鳥取市中心部を走る循環バス「くる梨(くるり)」が、2027年春ごろをめどに運賃を値上げする方向となりました。
現在、大人1回100円で利用できる「くる梨」ですが、改定案では150円へ50円値上げされます。
2004年度から運行されてきた「くる梨」にとって、今回の値上げは大きな転換点となりそうです。
背景には、乗務員の人件費や燃料費、物価などの上昇によって運行経費が増加し、鳥取市の公費負担が膨らんでいることがあります。
鳥取市は8月7日から9月3日まで、今回の運賃改定について市民から意見を募集しています。
鳥取市ホームページ
鳥取市の「くる梨」大人運賃が100円から150円に
現在の「くる梨」は、青・赤・緑の3コースで運行されており、JR鳥取駅を中心に鳥取市中心部を循環しています。
鳥取市「100円循環バス くる梨」の利用案内によると、現在の運賃は大人100円、小学生50円です。
今回の改定案では、2027年春ごろから次のように変更されます。
| 区分 | 現行 | 改定案 |
|---|---|---|
| 大人 | 100円 | 150円 |
| 小人 | 50円 | 50円 |
| 障がい者 | 50円 | 50円 |
| 大人1か月定期券 | 3,000円 | 4,500円 |
| 小人・障がい者1か月定期券 | 1,500円 | 1,500円 |
大人については、1回50円、率にすると50%の値上げとなります。
一方で、小学生と障がい者については運賃を据え置く方針です。
また、現在販売されている「100円券11枚綴り」の回数券は、運賃改定に合わせて販売終了となる予定です。購入済みの回数券については、販売終了から1年間は利用できます。
なぜ「くる梨」は値上げするのか?
今回の値上げで気になるのが、「なぜ100円から150円なのか」という点です。
鳥取市の運賃改定案では、乗務員の人件費上昇、燃料費や物価の高騰などによって運行経費が増加し、運行赤字が年々拡大していることが説明されています。
特に注目したいのが、2025年度には運行経費の約8割を公費で負担しているという点です。
つまり、「くる梨」の運賃収入だけでは運行を維持することが難しく、鳥取市が大きな財政負担をしている状況です。
地元メディアの報道によると、2025年度の運行経費は約1億3,000万円にまで膨らみ、そのうち鳥取市が負担する額は1億円あまりに達しています。15年前と比べて運行経費は約3倍になったとされています。
「100円で乗れるバス」は利用者にとって非常に分かりやすく、便利な存在です。
しかし、運転士不足や人件費、燃料費などの上昇が続く中で、自治体が年間1億円を超える負担を続けることには限界があるのではないでしょうか。
今回の値上げは、まさに「100円バスを残すための150円」という側面もありそうです。
「くる梨」をめぐっては、すでに2026年10月から大幅な減便と最終便の繰り上げが予定されています。運転士不足や燃料費・人件費などのコスト上昇が背景にあり、今回の運賃値上げも、こうした状況と無関係ではありません。
150円にする理由は「路線バスの初乗り運賃」
では、なぜ200円などではなく150円なのでしょうか。
鳥取市は今回の改定案について、路線バスとの運賃バランスも考慮しています。
「くる梨」は一部区間で路線バスと同じ区間を走っているため、路線バスと同等のサービスを提供していると考え、路線バスの初乗り運賃170円を超えない金額とする考えです。
さらに、2025年度に実施したアンケートでは、150円を容認する割合が多かったことも理由として挙げられています。
100円という分かりやすさを完全になくすのではなく、150円という比較的分かりやすい運賃にすることで、「くる梨」の使いやすさをできるだけ維持する狙いもあります。
150円になっても「くる梨」の役割は変わらない
運賃が150円になったとしても、「くる梨」が鳥取市中心部の重要な交通手段であることに変わりはありません。
鳥取市によれば、「くる梨」は中心市街地の活性化だけでなく、通勤・通学、通院、買い物など、市民の日常生活を支える移動手段として運行されています。
観光客にとっても、JR鳥取駅から鳥取市中心部の各施設へ移動する際に使いやすいバスです。
くる梨の路線図・時刻表を見ると、赤・青・緑の3コースが設定され、鳥取駅を起点として市街地を循環していることが分かります。
100円から150円になると聞くと、利用者にとっては「50円の値上げ」と感じるでしょう。
しかし、バス事業者側から見れば、運転士の確保や燃料費など、運行を続けるためのコストは大きく上昇しています。
年間1億円を超える市の負担を考えると、今回の運賃改定は「値上げするか、運行そのものを維持できなくなるか」という問題として考える必要もありそうです。
「1億円の公費負担」は限界なのか?
今回の「くる梨」の値上げで考えさせられるのが、自治体による公共交通への公費負担です。
公共交通は、利用者から支払われる運賃だけで採算を取ることが難しい場合があります。
特に地方都市では、自家用車の普及や人口減少などによって利用者が減少する一方、運転士不足や人件費、燃料費などのコストは上昇しています。
「くる梨」も例外ではありません。
市民にとっては100円という安さが魅力ですが、その一方で運行経費の約8割を公費で負担しているという現実があります。
今回、鳥取市は運賃を150円に引き上げることで、利用者にも一定の負担を求めながら「くる梨」の運行を維持する方向へ舵を切りました。
もちろん、150円に値上げしたからといって、市の負担がなくなるわけではありません。
むしろ今後は、「150円にしたことでどの程度収支が改善するのか」「利用者数への影響はどうなるのか」が重要になりそうです。
安さを維持することだけが公共交通を守る方法ではありません。
利用者、自治体、運行事業者がそれぞれ負担を分かち合い、将来にわたって運行を続けられる仕組みを作ることも重要です。
自治体による公共交通への公費負担は他でも問題に
「くる梨」の運行を維持するため、鳥取市は大きな公費負担を続けています。しかし、自治体が公共交通を支えるための負担が課題となっているのは鳥取市だけではありません。
名古屋鉄道広見線では沿線自治体による鉄道の維持が大きな課題となっているほか、富山地方鉄道でも複数の自治体が路線維持に向けて負担を担う一方、今後の費用負担が課題となっています。
「くる梨」はバス、「広見線」は鉄道、「富山地方鉄道」は地域鉄道と、それぞれ事情は異なりますが、地域の移動手段を維持するために自治体がどこまで負担するのかという点では共通する問題です。
まとめ 2027年春の値上げに向けて市民から意見募集
鳥取市は2026年8月7日正午から9月3日17時まで、「くる梨」の運賃改定について市民から意見を募集しています。
現時点では「改定案」であり、2027年春の値上げが最終決定したわけではありません。
今後、市民から寄せられた意見を踏まえて正式な運賃改定へ進むことになります。
「100円バス」として長年親しまれてきた「くる梨」。
100円から150円への値上げは、利用者にとって決して小さくありません。
しかし、年間1億円を超える公費負担を考えると、「100円を維持すること」だけでなく、「どうすれば将来もくる梨を走らせ続けられるのか」という視点も必要になってきそうです。
2027年春、「くる梨」は22年以上続いた100円運賃から150円へ変わることになるのでしょうか。
今後の市民からの意見や、鳥取市の正式決定にも注目したいところです。




