茨城県龍ケ崎市を走る関東鉄道竜ヶ崎線で、今後の路線のあり方をめぐる協議が始まっています。
関東鉄道は2026年1月、竜ヶ崎線について「現在の事業形態では近い将来、事業継続が困難」と説明。人口減少による利用者の減少に加え、車両や鉄道施設の老朽化に伴う設備投資などが大きな課題となっています。
龍ケ崎市では関東鉄道や国、茨城県、学識経験者、市民などが参加する「龍ケ崎市地域公共交通協議会分科会」を設置し、竜ヶ崎線の今後について協議を進めています。
竜ケ崎市ホームページ
125年以上にわたり地域を支えてきた「竜鉄」
関東鉄道竜ヶ崎線は、竜ヶ崎駅とJR東日本常磐線を接続する佐貫駅間を結ぶ路線です。
1900年に開業し、2025年度で開業125周年を迎えました。
現在も通勤・通学を中心とした地域の重要な交通手段となっており、沿線では「竜鉄」の愛称でも親しまれています。
しかし、全国の地方鉄道と同様に、人口減少や少子高齢化、働き方の変化などによって利用者は減少傾向にあります。
龍ケ崎市によると、2024年度の利用者は1995年度のピーク時と比較して半分以下になっています。関東鉄道の資料でも、竜ヶ崎線の輸送人員は1995年をピークに減少し、2020年度には新型コロナウイルス感染症の影響でさらに大きく減少。その後は回復したものの、2019年度の水準には戻っていません。
2025年度についても回復傾向が鈍化し、利用状況は前年とほぼ横ばいとなっています。
年間5000万円程度の赤字が発生
利用者の減少に加えて、鉄道を取り巻くコストも上昇しています。
関東鉄道の資料によると、2024年度の竜ヶ崎線は約1億3000万円の収入に対して、運行費用は約1億8000万円。約5000万円の赤字となりました。
2024年10月には運賃改定を実施していますが、運賃改定による増収だけでは、物価高騰や人件費などによる費用増加を吸収できていません。
今後についても、物価高騰や人件費の上昇、施設の老朽化に伴う修繕費などによって運行費用は増加し、赤字額は継続的に拡大することが見込まれています。龍ケ崎市も、近年は毎年5000万円程度の赤字が発生していると説明しています。
将来的な人口減少で利用者のさらなる減少を予想
今後の大きな問題の一つが、沿線人口の減少です。
関東鉄道が2026年1月に示した資料では、竜ヶ崎線沿線では少子高齢化が進み、今後も沿線人口は減少していくことが想定されています。
特に竜ヶ崎駅周辺では、茨城県や龍ケ崎市全体、佐貫駅周辺と比較して人口減少のスピードが速いとされています。
さらに、生産年齢人口の割合が低下する一方、高齢者人口の割合は上昇することも予測されています。
これまで関東鉄道や自治体、地域団体などはイベントの開催など利用促進策を進めてきました。
しかし、今後の通勤・通学利用者の減少を補えるほどの新たな需要を見込むことは難しいと関東鉄道は説明しています。
さらに大きな問題が車両の老朽化
alt="関東鉄道 竜ケ崎駅 キハ2000形 " class="wp-image-13222"/>利用者減少と並んで、竜ヶ崎線が抱えているもう一つの大きな問題が、車両や鉄道施設の老朽化です。
竜ヶ崎線で使用されている車両3両(キハ532形1両・キハ2000形2両)は、2026年時点で経年が29~45年となっており、老朽化が進んでいます。
今後は修繕費用が増加するだけでなく、近い将来には3両すべてを新車へ更新する必要があるとされています。
しかも、物価高騰の影響などから、新車導入には現在でも1両あたり4~5億円が必要とされています。
3両すべてを更新すると単純計算で12~15億円規模となります。
利用者が減少して収入が伸びにくい一方で、多額の設備投資が必要になるという、地方鉄道が抱える非常に厳しい状況が竜ヶ崎線でも表面化しています。
関東鉄道は、今後の収入予測では新車導入に伴う減価償却費を賄うことができず、このままでは現在の運行レベルを維持することが困難になると説明しています。
これまでもさまざまな経営改善を実施
関東鉄道も、何も対策をしてこなかったわけではありません。
沿線の観光や鉄道利用を促す取り組みとして、茨城県や栃木県東部を対象とした「ときわ路パス」に参加しています。このきっぷは、関東鉄道を含む対象路線を自由に乗り降りできるきっぷです。
また、2008年にはIC乗車券「PASMO」を導入。2015年にはコロッケクラブ龍ケ崎と連携した「コロッケフリーきっぷ」を発売し、これまで約6000人が利用しています。
