2023年6月の大雨によって被災し、現在も全線で代行バスの運転が続いているJR美祢線。
美祢線ではBRT(バス高速輸送システム)による復旧に向けた検討が進められていますが、JR西日本がBRTで復旧する場合、現在の鉄道施設を地元側へ譲渡することを検討していると報じられました。
これまで美祢線の復旧については「鉄道で復旧するのか、BRTにするのか」という交通モードが大きな焦点となっていました。
しかし、BRT化する場合には、現在の線路や駅舎などをその後どうするのかという問題もあります。
今回は、JR西日本による鉄道施設の譲渡検討について、固定資産税の面も含めて考えてみます。
JR美祢線、BRTでの復旧実現なら線路や駅舎を自治体などに譲渡の可能性…JR西日本広島支社長が考え
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BRT化に向けて停留所の追加・変更も検討
美祢線では、山口県、沿線3市、美祢市・山陽小野田市・長門市、JR西日本などで構成する「美祢線沿線地域公共交通協議会」でBRTによる復旧に向けた協議が続いています。
美祢市が2026年8月に開催した住民説明会では、BRT化を見据えた停留所の追加・変更などについて説明されています。
つまり、BRTになった場合に現在の鉄道駅がそのままBRTの乗降場所として使われるとは限りません。
現在の駅舎やホーム、線路などをどうするのかは、BRT化とは別に考える必要があります。
今回報じられた「鉄道施設を地元へ譲渡」という話は、この問題に対する一つの方向性と言えそうです。
廃線後の線路敷は固定資産税がどうなる?
今回のニュースを見て、ネット上では「JR西日本が固定資産税の負担を避けるためではないか」という見方もあります。
これはJR西日本が公式に説明している理由ではありません。
ただ、固定資産税の面から見ると、鉄道を廃止した後の線路敷をどう扱うのかという問題は確かにあります。
鉄軌道用地については、沿接する土地の価額の3分の1で評価する仕組みがあります。国土交通省も鉄軌道用地について「沿接する土地価格の1/3評価」という固定資産税の特例を示しています。
しかし、これはあくまで「鉄道又は軌道の用に供する土地」が対象です。
鉄道を廃止して線路を撤去し、その土地を別の用途に使うことになれば、いつまでも鉄軌道用地として扱えるとは限りません。
廃線後の線路敷については、現況や利用方法などを踏まえて評価する必要があります。
今回見つけた不動産鑑定士・税理士による解説記事でも、鉄道廃止後の線路敷の固定資産税について詳しく取り上げられています。
リンク:■鉄道の廃止で「線路敷」の税金はどうなる? 不動産鑑定士・税理士目線で探ってみた(冨田建) – エキスパート – Yahoo!ニュース
美祢線についても、現在の鉄道用地をJR西日本が所有し続けるのか、それとも地元側へ譲渡するのかによって、固定資産税や維持管理の負担を考える必要がありそうです。
駅舎は線路敷とは少し違う
一方で、駅舎については線路敷とは分けて考えた方がよさそうです。
固定資産税では、土地と家屋は別々に評価されます。
駅舎などの家屋については、「鉄道施設だから一律に3分の1評価になる」という仕組みではありません。
建物の構造や用途、経年などを考慮して家屋として評価されます。
美祢線のようなローカル線では古い駅舎も多いため、築年数による減価が進んでいれば、家屋そのものの評価額はかなり低くなっている可能性があります。
そのため、固定資産税の問題を考える場合には、駅舎そのものよりも、広い範囲に及ぶ線路敷などの土地の方が影響が大きくなる可能性があります。
厚保駅・於福駅はすでに地域施設として使われている
一方、美祢線には「鉄道施設を地域施設として活用する」という先例があります。
厚保駅と於福駅では、駅舎がそれぞれ「厚保地域交流ステーション」「於福地域交流ステーション」として活用されています。
美祢市の条例でも、両施設は地域コミュニティ活動の促進、美祢線利用者との交流、駅利用者の利便性向上などを目的とする施設として位置付けられています。
厚保地域交流ステーションについては、美祢市も地元住民や美祢線利用者との交流拠点として紹介しています。地域のイベントなども開催されています。
