広島市東部で進められているJR山陽本線・呉線の連続立体交差事業について、完成時期が当初の計画から約10年遅れ、2048年度となる見通しが明らかになりました。
建設資材や人件費の高騰に加え、用地取得や地下埋設物の移転の遅れなどが影響しているとされています。
鉄道を高架化することで踏切をなくし、道路交通の円滑化や地域の分断解消を目指す事業ですが、完成までには長い時間がかかることになりそうです。
こうした鉄道の立体交差化といえば、岡山県内でも計画されている事業があります。
今回は広島市東部の事業を紹介するとともに、倉敷駅周辺の鉄道高架化計画が現在どうなっているのか、改めて確認してみます。
JR線を高架化 広島市東部地区の連続立体交差 事業費8割増 完成は10年遅れの2048年度に
TBS NEWSNEWS DIG
広島市東部の山陽本線・呉線を高架化
広島市東部地区連続立体交差事業は、山陽本線・呉線の約5.1kmを対象に鉄道の高架化を進める事業です。
対象となるのは広島市南区・安芸区と府中町、海田町にまたがる地域で、向洋駅周辺と海田市駅周辺の2つの区間に分けて整備が進められています。
この事業では16か所の踏切をなくす計画となっており、踏切による道路渋滞の緩和や安全性の向上、鉄道によって分断されている市街地の一体化などが期待されています。
この事業に伴い、2023年4月16日・2025年12月7日には広島~海田市間の列車を運休して線路切り替え工事を行っています。
しかし、今回、事業費と工期が大きく見直されました。
報道によると、全体事業費は従来の約915億円から約1685億円へ増加し、完成時期も10年ほど遅れて2048年度となる見通しです。
大規模な鉄道高架化は、鉄道を運行しながら工事を進める必要があるほか、道路や周辺の土地、地下に埋設された設備などとの調整も欠かせません。
交通の利便性や安全性を高める効果が期待される一方、事業の完成までには多くの時間と費用が必要になることが改めて示された形です。
そういえば倉敷駅周辺の鉄道高架化はどうなった?
岡山県内でも、倉敷駅周辺でJR山陽本線・伯備線と水島臨海鉄道を高架化する「JR山陽本線等倉敷駅付近連続立体交差事業」が計画されています。
倉敷駅周辺では、鉄道による市街地の分断や踏切での交通渋滞などが課題となっています。
鉄道を連続して高架化することで複数の踏切をなくし、道路交通の円滑化を図るとともに、駅の南側と北側を行き来しやすいまちづくりにつなげることが計画の目的です。
現在JR山陽本線・伯備線と水島臨海鉄道の倉敷駅(倉敷市駅)は隣にありますが、乗り換えの際は駅を出て大回りする必要があり、高架化による改善が期待されます。
alt="JR倉敷駅のホームから見た水島臨海鉄道MRT306" class="wp-image-17304"/>倉敷市の公式ページでも、岡山県と一体となって事業の早期実現を目指す方針が示されています。
ところが、計画はまだ具体的な事業着手に至っていません。
倉敷駅周辺の高架化計画では、事業費を抑えるための複数の案が検討されてきました。倉敷市は、水島臨海鉄道も高架化する案を最も優れた案と評価し、岡山県に対してその案で決定するよう要望しています。
一方、ほかの案では水島臨海鉄道の路面電車化などが前提となるため、軌道や道路、停留所などの構造面の課題について検討が続いています。
2026年2月の倉敷市議会での答弁でも、県から案の決定に向けた具体的なスケジュールは示されていないと説明されています。
つまり、倉敷駅周辺の高架化は、完成時期が決まっていて工事を進めている段階ではなく、事業化に向けた計画の具体化が課題となっている状況です。
倉敷駅周辺のまちづくりは進んでいるものの……
倉敷駅周辺では、鉄道高架化だけでなく、土地区画整理事業などのまちづくりも進められています。
倉敷市議会では2026年2月、倉敷駅周辺第二土地区画整理事業について、事業費ベースで進捗率が7割を超え、2025年度末には宅地の整備率が約6割に達する見込みとの説明がありました。
一方で、鉄道高架化は、駅周辺の道路整備や南北市街地の一体化にも関わる事業です。
関連するまちづくりが進んでも、鉄道高架化の案が決まらなければ、一体的な整備を進めにくい面があります。
広島市東部の事業では、工事が進んでいる段階であっても、完成までの期間がさらに延びる見通しとなりました。
もちろん、広島と倉敷では事業の進捗状況も条件も異なるため、単純に比較することはできません。
ただ、倉敷駅周辺の計画も、事業費や整備内容などを整理し、関係機関との協議を進めていく必要があります。
伯備新幹線の構想にも関係する?
倉敷駅周辺の鉄道高架化を考えるうえでは、もう一つ気になることがあります。それが、岡山と山陰を結ぶ「伯備新幹線(中国横断新幹線)」の構想です。
伯備新幹線は、岡山から山陰方面を結ぶ新幹線として実現を目指す動きがあります。ただし、具体的なルートや駅の位置は決まっておらず、倉敷駅に新幹線が乗り入れるかどうかも現時点では分かりません。
線形によっては倉敷駅を経由せず、別の場所に駅が設けられる可能性も考えられます。
それでも、倉敷駅周辺の高架化は、将来の鉄道ネットワークや駅周辺の交通体系を考えるうえで無関係とは言い切れません。
仮に伯備新幹線が倉敷駅に乗り入れない場合でも、在来線との接続や駅へのアクセスをどう確保するかは、岡山県西部の交通を考えるうえで重要な課題になるでしょう。
もちろん、現在の高架化計画と伯備新幹線の構想が一体で進められているわけではありません。しかし、倉敷駅周辺のまちづくりは長期にわたる話です。目の前の踏切や渋滞の解消だけでなく、将来の鉄道ネットワークも視野に入れながら考える必要があるのではないでしょうか。
鉄道高架化は、いつ実現するのか
鉄道の高架化は、踏切の解消や交通渋滞の緩和だけでなく、鉄道で分断されていた地域をつなぐことにもつながります。
一方で、大規模な事業となるため、費用や工期、周辺の道路整備など、検討しなければならない課題も多くあります。
広島市東部では完成時期が2048年度となる見通しが示されましたが、倉敷駅周辺では、そもそも事業の具体的な案が決まっていません。
倉敷駅周辺のまちづくりが進むなかで、鉄道高架化についても今後どのような方針が示されるのか、引き続き注目したいところです。