また、「竜ヶ崎探検隊」や「龍ケ崎まちみん」、開業125周年記念イベントなど、行政や地域団体と協力した駅前活性化の取り組みも実施されています。
こうした利用促進策によって鉄道に乗るきっかけを増やすことは重要ですが、人口減少による利用者減少や老朽化した車両の更新費用といった問題を解決するには、利用促進だけでは難しい状況となっています。
一方、費用を抑えるための合理化も進められてきました。
佐貫駅は2021年に終日無人化され、現在の有人駅は竜ヶ崎駅のみとなっています。
さらに、保線担当や車両担当の技術員削減なども実施。関東鉄道によると、1995年に16人だった運営人員は2025年には12人となっています。
つまり、利用促進と増収を図りながら、同時に運営の効率化も進めてきたものの、それでも今後の事業継続に厳しい見通しが示されていることになります。
「廃止ありき」「存続ありき」ではなく今後を協議
今回のニュースで注意したいのは、現時点で竜ヶ崎線の廃止が決まったわけではないということです。
龍ケ崎市は「廃止ありき」「存続ありき」という前提を置かず、竜ヶ崎線の今後のあり方について協議を進めています。
2026年4月には「龍ケ崎市地域公共交通協議会分科会」の第1回会合を開催。
利用者アンケートの内容や竜ヶ崎線の現状、路線維持に関する手法、代替交通として考えられる手法などについて情報共有が行われました。
続いて5月21日に開催された第2回分科会では、アンケート結果の詳細や実態調査の実施項目・スケジュール案のほか、竜ヶ崎線を維持する場合に必要となる費用、代替手段を整備・運行する場合に必要となる費用について、大まかな試算が示されています。
今後は、こうした調査や分析を踏まえて、鉄道を維持する場合だけでなく、別の交通手段へ転換した場合も含めて比較検討していくことになります。
2027年度にクロスセクター分析を実施へ
関東鉄道が示したスケジュールでは、2027年度に「クロスセクター等調査・分析」を実施する予定です。
これは鉄道だけの収支を見るのではなく、鉄道を維持することで地域にもたらされる効果と、鉄道を別の交通手段に転換した場合に必要となる費用などを比較するための重要な調査となります。
その分析結果を踏まえ、2028年3月ごろには事業構造変更の方針を決定し、龍ケ崎市地域公共交通協議会で方針を審議する予定です。
関東鉄道は、今後の協議・検討を進めたうえで、2年後を目途に竜ヶ崎線の方針を決定したいとしています。
鉄道を残すために自治体がどこまで支援できるか
今回の竜ヶ崎線の問題は、単純に「赤字だから廃止する」という話ではありません。
地域の公共交通として鉄道を残すのであれば、利用者からの運賃収入だけでなく、自治体などがどのように支えていくのかという問題にもなります。
実際、関東鉄道の資料では、全国の地域鉄道における自治体支援の事例として、群馬県の上毛電気鉄道・上信電鉄などで設備投資への補助金や維持管理費への補助が行われている事例を紹介。
また、一畑電車では島根県、松江市、出雲市が設備投資や維持管理費を支援する事例も示されています。
国の制度では、鉄道事業再構築事業を活用することで、車両や線路などの設備投資について国の支援を受けられる場合があります。ただし、ランニングコストは対象外とされています。
竜ヶ崎線を将来にわたって残していくためには、関東鉄道だけでなく、龍ケ崎市や茨城県、国、そして地域住民がどのような役割を担うのかが重要になりそうです。
125年続く竜鉄の未来はどうなる?
竜ヶ崎線は2025年度に開業125周年を迎えたばかりです。
長い歴史を持つ地域の鉄道ですが、人口減少による利用者減少、年間5000万円程度の赤字、車両の老朽化、そして1両4~5億円ともされる新車導入費用という複数の課題を抱えています。
一方で、竜ヶ崎線は現在も地域住民の通勤・通学などを支える公共交通機関です。
だからこそ、今回の協議では「鉄道を残すか、廃止するか」だけではなく、将来の龍ケ崎市にとってどのような公共交通ネットワークが必要なのかという視点から検討することが重要になりそうです。
龍ケ崎市では2026年度、2027年度に竜ヶ崎線の今後のあり方について検討・協議を行い、2028年度にはその結果を踏まえた地域公共交通ネットワークの検討を進める予定です。
125年以上にわたり地域を走り続けてきた「竜鉄」。
その未来がどうなるのか、今後の協議の行方に注目したいところです。
※現時点で竜ヶ崎線の廃止が決定したわけではありません。今後のあり方について、関東鉄道と龍ケ崎市などが協議・検討を進めています。


