紀勢本線佐奈駅~栃原駅間に新駅構想 VISONへのアクセス向上を目指すも1日19本(下り10本・上り9本)では利用は限定的か

VISON JR東海

三重県多気町が、JR紀勢本線の沿線に新駅を設置する可能性について調査を進めています。新駅の候補として挙がっているのは、大型商業リゾート施設「VISON(ヴィソン)」の周辺です。

観光施設へのアクセス向上が期待される一方、周辺を走る紀勢本線の普通列車は1日19本(下り10本・上り9本)にとどまります。新駅を設置することで、どこまで鉄道利用の拡大につながるのでしょうか。

令和8年度 鉄道駅とまちに関する基本調査業務委託仕様書

多気町ホームページ

VISONへのアクセス向上を目指して新駅を検討

VISONは、三重県多気町にある大型商業リゾート施設です。飲食店や宿泊施設、産直市場などが集まり、観光客が訪れる施設となっています。

一方、VISONの近くにはJR紀勢本線が通っているものの、既存の佐奈駅や栃原駅からは距離があります。また、特急南紀が停車する多気駅からも離れており、鉄道で訪れる場合はバスやタクシーなどへの乗り換えが必要です。

こうした状況を踏まえ、多気町はVISON周辺への新駅設置や、既存駅の改修・活用などを含めた交通アクセスの改善策を検討しています。

新駅を設置しても列車本数は限られる

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紀勢本線キハ25形

今回の調査で気になるのが、紀勢本線の運行本数です。多気駅の日中時間帯のダイヤは次のようになっています。

路線方面日中の列車本数
紀勢本線名古屋方面1時間あたり 快速「みえ」1本・普通1本
紀勢本線新宮方面1日19本(下り10本・上り9本) 日中は2~3時間に1本
参宮線伊勢市方面1時間あたり 快速「みえ」1本・普通1本

新駅が検討されている紀勢本線佐奈駅付近の普通列車は、下りの新宮方面が1日10本、上りの多気・亀山方面が1日9本の合計19本です。

さらに、日中時間帯は3時間以上列車が運転されない時間帯があります。

特急南紀も1日3往復(臨時列車運転時は5往復)運転されていますが、新駅に停車するかどうか現時点では決まっていません。

このような運行本数では、VISONを訪れる観光客にとって、列車の時刻に合わせて行動する必要があります。特に帰りの列車まで長時間待つことになると、鉄道を利用するメリットが小さくなる可能性もあります。

新駅の設置だけでなく、停車する列車の本数や時間帯をどう確保するのかが重要になりそうです。

新駅の設置への負担も大きいです

近年は新駅の建設費も高額になっています。

新駅は、請願駅ですので原則として設置を希望した側が費用を負担する形となります。

さらに、既存の線路にホームを設置するだけで済むとは限らず、駅前広場や周辺道路の整備なども必要になります。

岡山県でも、最近開業した請願駅として山陽本線北長瀬駅(2005年開業)・西川原駅(2008年開業)があります。北長瀬駅は駅舎のある駅、西川原駅は線路にホームを設置したタイプの駅です。どちらも駅施設と周辺の整備に数億円の負担(北長瀬駅:岡山市、西川原駅:就実学園・岡山市)が発生しています。

一方、近年設置された駅では、10億円を超える負担が発生していることも珍しくはないようです。誰がどれだけの費用を負担する(自治体・地元の寄付)かという問題も含めて課題は多そうです。

列車本数を増やすために、新駅に折り返し設備を設置するとなればさらに費用は大きくなるでしょう。場合によっては、列車本数の多い多気駅からのバスでのアクセス強化も有効な選択肢になると思われます。

新駅の設置にどの程度の費用がかかるのか、既存駅を活用して二次交通を充実させる場合と比較した検討が重要になりそうです。

新駅設置だけでなく既存駅の活用も調査

多気町が公表した「令和8年度 鉄道駅とまちに関する基本調査業務委託仕様書」では、新駅の設置可能性だけでなく、既存駅を活用する案も調査対象となっています。

具体的には、次のような内容が盛り込まれています。

  • VISON来訪者へのヒアリング調査
  • 観光客へのインターネットアンケート
  • 鉄道利用者数の予測
  • 新駅や駅前広場の整備計画
  • 列車の停車種別や運行本数変更によるダイヤへの影響
  • 駅整備に必要な概算事業費や鉄道事業者の収支
  • バスやデマンドタクシーなど二次交通との接続

調査では、観光需要だけでなく、地域住民の日常的な移動需要も考慮することになっています。

また、今回の業務は2027年3月31日までを履行期間としており、現段階では新駅の設置が決定したわけではありません。

鉄道利用の拡大には運行本数と二次交通が重要

VISONへのアクセス向上という点では、新駅の設置は分かりやすい施策です。しかし、駅を設置しただけでは十分とはいえません。

1日19本という運行本数を考えると、観光客が利用しやすい時間帯に列車が運転されているか、駅からVISONまでの移動手段が確保されているかも重要になります。

また、駅の整備や維持管理には費用がかかります。新駅を設置した場合に、どの程度の利用者が見込めるのか、鉄道事業者にとってもメリットがあるのかを慎重に検討する必要がありそうです。

観光施設へのアクセス改善に加えて、地域住民の移動手段としても活用できる駅になるのか。多気町の調査結果に注目したいと思います。

リンク:多気町「令和8年度 鉄道駅とまちに関する基本調査業務委託仕様書」

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