、日常的な保守管理も必要です。
また、観光列車として運行する場合と、地域住民の通勤・通学に使う公共交通機関として運行する場合とでは、必要な本数や運行時間帯、輸送力が違います。
短い区間を走る観光列車として成功したとしても、そのまま地域の移動手段として役立つとは限りません。
太陽光発電を利用するという技術面だけでなく、線路の維持管理や運行費用、利用者の確保など、継続して運行するための仕組みづくりも重要になりそうです。
日本でも鉄道と再生可能エネルギーの活用に注目したい
日本でも、鉄道の環境負荷を低減するための取り組みが進められています。
ただし、鉄道はもともと多くの人をまとめて運べる交通機関です。環境負荷を考える際には、車両の動力だけでなく、どれだけの人を運べるのか、設備の維持管理にどの程度のエネルギーや費用が必要なのかという視点も欠かせません。
太陽光発電を利用した小規模な列車は、条件によっては有効な選択肢になるかもしれません。特に、短距離の観光輸送や、既存の線路を活用した地域振興などでは、今後の展開が気になるところです。
一方、一般の鉄道の代わりとして広く普及させるには、発電量や蓄電池、輸送力、設備の維持管理など、解決すべき課題がたくさんありそうです。
今回の取り組みが、使われなくなった鉄道インフラの活用や、環境に配慮した交通手段を考えるきっかけになることを期待したいと思います。

