芸備線を駅ごとの数字で見直す:利用実態と今後の交通の考え方

JR西日本備後落合駅の風景 JR西日本

ローカル線の存廃をめぐる議論では、「利用者が少ない」「沿線に人が住んでいない」といった言葉が先行しがちです。
しかし実際には、駅ごとに置かれている環境や役割は大きく異なります。

今回は、2023年5月に国土交通省から公表された「駅から2km圏内の人口(2020年国勢調査)」と、2019年度の芸備線各駅の1日平均乗車人員をもとに、新見駅から備後庄原駅までの各駅について整理してみました。
駅勢圏人口と利用者数をあわせて見ることで、芸備線の実像が少し立体的に見えてきます。

「芸備線の現状を数字で見る」

芸備線の各駅について、「実際にどれくらい人が住んでいて、どれくらい使われているのか」を数字で並べてみると、駅ごとの性格や役割の違いが見えてきます。

まず、2023年5月10日にJR西日本から出された二つのデータ(2020年国勢調査による駅から2㎞以内の人口・2019年度の芸備線の1日平均乗車人員)をもとに駅の需要度を1~3の三ランクに分類します。(1:小・2:中・3:大)

表:芸備線 各駅の駅勢圏人口(2km圏)と1日平均乗車人員(2019年)

駅名駅から2km圏内の人口1日平均乗車人員 (2019年度)需要度駅名駅から2km圏内の人口1日平均乗車人員 (2019年度)需要度
新見7333内名11031
布原11小奴可23011
備中神代71道後山11001
坂根11021備後落合110141
市岡11081比婆山19021
矢神350132備後西城1200363
野地560262平子25041
東城280011335011
備後八幡25001備後庄原78001273

駅勢圏人口と利用者数の全体傾向

表を見ると、駅から2km圏内の人口が多い駅ほど、1日平均の利用者数も多い傾向があることが分かります。
東城駅や備後庄原駅・備後西条駅は、人口・利用者数ともに突出しており、地域の中心駅として機能していることが数字にも表れています。

一方で、駅勢圏人口が一定数あるにもかかわらず、利用者数が伸び悩んでいる駅も見られます。
また、人口が少ないながらも、周辺地域の移動手段として一定の役割を果たしている駅も存在します。

こうした違いは、単純に「乗っている・乗っていない」だけでは説明できない部分です。


中心駅としての役割を担う駅

東条駅と備後庄原駅は、駅勢圏人口が多く、利用者数も他駅と比べて明確に多い駅です。
行政機関や商業施設、医療機関が集積している市街地に位置し、通勤・通学・通院・買い物といった日常利用が集中していることがうかがえます。

芸備線の中でも、こうした駅は単なる通過点ではなく、地域交通の「核」としての役割を担っていると言えるでしょう。


中間的な性格を持つ駅

矢神駅や野馳駅などは、駅勢圏人口が数百人規模ありながら、利用者数は比較的少なめです。備後落合駅は、木次線への乗り換えの利用者により乗車人員は大きくなっていますが駅周辺の利用者の数は多くないと思われます。
これらの駅は、沿線で暮らす人々の生活圏に位置しているものの、移動手段が自家用車に大きく依存している可能性が考えられます。

鉄道が「使えない」のではなく、「使わなくても生活できてしまう」地域であることが、数字に表れているとも言えそうです。


小規模駅が置かれている現実

布原駅や備中神代駅などは、駅勢圏人口・利用者数ともに非常に小さな数字となっています。
これらの駅では、鉄道が日常交通の主役ではなく、あくまで選択肢のひとつにとどまっているのが現状でしょう。

ただし、数字が小さいからといって、駅の存在意義がゼロになるわけではありません。
高齢者や学生など、限られた利用者にとっては、代替がきかない移動手段となっている場合もあります。


数字から見えてくる「一律ではない現実」

今回のデータから見えてくるのは、芸備線が「一様に利用者が少ない路線」ではないという点です。
駅ごとに、人口構成も利用目的も異なり、それぞれ違った役割を持っています。

こうした実態を無視して、路線全体を一括りに議論してしまうと、本来必要な対策が見えにくくなってしまいます。


代替交通を考える前に

鉄道の維持が難しい区間について、代替交通の議論が行われることは避けられません。
しかし、その前提として、どの駅にどれだけの需要があり、誰が利用しているのかを丁寧に把握することが重要です。

芸備線の各駅を数字で見ていくと、「残すか、やめるか」という単純な二択では語れない現実が浮かび上がります。
駅ごとの性格に応じた交通のあり方を考えることが、これからますます求められていくのではないでしょうか。

代替交通の考え方

芸備線における代替交通の考え方(試案)

芸備線の一部区間について、仮に鉄道による輸送が困難になった場合でも、すべてを同じ手段で置き換える必要はありません。
駅ごとの需要度や道路環境を踏まえ、複数の交通手段を組み合わせることで、現実的な代替が可能ではないかと考えます。

① 中国横断自動車道沿線:高速バスによる代替

中国横断自動車道が並行する区間については、備北交通が運行する高速バスを活用する方法が考えられます。
特に、備後庄原駅や東城駅周辺は高速道路へのアクセスが比較的良く、都市間移動の需要にも対応しやすい立地です。

この区間では、速達性と輸送効率を重視し、鉄道の役割を高速バスが補完する形が現実的と言えるでしょう。

② 需要度が比較的高い区間:自治体運営の路線バス

駅勢圏人口や利用実績から見て、一定の需要が見込める区間については、市が運営する路線バスでの対応が考えられます。
具体的には、新見駅~東城駅、備後西城駅~備後庄原駅といった区間です。

通勤・通学・通院など、日常利用が見込まれる区間では、定時定路線のバスを維持することで、鉄道に近い利便性を確保することが可能です。

③ 需要が限定的な区間:オンデマンド型輸送

それ以外の区間については、芸備線に沿って運行する10人乗り程度の車両を用いた、オンデマンド型輸送が適していると考えます。
特に、東城駅~備後西条駅間のように利用が限定的な区間では、大型車両による定期運行よりも、予約制の柔軟な輸送の方が効率的です。

少人数でも確実に移動手段を確保できる点で、高齢者や学生の生活交通として一定の役割を果たすことが期待されます。

乗り換えを前提としたダイヤ設定

重要なのは、これら三つの交通手段を「別々に存在させない」ことです。
東城駅および備後庄原駅を結節点とし、高速バス・路線バス・オンデマンド輸送が相互に乗り換え可能なダイヤを設定することで、路線全体としての連続性を保つことができます。

単に鉄道を別の交通手段に置き換えるのではなく、「移動の流れ」を維持することが、代替交通を考えるうえで欠かせない視点と言えるでしょう。

これについては、一鉄道ファンが考えたあくまで一例です。

まとめ

芸備線の各駅を数字で見ていくと、「利用者が少ない路線」という一言では片づけられない実態が見えてきます。
駅ごとに駅勢圏人口や利用のされ方が異なり、それぞれが違った役割を担っています。

仮に鉄道による維持が難しくなる区間があったとしても、需要や地域条件に応じた代替交通を組み合わせることで、移動の連続性を保つことは不可能ではありません。
重要なのは、路線全体を一律に扱うのではなく、駅ごとの性格を丁寧に読み取ったうえで交通の形を考えることではないでしょうか。

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