わずか9年 石見交通が三江線代替バス「江津川本線」を2027年4月に廃止の意向 今後の赤字ローカル線議論に影響も

三江線(キハ120形) 路線バス

2018年3月末に廃止されたJR三江線。翌4月からは、沿線の地域交通を確保するため、鉄道に代わるバス路線などが運行されています。

ところが、その三江線の代替交通の一つである石見交通の「江津川本線」について、2027年3月末で廃止する意向が沿線自治体に伝えられていたことが分かりました。

三江線の廃止から、わずか9年です。

石見交通、江津川本線27年3月末に廃止へ 沿線市町に意向通知 旧三江線代替バスの幹線

山陰中央新報デジタルホームページ

三江線廃止後に運行を始めた「江津川本線」

JR三江線は、江津駅と三次駅を結ぶ全長108.1kmのローカル線でしたが、2018年3月31日の運行を最後に廃止されました。

翌4月1日からは、沿線地域の移動手段を確保するため、複数の代替交通が運行されています。

その一つが、石見交通の江津川本線です。

現在は江津市の済生会病院から川本町の石見川本までを結んでおり、江津市と川本町をまたぐ地域の路線として運行されています。

島根県によると、2026年度から2030年度までを計画期間とする「第2期三江線沿線地域公共交通計画」も策定されており、三江線代替交通を含めた広域的な公共交通ネットワークの確保が進められています。

しかし、その計画が始まったばかりのタイミングで、江津川本線の存続をめぐって大きな問題が浮上しました。

石見交通が2027年3月末で廃止の意向

石見交通は、江津川本線について2027年3月末で廃止する意向を、2026年8月4日付で江津市と川本町に伝えたと報じられています。

理由として挙げられているのが、利用者の低迷と沿線人口の減少、そして運転手不足です。

江津川本線は現在、1日9便が運行されています。

しかし、2023年10月から2024年9月までの1年間では、1日あたりの乗客数が8.3人にとどまりました。

自治体から運行を委託される形で路線を維持してきましたが、利用者が少ない中で運行を続けることは、バス事業者にとっても大きな負担になります。

石見交通は、コロナ禍が終われば利用が回復することを期待していたものの、中山間地域の路線を維持する難しさがあるとして、廃止の意向を示しています。

1日8.3人という利用実態

今回のニュースで特に気になるのが、江津川本線の利用状況です。

2023年10月から2024年9月までの1年間で、江津川本線の1日あたりの乗客は8.3人だったと報じられています。

江津川本線は現在1日9便が運行されていますから、単純計算では1便あたり1人にも満たない数字です。

ここで注意したいのが、この「8.3人」という数字の意味です。

地域間幹線系統確保事業では、補助対象となるバス路線について、運送収入や利用実態を適切に把握することが求められています。

会計検査院も、市町村からの運賃補填額を運送収入に計上する場合には輸送実態を伴うことが必要であることや、市町村が発券した回数券などについても実際の利用状況を把握する必要があると指摘しています。

リンク:(2) 地域間幹線系統確保事業において、運送収入に計上できる市町村からの運賃補填額は輸送実態を伴うことが必要であることを具体的に示したり、市町村が発券を受けた回数券等の利用実態を把握したりなどすることにより、同事業が輸送実態を反映した適切な生活交通計画に基づき実施されて、地域の特性、実状に応じた最適な交通手段の提供に資するものとなるよう改善の処置を要求したもの | 第3章 | 平成28年度決算検査報告 | 会計検査院

つまり、今回の8.3人という数字も、単純に「バス停で何人乗ったか」という話だけではなく、地域間幹線系統確保事業における利用実績として算出された数字と見ることができます。

一方、三江線について島根県が公表している資料では、2013年度の輸送密度は44人/日でした。

輸送密度とバスの利用実績は算出方法・算出区間が異なりますので、両者を完全に同じ指標として比較することはできません。

それでも、三江線が廃止される前の通常期の利用実態が輸送密度44人/日だったのに対して、その代替交通として運行されている江津川本線の利用実績が1日8.3人というのは、非常に厳しい状況だと言えそうです。

しかも、三江線では廃止が決まった後に「乗り納め」などによる利用増加もありました。

そうした一時的な需要が膨らむ前の2013年度の数字と比べても、現在の代替バスの利用規模が小さいことは注目されます。

ただし、鉄道とバスでは路線の長さや停留所の配置、運行方法が異なります。

そのため、数字だけを見て「バスへの転換によって利用者がこれだけ減った」と結論づけることもできません。

それでも、鉄道を廃止してバスへ転換した後に、今度はそのバスの利用者が少なくなり、運転士不足なども重なって路線維持が難しくなっている。

この点は、今後の赤字ローカル線を考えるうえで無視できない問題ではないでしょうか。

国の補助基準を下回っても「特例」で支援

江津川本線をめぐっては、単純に「利用者が少ないから廃止」という話だけではありません。

国の地域公共交通に対する補助制度では、一定の利用実績などが基準となりますが、江津川本線はその基準を下回る状況でも、特例として支援を受けてきました。

2025年度の事業評価では、江津川本線について、直近年度の実績をもとにした収支率20.36%、利用者数23,789人、行政負担額3,415万8,000円が示されています。

