JR芸備線の備中神代駅~備後庄原駅間で進められている再構築協議。2026年11月には、鉄道の存廃を明記した再構築方針の骨子案が示される見込みです。
今回の議論で気になるのが、JR西日本が求めている「地域の実態に合った交通モード」という考え方に対して、沿線自治体である新見市・庄原市が、具体的にどのような交通体系を目指しているのかという点です。
自治体が鉄道の価値を訴えることには意味があります。しかし、鉄道を維持すること自体が目的なのか、それとも地域住民の移動手段を確保することが目的なのかによって、必要な議論は変わってくるのではないでしょうか。
JR芸備線再構築 骨子案で「鉄道かバスか」明記へ 協議会で中国運輸局が明らかに 「費用や経済効果だけでなく総合的に判断する」
瀬戸内海放送(KSB)ホームページ
客観的にみると鉄道としての存続は難しそうですが・・・
今までの報道等から考えてみると、芸備線(備中神代駅~備後庄原駅)に存続については、厳しい状況にあるように感じます。
実際に、増便を行った実証事件の結果を見る限り十分な効果があったようには思えませんでした。
JR西日本が求める「地域の実態に合った交通モード」
芸備線の再構築協議では、鉄道の利用状況や運行にかかる費用、地域経済への影響などを踏まえ、今後の交通体系が検討されています。
鉄道を維持する場合には、列車の運行費用だけでなく、線路や駅などの施設を維持する費用も考えなければなりません。一方、バスなどに転換する場合にも、運転士の確保や運行本数、乗り継ぎの利便性などの課題があります。
つまり、単純に鉄道とバスのどちらが安いかという比較だけでは、地域に適した交通手段を決めることはできません。
重要なのは、地域住民がどのような移動を必要としているのかを把握し、それを実現するためにどの交通手段が適しているのかを検討することです。
JR西日本が「地域の実態に合った交通モード」を求めているのであれば、自治体側にも、地域の実情を踏まえた具体的な考え方が求められます。
新見市・庄原市はどのような交通体系を目指すのか
これまでの協議では、新見市が他の交通モードの事例や地域経済への効果を検討する必要性に言及し、庄原市は鉄道に乗ること自体を目的に訪れる人がいることなど、鉄道ならではの価値を指摘しています。
いずれも重要な視点です。
特に、鉄道に乗ること自体が地域を訪れる目的になるのであれば、鉄道の利用者数だけでは測れない効果が存在する可能性があります。
しかし、ここで考えたいのは、そうした鉄道の価値を認めることと、今後も鉄道を維持するという判断は、必ずしも同じではないということです。
例えば、自治体が鉄道の維持を目指すのであれば、どのような利用促進策を実施し、どの程度の費用負担を想定するのか。鉄道の利用者を増やすために、沿線自治体として何ができるのかを具体的に示す必要があります。
反対に、鉄道以外の交通手段も選択肢とするのであれば、バスなどに転換した場合に、現在の利用者の移動をどこまで確保できるのかを検証する必要があるでしょう。
現時点で公開資料から確認できる発言だけでは、新見市・庄原市が最終的にどのような交通体系を目指し、何を判断基準にしようとしているのかが、十分に見えてきません。
芸備線の再構築協議、双方の主張はかみ合っているのか
芸備線の再構築協議を見ていて気になるのは、JR西日本と沿線自治体の双方が、それぞれの立場から意見を述べているものの、相手の問題提起に正面から答えているのかが分かりにくいことです。
JR西日本が求めるのは、地域の実態に合った交通モードへの再構築です。それに対して自治体側が鉄道の価値や地域経済への効果を主張するのであれば、その価値をどのように評価し、鉄道の維持にどう結びつけるのかという議論が必要になります。
一方、JR西日本にも、鉄道と他の交通手段を比較する際に、どのような条件を想定しているのかを具体的に示すことが求められるのではないでしょうか。鉄道の運行費用だけでなく、バスに転換した場合の運行体制や、地域住民の利便性をどのように比較するのか。そうした前提が分からなければ、自治体側も具体的な対案を示しにくいはずです。
双方が自らの主張を繰り返すだけでは、議論は前に進みません。相手の主張を受け止めたうえで、条件を示し、対案を出し、折り合える部分と折り合えない部分を明らかにする。そうしたやり取りこそ、再構築協議に求められているのではないでしょうか。
「鉄道を残すか」だけでなく「地域の移動をどう守るか」
芸備線の議論では、鉄道の存続か廃止かという点に注目が集まりがちです。
もちろん、鉄道ファンにとっても、沿線地域にとっても、鉄道が残るかどうかは大きな問題です。
ただし、地域公共交通という観点から考えるなら、鉄道を残すことだけでなく、住民が必要なときに移動できる環境を確保することも重要です。
通学や通院、買い物などの日常的な移動と、観光客による利用では、必要とされる運行時間帯や本数も異なります。利用者の少ない時間帯であっても、通学などに欠かせない列車があるかもしれません。
一方で、鉄道を維持するために多額の費用が必要となる場合には、その費用をどのように負担するのかという問題も避けられません。
だからこそ、鉄道を維持する場合と、バスなどに転換する場合について、費用だけでなく利便性や地域への影響を比較し、住民にも分かる形で説明することが必要なのではないでしょうか。
11月の骨子案で確認したいこと
2026年11月に示される見込みの再構築方針の骨子案では、鉄道の存廃が明記される方向となっています。
今後注目したいのは、単に鉄道を維持するのか、別の交通手段に転換するのかという結論だけではありません。
その結論に至るまでに、どのような条件を比較し、地域住民の移動をどう評価したのか。そして、新見市・庄原市が、地域の将来にどのような交通体系が必要だと考えているのかという点です。
JR西日本の提起する「地域の実態に合った交通モード」に対して、自治体が具体的な考え方を示すことは、今後の議論を進めるうえでも重要だと思います。
芸備線の再構築は、単に一つの路線を残すかどうかだけの問題ではありません。鉄道を維持する場合にも、別の交通手段に転換する場合にも、地域の移動をどう支えていくのかという視点が欠かせません。
11月の骨子案で、鉄道の存廃とともに、地域の実情に即した交通体系をどのように実現するのか、その道筋が示されることを期待したいと思います。



