豊橋鉄道は2026年8月31日、渥美線と東田本線(市内線)の旅客運賃について、2027年5月を予定する運賃改定を国土交通省中部運輸局に申請しました。
豊橋鉄道では2024年3月にも運賃改定を実施していますが、今回も設備の老朽化や維持管理費、原材料費の高騰などを背景に、再び運賃値上げを申請することになりました。
今回の運賃改定では、渥美線の普通運賃が20円~40円、東田本線(市内線)が30円値上げされる計画です。
豊橋鉄道ホームページ
渥美線・東田本線(市内線)の両方で運賃値上げ
渥美線は20円~40円の値上げ
渥美線は新豊橋駅から三河田原駅まで18.0kmを結ぶ路線です。
今回の申請では、距離に応じて普通運賃を20円~40円値上げします。
主な区間の運賃は次のようになります。
| キロ程 | 現行運賃 | 申請運賃 | 値上げ額 |
|---|---|---|---|
| 1kmまで | 170円 | 190円 | 20円 |
| 2kmまで | 170円 | 200円 | 30円 |
| 3kmまで | 180円 | 210円 | 30円 |
| 4kmまで | 180円 | 220円 | 40円 |
| 5kmまで | 210円 | 240円 | 30円 |
| 10kmまで | 340円 | 370円 | 30円 |
| 15kmまで | 480円 | 510円 | 30円 |
| 18kmまで | 550円 | 580円 | 30円 |
渥美線の全区間を利用した場合は、現在の550円から580円となり、30円の値上げです。
渥美線の改定率は、定期外運賃で11.2%、定期運賃で11.7%となっています。
東田本線は200円から230円へ
豊橋市内を走る東田本線(市内線)は、現在の普通運賃200円から230円へ30円値上げされます。
改定率は15.0%で、渥美線よりも高い改定率となっています。
通勤定期券についても値上げされ、渥美線の大人1カ月定期は距離に応じて改定されます。
東田本線の大人1カ月通勤定期は、現在の8,400円から9,660円となります。
6か月の通学定期の割引率を拡大
一方で、通学定期券については6か月定期の割引率が拡大されます。
- 3か月定期:1か月定期の値段の3倍から5%引き→変更なし
- 6か月定期:1か月定期の値段の3倍から10%引き→12%引き
2024年3月にも運賃改定 なぜ再び値上げ?
今回の運賃改定で気になるのが、豊橋鉄道が2024年3月にも運賃改定を行っていることです。
わずか数年で再び値上げを申請する背景には、鉄道を取り巻く厳しい経営環境があります。
豊橋鉄道によると、人口減少や少子高齢化、生活様式の変化などにより鉄軌道事業を取り巻く環境は厳しくなっています。
さらに、安全運行に必要な設備の老朽化が進んでいるほか、今後の維持管理費の増加や原材料費の高騰も大きな負担となっています。
2024年3月の運賃改定後も、軌道や路盤、電路、車両などの更新・修繕を進めてきました。
それでも今後の利用者数が大きく増えることは見込めず、企業努力だけではコスト増を吸収することが難しいとして、今回の運賃改定を申請しています。
渥美線では1800系の更新を計画
alt="豊橋鉄道渥美線1800形43(桜)" class="wp-image-15179"/>今回の発表で鉄道ファンとして特に気になるのが、渥美線で使用されている1800系です。
豊橋鉄道は、まもなく製造から60年を迎える1800系について、制御装置、補助電源装置、自動列車停止装置受信装置などの更新・改修を実施するとしています。
1800系は、東急7200系を譲り受けて導入された車両で、現在の渥美線を支える車両です。
alt="東急7000系・7200系" class="wp-image-15182"/>製造から長い年月が経過していますが、今回の設備投資によって今後も安全に使用するための更新が進められることになります。
今回の運賃値上げは、こうした老朽車両の維持・更新を含め、安全な鉄道を維持するための費用にも充てられることになります。
レールや電柱などの設備も更新
車両だけでなく、渥美線の設備についても更新が計画されています。
レール分岐器の更新、道床砕石の交換、木製電柱のコンクリート電柱化などを進める計画です。
東田本線でも、レールの重軌条化や軌道敷の舗装改修、連接軌道化更新などを実施します。
また、東田本線で使用されている800形やT1000形についても、制御装置・補助電源装置の更新や予防保全対策を行う予定です。
2027年度には渥美線でIC専用改札機を新たに導入する計画もあり、運賃改定による増収を安全対策だけでなく、利用者サービスの向上にも活用します。
豊橋鉄道のちょっと気になる話
名鉄グループなのに「元東急」の車両が走る渥美線
豊橋鉄道は名古屋鉄道グループの会社ですが、渥美線で使用されている1800系は名鉄の車両ではありません。
1800系は、2000年に東急から譲り受けた7200系がルーツです。
渥美線では1997年の1500Vへの昇圧時に名鉄7300系を導入しましたが、通勤輸送への対応やダイヤ面で課題があり、わずか数年で車両の置き換えが行われました。その後、東急7200系が1800系として導入され、現在まで渥美線の主力車両として活躍しています。
現在の1800系は製造からまもなく60年を迎えます。今回の運賃改定では、制御装置や補助電源装置などの更新・改修も計画されており、長年にわたって渥美線を走ってきた「元東急車」が、これからも活躍を続けるための設備更新が進められることになります。
東田本線には「日本一の急カーブ」も
alt="豊橋鉄道東田本線 日本一の急カーブ(井原電停交差点)" class="wp-image-15178"/>豊橋鉄道の東田本線には、全国の路面電車の中でも特に有名な場所があります。
それが、井原電停交差点にある半径11mの急カーブです。
井原電停から運動公園前方面へ向かう線路は、交差点で本線からほぼ直角に分岐するように大きく曲がっています。このカーブは「井原カーブ」とも呼ばれ、鉄道・軌道の営業路線としては日本一の急カーブとされています。
半径11mという数字だけでは分かりにくいですが、実際に電車が走る様子を見ると、その急カーブぶりがよく分かります。
車体と線路の向きが大きく変わり、車両によっては構造上このカーブを通過できないものもあります。例えば、低床式のT1000形「ほっトラム」は井原~運動公園前間には入らず、駅前~赤岩口間を中心に運用されています。
東田本線では、駅前から赤岩口へ向かう本線から井原で運動公園前方面が分岐しています。
そのため、豊橋鉄道の路面電車に乗車した際には、井原電停で運動公園前
運賃値上げでも鉄道を維持するための投資へ
豊橋鉄道の鉄軌道事業は、2025年度実績で渥美線の収支率が99.0%、東田本線が91.7%となっています。
今後、現行運賃のまま推移した場合、2028~2030年度の平年度収支率は渥美線で80.7%、東田本線で74.1%まで悪化すると豊橋鉄道は試算しています。
今回の申請運賃では、渥美線89.6%、東田本線83.2%まで改善する見込みです。
それでも赤字がなくなるわけではありません。
運賃を値上げしても鉄軌道事業を取り巻く環境が厳しいことに変わりはなく、今後も車両や線路、電気設備などの維持・更新が重要になります。
2027年5月の運賃改定は現時点では「認可申請」であり、正式な運賃は国土交通省の認可後に決定されます。
豊橋鉄道の渥美線と東田本線を利用する人にとっては負担増となりますが、今回の運賃改定は、まもなく製造から60年を迎える1800形をはじめとする車両や、線路などの設備をこれからも安全に使い続けるための投資という側面もあります。
今後、2027年5月の運賃改定が正式に決定されるのか、そして老朽化した1800形がどのように更新されていくのかにも注目したいところです。