また、この事業評価では、江津川本線について「通勤、通学、通院などのための移動手段として重要な役割を果たしている」とされています。

つまり、利用者数だけを見ると厳しい一方で、地域にとっては簡単に代替できない交通手段でもあるということです。

三江線廃止時にはJR西日本も17億円余りを支援

さらに今回の問題を考えるうえで重要なのが、三江線廃止時の支援です。

報道によると、JR西日本は三江線の廃止に伴う沿線支援として17億5700万円を拠出。

沿線自治体も、赤字補填の10年分相当として8億円を拠出しています。

つまり、鉄道を廃止してバスに転換すれば、それですべてが解決するわけではありません。

鉄道よりも柔軟な運行ができ、維持費も抑えられるとされるバスであっても、人口減少が続けば利用者は減少します。

そして利用者が減れば、バス事業者の負担が増え、最終的にはバスそのものの維持が難しくなる可能性があります。

実際、三江線ではこれまでも代替バス路線の利用低迷や路線廃止が問題になってきました。山陰中央新報も2023年に、三江線廃止後の代替バスについて「赤字、路線減少」と報じています。

「廃止したら終わり」では地域交通を維持できない

今回の江津川本線の問題を見て、だから「三江線を残すべきだった」と考える必要はないと思います。

利用者が少なく、鉄道の維持が難しいのであれば、バスなど別の交通手段へ転換することは選択肢の一つです。

ただし、そこで終わりにしてはいけないのではないでしょうか。

鉄道を廃止する際に、一定額の支援金を拠出して「代替交通は地域で維持してください」とするだけでは、人口減少が続く地域では、その後に同じ問題が繰り返される可能性があります。

三江線の場合、JR西日本は廃止に伴う沿線支援として17億5700万円を拠出し、沿線自治体も赤字補填10年分相当として8億円を拠出しました。

それでも三江線の廃止から9年で、主要な代替バス路線の一つである江津川本線が廃止の危機を迎えています。

もちろん、今回の江津川本線の問題を三江線廃止時の支援だけに結びつけることはできません。

沿線人口の減少や利用者の低迷、運転士不足など、現在のバス事業が抱える問題も大きな要因です。江津川本線は2023年10月からの1年間で、1日平均の利用者が8.3人にとどまっています。

だからこそ、鉄道を廃止するときに「いくらお金を渡すか」だけではなく、「廃止後の地域交通に誰が、どこまで関わるのか」まで決めておくことが重要なのではないでしょうか。

久留里線や津軽線では「廃止後」も見据えた取り組み

この点では、JR東日本の久留里線や津軽線の取り組みが参考になります。

久留里線の久留里~上総亀山間では、鉄道をバスなどの交通へ転換する方向で議論が進められています。

JR東日本は、廃止後18年間のバス輸送を保証する方針を示しており、単に鉄道を廃止して地域に任せるのではなく、一定期間は鉄道事業者も地域交通に関わる形になっています。

津軽線の蟹田~三厩間でも、JR東日本、青森県、今別町、外ヶ浜町などが代替交通について協議しています。

2027年4月からは、わんタクや代行バス、町営バスなどを統合した自動車交通を運行する計画で、JR東日本も18年分の運行等経費として33億6600万円を拠出します。

さらに2026年8月には、代替交通との乗り換えを考慮して蟹田駅のすべての旅客列車を1番線発着に変更しました。

つまり、鉄道がなくなる区間についても、「廃止するから後は地域で考えてください」ではなく、廃止前から代替交通を含めた地域交通の仕組みづくりに関わっているわけです。

そして11月には芸備線の議論も

こうした「廃止後の交通をどうするのか」という問題は、これから大きな議論を迎えることになります。

岡山県と広島県を走る芸備線では、備中神代~備後庄原間を対象に再構築協議会で議論が続いています。

2026年度は、鉄道の増便や二次交通の運行、列車の観光コンテンツ化などの実証事業が行われています。

さらに、他の交通モードについても地域経済効果を試算する方向で議論が進められており、鉄道だけではなく、バスなどを含めた交通モード全体を比較しながら今後のあり方を検討する段階に入っています。

2026年11月には第5回芸備線再構築協議会が予定されており、これまでの実証事業や調査事業の中間報告が行われる予定です。

芸備線について今後どのような再構築方針が示されるのかは、今回の江津川本線の問題を考えるうえでも注目しておきたいところです。

「廃線=地域交通の問題から手を離す」ではない

ローカル線をめぐる議論では、どうしても「鉄道を残すのか、バスに転換するのか」という二択になりがちです。

しかし、今回の江津川本線の問題が示しているのは、交通モードを変えれば問題が解決するわけではないということではないでしょうか。

鉄道を廃止してバスに転換したとしても、人口減少が続けば利用者は減少します。

さらにバスの場合は、運転士不足という鉄道とは別の問題もあります。

そのため、鉄道を廃止する際に一定額の支援金を拠出し、「これで代替交通を維持してください」とするだけではなく、廃止後も鉄道事業者を含めて地域交通に関わり続ける仕組みが必要なのではないでしょうか。

久留里線では18年間のバス輸送を保証。

津軽線では、代替交通の構築だけでなく、鉄道駅での乗り換え改善までJR東日本が関わっています。

そして芸備線では、鉄道とバスなど複数の交通モードについて、実証事業や調査を行いながら地域交通のあり方そのものを議論しています。

これらはそれぞれ事情が異なるため、同じ仕組みをそのまま他地域に当てはめられるわけではありません。

それでも、今後の赤字ローカル線を考えるうえでは、「鉄道を廃止するかどうか」だけではなく、「廃止した場合、その後の地域交通を誰がどのように支えるのか」までセットで議論する必要があることは共通しているのではないでしょうか。

三江線の廃止からわずか9年で、代替バスの一つが存続の危機を迎えた今回のケース。

11月に予定されている芸備線再構築協議会の議論も含め、これからのローカル線問題では、「廃止後」の交通をどう持続させるのかが、これまで以上に重要な論点になりそうです。

タイトルとURLをコピーしました