バス路線の維持には補助金が出るのに鉄道はダメ? 平成筑豊鉄道の存続問題から考える国の支援制度

平成筑豊鉄道金田駅 400形 平成筑豊鉄道

鉄道を廃止してバスに転換する方針が決まった平成筑豊鉄道。沿線自治体の一つである福岡県田川市は、鉄道の存続に向けて国に支援を要望しました。

田川市が問題としているのは、バス事業者には運行赤字を補うための財政措置がある一方、鉄道では同じような支援を受けられないことです。

国土交通省などに制度の変更を求めたものの、国側の回答は厳しいものでした。

一方、田川市はバス転換に向けた協議にも参加しており、転換後の交通を具体化するための課題も指摘しています。

鉄道を残すのか、バスに転換するのか。今回は平成筑豊鉄道の問題を入口に、バスと鉄道の支援制度の違いや、地域の公共交通を維持するために必要な費用について考えます。

地域公共交通確保維持事業 (陸上交通:地域間幹線系統補助)

国土交通省ホームページ

田川市が平成筑豊鉄道の存続に向けて国に要望

2026年3月、平成筑豊鉄道沿線地域公共交通協議会は、鉄道を廃止して路線バスへ転換する方針を決定しました。

その後も存続の可能性を探っていた田川市は、10月6日に国土交通省と総務省を訪問し、地方鉄道の運行赤字を補うために国庫補助金や地方交付税を活用できるようにすることなどを要望しました。

田川市によると、バス事業者には運行赤字に対する地方交付税や特別交付税による財政措置がある一方、鉄道の赤字については沿線自治体の負担が大きくなっています。

これに対して国側は、鉄道の赤字補填は受け入れが困難との見解を示したと報じられています。

浦野仁市長は、今後、新たな支援制度などが設けられた場合には、協議会に計画の見直しを求めたいという考えを示しました。

リンク:田川市が平成筑豊鉄道の存続に向けて国に支援を要望(KBCニュース)

バスを支援する制度と鉄道を支援する制度は違う

国土交通省には「地域公共交通確保維持改善事業」という制度があります。

このうち「地域公共交通確保維持事業」では、地域の生活交通を確保するため、一定の要件を満たすバス交通などへの支援を行っています。

国土交通省の資料を確認すると、同事業の対象には鉄道の運行赤字を補填する仕組みは含まれていません。

リンク:地域公共交通確保維持改善事業に関する資料(国土交通省)

ただし、鉄道に対する国の支援がないわけではありません。鉄道には、設備の更新や安全性の向上、地域鉄道の再構築などを支援する制度があります。

鉄道では維持管理に係る費用について自治体が補填を行った場合、自治体が全額負担となりますが、利用者の利便性を向上させるための費用については「社会資本整備総合交付金」を活用できます。

富山地方鉄道の場合でもレールや枕木の更新・クレジットカードによるタッチ決済には活用する予定となっています。

問題となっているのは、鉄道の運行赤字を継続的に支える仕組みが、バスと同じではないことです。

地域住民の移動を支えるという役割は共通していても、交通機関によって支援の仕組みが異なっています。

田川市はバス転換に向けた準備にも厳しい目を向ける

興味深いのは、田川市が鉄道の存続を国に求める一方で、バス転換に向けた協議にも参加していることです。

福岡県が公開した2026年9月8日の平成筑豊鉄道沿線地域公共交通協議会の議事概要では、田川市の担当者が、バスの運行開始までに必要な準備について具体的に質問しています。

バス転換に向けては、ルートやダイヤの決定に加え、車両の購入、営業所や車庫の整備、運転士の確保など、多くの作業が必要です。

田川市の担当者は、こうした課題が残るなか、約2年後という目標どおりにバスの運行を開始できるのかと懸念を示しました。

一方で、鉄道を維持し続ければ、老朽化した設備の安全対策や自治体の費用負担が増えることも認識しています。協議会の場では、鉄道を継続した場合の費用負担が大きくなるため、早期の転換を進めてほしいという考えも示しています。

つまり、バス転換そのものに反対しているのではなく、転換を決めた以上、実際に地域の交通手段として機能するよう、実現可能性を確認しているわけです。

リンク:第11回平成筑豊鉄道沿線地域公共交通協議会 議事概要(福岡県・PDF)

鉄道の存続を模索しながら、バス転換の準備にも目を向ける。こうした動きからは、自治体が抱える課題の複雑さが見えてきます。

鉄道は運行費だけでなく設備の維持にも費用がかかる

鉄道を維持するうえで、運行赤字だけが問題になるわけではありません。

線路や橋梁、トンネル、信号設備などは、安全に列車を走らせるために維持管理しなければなりません。設備が老朽化すれば、修繕や更新にもまとまった費用が必要になります。

先日取り上げた富山地方鉄道の設備整備計画でも、10年間の機能向上費用として、本線に50.8億円、立山線に22.2億円が必要とされています。これは、別途示された維持費78億円とは別の費用です。

このように、鉄道を維持するには日々の運行に加え、線路や設備を安全に使い続けるための費用も必要です。

一方、バスは道路を利用するため、鉄道事業者が線路や信号設備を一体的に維持する必要はありません。その意味では、バスへの転換によって交通インフラの維持にかかる費用を抑えられる可能性があります。

ただし、バスなら必ず安く運行できるというわけではありません。運転士や車両の確保、運行本数、通勤・通学時間帯の輸送力なども考える必要があります。

平成筑豊鉄道のように、鉄道からバスへの転換を進める場合には、設備費の違いだけでなく、転換後に必要な交通サービスを実現できるかどうかも重要です。

鉄道を残すか、バスに転換するかを制度が左右していないか

地域の公共交通を維持するためには、費用を誰が負担するのかという問題を避けて通れません。

利用者が少なく、運賃収入だけで運行を続けられない路線では、自治体などによる支援が必要になる場合があります。しかし、その支援の仕組みが交通機関によって異なれば、鉄道とバスのどちらを選ぶかという判断にも影響する可能性があります。

鉄道を維持するには、運行赤字に加えて設備の維持・更新費用も必要です。バスへの転換によって負担を軽減できる可能性はありますが、運転士不足などの問題もあります。

それぞれの交通手段にかかる費用と、地域住民に提供できるサービスを比較することが大切です。

また、鉄道を残す場合も、すべてを鉄道事業者だけで負担するのではなく、自治体との役割分担や設備の保有・維持管理方法を見直すなど、さまざまな方法が考えられます。

国の支援制度も、こうした選択肢を検討する際の重要な条件の一つです。

まとめ

平成筑豊鉄道の存続問題では、田川市が鉄道の運行赤字に対する国の支援を求めました。一方で、沿線自治体などの協議会ではバス転換の方針が決まり、運行開始に向けた具体的な課題も議論されています。

鉄道には設備の維持・更新という大きな負担があり、バスには運転士や車両の確保などの課題があります。どちらが地域に適しているかは、単純な費用比較だけでは判断できません。

鉄道を残すことだけを前提にする必要はありませんが、バスへの転換を前提にするのも違うのではないでしょうか。

地域に必要な交通手段を選ぶ際に、交通機関ごとの支援制度の違いが大きな障壁になっているのであれば、制度のあり方も含めて考える必要がありそうです。

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