JR東海・JR西日本・JR九州「EXサービス」のサービス向上 ダイヤが乱れた際の臨時列車にも指定席を設定しEXサービスで販売へ

福山城と福山駅 JR九州

JR東海・JR西日本・JR九州は2026年9月25日、東海道・山陽・九州新幹線のネット予約・チケットレス乗車サービス「EXサービス」のサービス向上について発表しました。

今回の変更で特に注目したいのが、天災などによって新幹線のダイヤが大きく乱れた際、当日に急きょ運転する臨時列車についても指定席を設定し、EXサービスで発売できるようになることです。

これまでは、このような臨時列車について指定席を発売することができず、普通車全車自由席として運転していました。

2028年春からは、対象となる臨時列車について指定席を設定できるようになります。

ただし、この指定席はEXサービスのみで販売され、駅の窓口などでは購入できません。また、すべての臨時列車に指定席が設定されるわけではなく、対象区間などについては今後発表される予定です。

今回の発表を見ていて、もう一つ気になったことがあります。

それは、JR各社がクレジットカードを鉄道サービスに取り込む方法と、そこで得られる情報をどのように扱うかという問題です。

輸送障害時や夜間時間帯における「EXサービス」のサービス向上について

JR西日本ホームページ

JR九州はクレカ乗車を広げながらJQ CARDも展開

今回の「EXサービス」の話と合わせて、JR九州のクレジットカードへの取り組みも見ておきたいと思います。

JR九州では2026年4月から「クレカ乗車」を本格導入し、9月18日からは対象エリアをさらに拡大しました。現在は対象駅が92駅となり、JR九州はクレジットカードを改札にかざして乗車するサービスを積極的に広げています。

その一方で、JR九州には「JQ CARD」という自社グループのクレジットカードがあります。

JQ CARDはSUGOCAやJRキューポ、JR九州のネット予約などとも関係しており、カードを入り口としてJR九州のさまざまなサービスを利用できる仕組みになっています。また、「JQ CARDエクスプレス」ではEXサービスも利用できます。

つまりJR九州は、外部のクレジットカードをそのまま乗車手段として受け入れる一方、自社グループ側にもJQ CARDという利用者との接点を持っています。

この点は、今回のEXサービスの拡充を考えるうえでも興味深いところです。

クレカタッチは「改札を通るための決済手段」であるのに対して、EXサービスは新幹線の列車や座席を予約し、チケットレスで乗車するためのサービスです。

同じクレジットカードを使う場面があっても、役割は同じではありません。

JR九州がクレカ乗車を積極的に広げているからといって、EXサービスが必要なくなるわけではなく、両方のサービスを使い分けることができます。

今回のプレスリリースで、ダイヤが乱れた際に運転される臨時列車の指定席をEXサービス限定で販売するという取り組みが示されたのも、こうした「予約から乗車までを一つのサービスで扱う」EXサービスの特徴が表れているように感じます。