現在は美祢市の公の施設として、指定管理者による管理運営も行われています。2026年4月現在、於福地域交流ステーションと厚保地域交流ステーションはいずれも指定管理者制度の対象となっています。
つまり、厚保駅と於福駅については、すでに「駅舎を地域の施設として使う」という形ができています。
BRT化後も駅舎を残すという選択肢
美祢線がBRTに転換された場合、現在の駅舎をどうするのかは重要な問題になります。
例えば、
- BRTの停留所を道路側に設置する
- 現在の駅舎は待合所として残す
- 地域交流施設として活用する
といった形も考えられます。
この場合、BRTの乗降場所と現在の駅舎が別の場所になる可能性があります。
そのため、駅舎を残すことと、その土地全体が鉄道用地として扱われ続けることは別の問題になります。
むしろ、鉄道として使用しなくなった土地や施設を誰が所有するのかが重要になってきます。
地元へ譲渡すれば地域施設として残しやすい
JR西日本が鉄道施設を所有し続ける場合、鉄道事業として使用しなくなった土地や施設についても、所有者として管理していく必要があります。
一方で、自治体などが取得して公共施設として利用するのであれば、地方公共団体が所有する固定資産については、地方税法上の非課税の仕組みも関係してきます。
また、自治体によっては条例で公共施設やバス待合所などについて減免・課税免除の制度を設けている例もあります。
例えば新潟県胎内市では、固定資産税について公共のために使用する固定資産などを減免・免除の対象としています。
ただし、これは自治体によって制度や対象が異なるため、美祢市で同じ扱いになるとは限りません。
そのため、今回のJR西日本による施設譲渡について「固定資産税対策」と断定することはできません。
「固定資産税」だけではなく地域の施設として残す意味も
今回の鉄道施設の地元への譲渡については、固定資産税の負担という面から考えることもできます。
鉄道として使わなくなった線路敷をJR西日本が所有し続ける場合、鉄軌道用地としての評価をそのまま受けられるとは限らず、土地の維持管理も必要になります。
一方、地元側が取得すれば、地域施設や道路、BRTの待合所など、その地域に必要な用途で活用できる可能性があります。
ただし、JR西日本が今回の譲渡検討について固定資産税を理由として説明しているわけではありません。
厚保駅や於福駅のように、すでに地域交流施設として活用されている駅もあります。
そう考えると、今回の施設譲渡には、
「鉄道事業をやめた後の施設をJR西日本が持ち続けるのではなく、地域で活用できるものは地域に引き継ぐ」
という意味もあるのではないでしょうか。
廃線跡を別用途に活用するケースも
廃線後の鉄道用地を別の用途に転用する例もあります。
JR北海道の日高本線では、2021年に鵡川~様似間が廃止されました。その後、JR北海道は廃線となった区間の土地を太陽光発電用地として活用する計画を発表しています。
これは鉄道施設を地元へ譲渡する美祢線とは異なり、JR北海道が廃線跡を自ら別の用途に転用するケースです。
鉄道として使わなくなった線路敷をどうするのかについては、廃線後も鉄道会社が保有して別用途に活用する方法もあれば、自治体などへ譲渡して地域施設として活用する方法もあります。
美祢線についても、BRT化後の線路敷や駅舎をどうするのかは、単に「撤去する・残す」という問題だけではありません。誰が所有し、どのような用途で利用するのかによって、その後の維持管理や固定資産税の扱いも変わってくることになります。
美祢線は「BRTになった後」も考える必要がある
美祢線のBRT化については、これまで「鉄道を残すのか、BRTに転換するのか」という点が中心になってきました。
しかし、BRT化するのであれば、現在の線路や駅舎、駅周辺の土地をどうするのかという問題も避けて通れません。
特に厚保駅や於福駅では、駅舎がすでに地域の活動拠点として使われています。
鉄道としての役割が変わったとしても、駅舎が地域の施設として残る可能性はあります。
今回のJR西日本による鉄道施設の地元への譲渡検討は、美祢線のBRT化を「鉄道からバスへの転換」というだけではなく、鉄道が残した施設や土地を誰が引き継ぎ、地域でどう活用するのかという問題として考えるきっかけにもなりそうです。
美祢線の今後を見るうえでは、BRTの運行計画だけでなく、現在の駅や線路敷がその後どうなるのかにも注目したいところです。


