JR6社すべてで運賃水準が異なる時代へ それでも「通算制」は続くのか? JR西日本の運賃値上げから考える

新大阪駅 JRグループ

JR西日本は、2030年までに普通運賃の改定を目指す考えを示しています。

すでにJR東日本は2026年3月に運賃改定を実施しており、JR北海道・JR四国・JR九州も近年運賃を見直しました。JR東海を除く各社が相次いで運賃改定を実施したことで、JR西日本が改定を行えば、JRグループ6社すべてで運賃水準が異なる時代となります。

単純に「運賃が上がる」という話だけで終わるのであれば、それほど大きな変化ではないのかもしれません。しかし、私は今回の動きによって、国鉄分割民営化以来続いてきたJRの運賃制度そのものが、転換点を迎える可能性があるのではないかと感じています。

国鉄分割民営化後も続く「通算制」

現在のJRでは、会社をまたいで利用する場合でも、営業キロを通算して普通運賃を計算する仕組みとなっています。

これは、JRの旅客営業規則に定められています。

(他の旅客鉄道会社線を連続して乗車する場合の営業キロ、賃率換算キロ、擬制キロ又は運賃計算キロの通算)
第14条の4 当社線と他の旅客鉄道会社線を連続して乗車する場合の営業キロ、賃率換算キロ、擬制キロ又は運賃計算キロは、旅客の乗車区間に対し、第14条又は第14条の2の規定を適用して計算したものによる。
2 前項の規定による営業キロ、賃率換算キロ、擬制キロ又は運賃計算キロは、旅客運賃・料金の計算その他この規則に定める取扱いをする場合に適用する。

(旅客運賃・料金計算上の営業キロ等の計算方)
第68条 営業キロ又は擬制キロを使用して旅客運賃を計算する場合は、別に定める場合を除いて、次の各号により営業キロ又は擬制キロを通算して計算する。
⑴ 営業キロ又は擬制キロは、同一方向に連続する場合に限り、これを通算する。
⑵ 当社と通過連絡運輸を行う鉄道・軌道・航路又は自動車線が中間に介在する場合、これを通じて連絡乗車券を発売するときは、前後の旅客会社の区間の営業キロ又は擬制キロを通算する。
2 前項の規定は、運賃計算キロを使用して幹線と地方交通線を連続して乗車するときの旅客運賃を計算する場合に準用する。
3 第1項の規定は、営業キロを使用して料金を計算する場合に準用する。
4 (略)

JR西日本旅客営業規則より引用

例えば、岡山駅から名古屋駅まで普通乗車券を購入する場合、JR西日本とJR東海を利用しますが、それぞれの会社の運賃を単純に足し合わせるわけではありません。営業キロを通算し、1枚の乗車券として運賃が計算されます。

この仕組みは単なる慣例ではありません。

JR会社法(旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律附則では、国土交通大臣が「新会社がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針」を定めることとされており、その指針では、会社をまたがって利用する旅客の運賃・料金について「通算制」「遠距離逓減」への配慮が求められています。指針自体が長いためリンクを貼っておきます。これは、2001年にJR東日本・JR東海・JR西日本がJR会社法の適用外となった際に出されたものです。JR九州に対しても2016年の上場の際に同様の指針が出されています。

リンク:新会社がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針

つまり、「JRは会社が違ってもできるだけ一つの鉄道ネットワークとして利用できるようにする」という考え方は、国鉄改革の理念の一つとして現在も受け継がれているのです。

すでに運賃制度は少しずつ変わり始めている

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サンライズ「出雲」「瀬戸」

とはいえ、この仕組みはまったく変わっていないわけではありません。

2026年3月にJR東日本が運賃改定を実施した際、東京~熱海間では東海道新幹線と東海道線(在来線)が「別線扱い」となりました。これについては、東海道新幹線と「サンライズ」を利用した際に運賃が異なるとして報道されたことを耳にした方も多いのではないでしょうか。

以前から小倉~博多間では同様の仕組み(山陽新幹線と山陽本線・鹿児島本線)が採用されていましたが、東京~熱海間にも広がったことで、「新幹線と在来線は同じ路線として運賃を計算する」という従来の考え方にも変化が見られるようになりました。

これは「通算制が廃止された」ということではありません。

むしろ、通算制を維持しながら、会社ごとの異なる運賃水準を反映するために制度が複雑になってきていると考えることができます。

利用者から見ると、同じJRでも区間によって運賃計算のルールが異なるケースが増えつつあるのです。

JR西日本が値上げを実施した場合は?

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東海道新幹線(伊吹山)
東海道本線(琵琶湖線)瀬田川 alt="東海道本線(琵琶湖線)瀬田川" class="wp-image-11540"/>
東海道本線(琵琶湖線)瀬田川

もしJR西日本が2030年までに普通運賃を改定した場合、JR東海との境界である新大阪~米原間でも同様の課題が生じる可能性があります。

現在はJR東海とJR西日本で普通運賃は同じ水準ですが、JR西日本だけが運賃改定を実施すれば、両社の運賃体系は異なることになります。

その場合、東京~熱海間と同様に、新大阪~米原間でも新幹線と在来線の運賃計算方法が見直される可能性があります。

もちろん、現時点でJR西日本からそのような発表はありません。しかし、JR東日本で前例ができた以上、同様の制度変更が検討されても不思議ではないでしょう。

「当分の間」はいつまで続くのか

国土交通省の指針には「当分の間配慮すべき事項」という表現があります。

国鉄分割民営化から約40年が経過し、各JR会社はそれぞれ異なる経営環境の中で運賃改定を行うようになりました。

それでも会社をまたぐ通算制は維持されています。

一方で、東京~熱海間の別線扱いなどを見ると、その運用方法は少しずつ変化しています。

以前、私はJR西日本の運賃値上げがローカル線に対する利用者の見方を変える可能性について考察しました。運賃値上げそのものが地域交通へ与える影響については、こちらの記事もぜひご覧ください。

今回気になったのは、そのさらに先にある制度の変化です。

JR6社すべてで運賃水準が異なる時代になったとき、現在の通算制はどのような形で維持されていくのでしょうか。

会社ごとの運賃差を反映しながら、利用者にとって分かりやすい制度を維持するのか。それとも、新たな運賃計算方法が導入されるのか。

現時点では何も発表されていませんが、JR西日本の運賃改定は、単なる「値上げ」ではなく、国鉄分割民営化以来続いてきた運賃制度の将来を考えるきっかけにもなりそうです。

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