JR西日本はクレカタッチとは違う方向も

JR西日本についても、クレジットカードを鉄道サービスに活用していないわけではありません。

J-WESTカードでは、e5489やエクスプレス予約などのネット予約サービスを利用できるほか、ICOCAへのチャージなどにも利用できます。

また、WESTERポイントを鉄道利用や買い物などに利用できる仕組みもあります。

一方で、JR西日本が在来線の改札にクレジットカードをタッチして乗車する方式を、JR九州と同じように広く展開しているわけではありません。

ここで興味深いのが、以前「鉄道ブログ岡山から」で取り上げた北総鉄道の記事です。

北総鉄道が磁気乗車券を廃止し、QR乗車券と交通系ICカードへ移行するという話を取り上げた際、JR西日本の奥田英雄取締役へのインタビューにも触れました。

そこでクレジットカードのタッチ決済について、鉄道会社が利用データを手放すことのデメリットについて言及されています。

これは、今回のEXサービスを考えるうえでも興味深い話ではないでしょうか。

なお、EXサービスではJR西日本の「e5489」との連携も進められています。

新幹線と在来線特急の予約情報をまとめて確認できるようになるなど、予約サービスそのものも変わりつつあります。詳しくは以前の記事で紹介しています。

鉄道会社にとって「乗車データ」は重要

クレジットカードのタッチ決済は、利用者からすれば非常に便利です。

カードを改札機にタッチするだけで乗車できるため、専用のICカードを持っていなくても鉄道を利用できます。

一方で、鉄道会社から見ると、決済を外部のクレジットカード会社などの仕組みに任せることになります。

もちろん、クレカタッチでも乗車に関するデータは扱われます。

しかし、鉄道会社が自ら運営する会員サービスとは、データの持ち方や活用方法が異なります。

例えばEXサービスなら、利用者が会員登録をしたうえで、

  • どの区間を利用するのか
  • いつ利用するのか
  • どの列車を予約したのか
  • どの座席を選択したのか
  • どの商品を購入したのか

といった情報をサービスの中で扱うことになります。

JR各社の個人情報の取り扱いでも、販売状況の分析や商品・サービスの開発など、利用状況を分析することが明記されています。

つまり、EXサービスは単に「クレジットカードで新幹線料金を支払う仕組み」ではありません。

JRと利用者を継続的につなぐ会員サービスという側面があります。

「クレカタッチを導入するか」だけでは見えない問題

そう考えると、鉄道会社がクレカタッチを導入するかどうかを考えるとき、

「利用者にとって便利か」

だけではなく、

「鉄道会社にとって、そのサービスを自社のデジタル基盤として活用できるか」

という視点も重要になってきます。

例えば、JR九州は「JQ CARD」と「クレカタッチ」を組み合わせて展開しています。

一方、JR西日本ではICOCAやWESTER、J-WESTカードなど、自社のサービスを組み合わせた仕組みを持っています。

JR東海では、特に新幹線のネット予約・チケットレス乗車についてEXサービスが大きな役割を果たしています。

3社ともクレジットカードを活用していますが、その方法は同じではありません。

EXサービスは「予約サービス」からさらに広がっている

今回の発表をもう一度見ると、EXサービスの役割が少しずつ広がっていることも分かります。

今回、輸送障害時に急きょ設定される臨時列車について、指定席をEXサービス限定で販売できるようになります。

また、2027年秋からは夜間時間帯についても、シートマップを利用して座席を指定できるようになる予定です。

さらに2026年10月20日からは、JR西日本のネット予約サービス「e5489」とEXサービスの連携も始まります。

EXサービスとe5489の会員情報を連携させることで、ログインの簡略化や、両サービスの予約情報をアプリで確認できるようになります。

こうして見ると、EXサービスは単独の新幹線予約サービスから、JR各社のネット予約サービスをつなぐ窓口の一つへと役割を広げつつあるようにも見えます。

なぜ臨時列車の指定席を「EXサービス限定」にするのか

今回、私が特に気になったのがここです。

ダイヤが大きく乱れたときに急きょ運転する臨時列車について、指定席を設定できるようになること自体は、利用者にとって便利なサービス向上です。

自由席の場合、途中駅から乗車すると座れない可能性があります。

指定席を確保できれば、運転再開後の混雑時にも座席を確保したうえで移動できます。

しかし、その指定席を駅の窓口などではなく、EXサービスだけで販売するというところには、もう一つ意味があるように感じます。

既に存在するEXサービスの予約・決済システムを使えば、急きょ設定された臨時列車でも指定席を販売できます。

そして利用者にとっても、普段使っているEXサービスから臨時列車を予約できます。

JRにとっては、新たな販売システムを用意するのではなく、既存のデジタルサービスの利用範囲を広げることができます。

さらに、EXサービスを利用する機会そのものも増えることになります。

JR東海の今後の方向性はまだ見えにくい

ここでJR東海についても気になります。

JR東海は東海道新幹線のEXサービスを長年にわたって展開してきました。

現在も新幹線のネット予約・チケットレス乗車についてはEXサービスが中心です。

一方で、JR九州のように在来線のクレカタッチ乗車を大きく拡大していくのか、あるいはJR西日本のICOCAのように交通系ICを中心としたサービスとの関係をどうするのかについては、現時点ではまだはっきりした方向性は見えません。

むしろ現在のEXサービスでは、交通系ICカードを使ったチケットレス乗車への移行も進められています。

そのため、「JR東海も将来的にクレカタッチへ移行するのではないか」と予想するのは、まだ早いように思います。

現時点で明確なのは、EXサービスそのものをさらに拡大し、予約・決済・チケットレス乗車の利便性を高めていることです。

「クレジットカードで乗れる」だけではない

今回の発表を見て、最初は「ダイヤが乱れたときの臨時列車にも指定席が設定されるようになる」というニュースとして受け取りました。

もちろん、それだけでも利用者にとって大きなサービス向上です。

しかし、JR九州のクレカタッチ乗車の拡大や、JR西日本がクレジットカードのタッチ決済について「データを手放すこと」に言及していることなどと合わせて考えると、もう少し大きな流れが見えてきます。

鉄道会社にとって、クレジットカードは単なる決済手段ではありません。

どのようなサービスを自社で持ち、利用者との接点をどこに置き、そこで得られる情報をサービス改善や商品開発などにどう活用するのか。

これからの鉄道のデジタル化では、こうした部分も重要になってくるのでしょう。

JR九州のようにクレカタッチを積極的に広げる会社もあれば、交通系ICや自社の会員サービスを中心にする会社もあります。

そしてJR東海・JR西日本・JR九州の3社は、共通の「EXサービス」をさらに強化しています。

今回、輸送障害時の臨時列車までEXサービス限定で指定席を販売するようになることは、単なる予約機能の追加ではなく、EXサービスをJRと利用者をつなぐ重要なデジタル基盤としてさらに活用していく動きの一つなのかもしれません。

今後、JR各社がクレカタッチ、交通系IC、QR乗車券、ネット予約サービスをどのように使い分けていくのかにも注目したいと思います。

タイトルとURLをコピーしました