2026年9月21日の台風25号によって大きな被害を受けた小湊鐵道(小湊鉄道)。全線の復旧には半年から1年以上かかる見通しとなる中、地元の市原市長が、鉄道の存続に向けて復旧を支援する意向を示しました。
今回は、千葉県市原市の対応と、小湊鐵道の復旧をめぐる課題について整理します。
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市原市長が小湊鐵道の復旧支援に意欲
千葉日報によると、市原市長は台風25号で被害を受けた小湊鐵道について、存続に向けた復旧支援の意向を示しました。
小湊鐵道は千葉県市原市の五井駅から上総中野駅までを結ぶ鉄道です。沿線住民の通勤・通学などの日常利用に加え、養老渓谷への観光アクセスを担う路線でもあります。
今回の台風25号では、上総牛久駅から上総中野駅までの区間で土砂流入や路盤・盛土の流出、斜面の崩落などが発生しました。
小湊鐵道が10月8日に発表した見通しでは、全線の運転再開まで半年から1年以上かかるとされています。
単に線路を修復すればよいという規模ではなく、復旧費用をどう確保するかも大きな課題になっています。
復旧費用は少なくとも5億円程度の見込み
10月22日の報道では、小湊鐵道の全線復旧に必要な費用は少なくとも5億円程度とされています。
被災した区間は山間部も多く、土砂の撤去や線路の基礎部分の修復など、工事が難しい場所もあります。また、鉄道沿線の道路にも被害が発生しており、鉄道だけを見れば解決するという状況ではありません。
小湊鐵道では復旧工事を進め、工事が完了した区間から順次運転を再開することを目指しています。
しかし、これだけの費用を鉄道会社だけで負担するのは簡単ではありません。市原市長が支援の意向を示したことは、今後の復旧を考えるうえで重要な動きといえそうです。
国や千葉県を含めた支援の枠組みも重要に
今回の復旧を考えるうえでは、市原市だけでなく、千葉県や国による支援も重要になります。
千葉県知事は10月15日の定例記者会見で、小湊鐵道の被害状況を確認したうえで、区間ごとの復旧期間や費用を試算し、市原市などと役割分担を考えていく考えを示しています。
また、国土交通省には、災害で被災した鉄道の復旧費用を支援する制度があります。
この制度では、一定の条件を満たす路線について、復旧費用の一部を国が補助する仕組みが設けられています。2018年の制度改正では、黒字の鉄道事業者であっても、赤字路線が被災した場合に補助対象となる仕組みが追加されました。
ただし、制度には対象路線や災害規模などの要件があります。小湊鐵道への適用や具体的な支援額が決まったわけではないため、今後の協議を見守る必要があります。
小湊鉄道は、赤字の事業者で小湊線も赤字路線ですので対象となる可能性は高いですが、負担割合がどうなるかは国土交通省の判断となりそうです。
鉄道を残すためには、復旧後の運営も考えたい
今回の問題は、台風で壊れた鉄道施設を元に戻せば終わり、というものではありません。
小湊鐵道は、これまでも台風や大雨による被害を受けてきました。復旧しても、今後の災害で再び大きな費用が必要になる可能性があります。
そのため、今回の復旧支援では、被災した施設を直すための費用だけでなく、復旧後に鉄道をどのように維持していくかも重要になるのではないでしょうか。
自治体が一定の費用を負担する場合には、どの区間をどのような形で維持するのか、鉄道会社と自治体がどのような役割を担うのかといった点も、あわせて整理する必要があります。
もちろん、支援の具体的な内容は今後の協議によって決まるものであり、現時点で特定の方式が採用されると決まったわけではありません。
それでも、市原市長が存続に向けた支援の意向を示したことは、復旧に向けた前向きな動きといえそうです。
市原市だけでは解決できない? 大多喜町との負担調整も課題に
今回の復旧支援を考えるうえで、気になるのが自治体間の負担の問題です。
小湊鐵道は市原市内を走る区間が中心ですが、終点の上総中野駅は大多喜町にあります。上総牛久駅から上総中野駅までの区間を維持するためには、市原市だけでなく、大多喜町も含めた支援のあり方が論点になる可能性があります。
また、被災した区間は利用者の少ない区間となっているため税金を使った支援を行うことに対する市原市・大多喜町の住民の支持が得られない可能性もありそうです。
小湊鐵道の支援をめぐっては、2023年から2025年にかけても、市原市が中心となって路線維持のための支援策を検討しました。しかし、上下分離方式を含む支援案については、鉄道会社が受け入れず、協議会の設置に向けた議論はいったん白紙となっています。
今回の災害復旧では、従来の設備更新とは別に、多額の復旧費用が必要となります。市原市が支援に前向きな姿勢を示したことは重要ですが、県や国を含めて、どのような形で費用を分担するのかが今後の焦点になりそうです。
仮に自治体間で負担の調整が難航した場合、被災区間を一体として復旧・維持することができるのか、という問題も出てくるかもしれません。
もちろん、現時点で部分廃線が決まっているわけではありません。ただ、鉄道の存続を目指すのであれば、復旧費用だけでなく、その後の維持管理費も含めて、関係する自治体がどこまで負担できるのかを話し合う必要があるのではないでしょうか。
上総中野駅で接続するいすみ鉄道も課題を抱える
alt="上総中野駅 いすみ鉄道(いすみ300型)と小湊鐡道(キハ200形)" class="wp-image-18731"/>もう一つ気になるのが、上総中野駅で接続するいすみ鉄道との関係です。
小湊鐵道の上総中野駅は大多喜町にあり、いすみ鉄道に乗り換えることで房総半島を横断できます。しかし、現在はいすみ鉄道も脱線事故の影響で全線運休が続いており、大原駅~大多喜駅間は2027年秋ごろの運転再開を目指している一方、大多喜駅~上総中野駅間については、復旧費用などを踏まえた検討が続いています。
その上、2026年9月の台風25号により大きな被害を受けています。
いすみ鉄道は、大多喜駅~上総中野駅間の復旧費用を最大10億円程度、継続的な安全運行に必要な費用を10年間で約50億円と試算しています。
こうした状況を考えると、小湊鐵道だけが上総中野駅まで復旧しても、接続するいすみ鉄道側の運行が再開されなければ、房総半島を横断する鉄道としての機能は十分に発揮できません。
また、養老渓谷駅から上総中野駅までの区間は、沿線の人口や日常利用に加え、観光需要も含めて維持する意義を検討する必要があります。多額の復旧費用を投じるのであれば、復旧後にどれだけの利用が見込めるのかという視点も欠かせません。
もちろん、現時点で小湊鐵道の部分廃線が決まっているわけではありません。しかし、市原市が復旧支援に前向きな姿勢を示したとしても、それだけで上総中野駅までの存続が確実になるわけではありません。
市原市だけでなく、大多喜町、いすみ市、千葉県、国、そして小湊鐵道といすみ鉄道が、それぞれの路線の維持にどこまで関与するのか。今回の災害復旧は、房総半島の鉄道ネットワークを今後どう維持していくのかという問題にもつながりそうです。
もしも上下分離していたら・・・
今回の災害を受けて考えさせられるのが、鉄道施設の保有と維持管理を誰が担うのかという問題です。
以前、市原市では小湊鐵道の存続に向けて上下分離方式を含む支援策が検討されましたが、実現には至りませんでした。
もし上下分離方式に移行していれば、線路や路盤などの復旧についても、施設を保有する自治体が主体となって対応する枠組みができていた可能性があります。一方で、その場合には自治体が復旧費用や将来の維持管理費をどこまで負担するのかという問題も生じます。
結果論ではありますが、今回の災害は、鉄道の存続を平時からどのような仕組みで支えるのかという課題を改めて浮き彫りにしたのではないでしょうか。
逆に、名古屋鉄道広見線・JR北海道黄線区で上下分離の受け入れが問題となったことも分かる事例だともいえるでしょう。
小湊鐵道の復旧と存続に向けて
小湊鐵道は、地域住民の移動手段であると同時に、房総半島の観光を支える鉄道でもあります。上総中野駅ではいすみ鉄道と接続しており、房総半島を横断する鉄道の一端を担っています。
現在は上総牛久駅から上総中野駅までの区間で運休が続き、代行輸送にも道路事情などによる制約があります。
復旧には多額の費用と時間が必要になる見通しですが、鉄道を地域に残すのであれば、今回の災害からの復旧だけでなく、その先の維持管理まで含めた支援の枠組みが求められます。
市原市や千葉県、国、そして小湊鐵道がどのように役割を分担していくのか。今後の協議と復旧の進展に注目したいと思います。





