2022年8月の豪雨で被災し、現在も運休が続いているJR米坂線の今泉~坂町間について、新潟県が「バスへの転換」を軸に最終調整を進めていることが分かりました。
米坂線は山形県の米沢駅と新潟県の坂町駅を結ぶ路線です。2022年8月の豪雨によって今泉~坂町間が大きな被害を受け、4年以上が経過した現在も鉄道による運転再開には至っていません。
今回、新潟県がバス転換を軸に調整していることが明らかになった一方、9月2日には山形県の吉村知事も記者会見で米坂線について発言。正式な結論はまだ出ていませんが、長期化していた復旧協議が大きな局面を迎えています。
【JR米坂線】新潟県“バス転換”を軸に最終調整「柔軟な運行可能に」 22年の豪雨から一部区間で運休続く
NIIGATA NEWS
2022年8月の豪雨で今泉~坂町間が被災
米坂線は、米沢駅から今泉駅を経由して坂町駅までを結ぶJR東日本の路線です。
米沢駅では山形新幹線などと接続し、今泉駅では山形鉄道フラワー長井線、坂町駅では羽越本線に接続しています。
しかし、2022年8月の豪雨によって線路や橋りょうなどが被災。特に今泉~坂町間では大きな被害が発生し、現在まで運休が続いています。
この間、同区間では代行バスによる輸送が続けられてきました。
被災から4年以上が経過する中、鉄道として復旧するのか、それとも別の交通手段へ転換するのかが大きな課題となっています。
JR東日本は4つの選択肢を提示
米坂線の復旧をめぐっては、JR東日本や沿線自治体などによる検討が続けられてきました。
JR東日本からは、
- JRが鉄道を運営する「JR単独での運営」
- 自治体が鉄道施設を保有する「上下分離方式」
- 自治体などが出資する「第三セクター方式」
- 「バスへの転換」
という4つの案が示されています。
米坂線の今泉~坂町間については、豪雨被災以前から利用者の少なさが課題となっていました。コロナ前の2019年度の輸送密度・営業係数は次の通りです。
| 米沢~今泉 | 今泉~小国 | 小国~坂町 | |
| 輸送密度 | 776 | 298 | 169 |
| 営業係数 | 1,241 | 2,659 | 2,659 |
輸送密度は、輸送密度とは、1日1kmあたり平均で何人がその区間を利用したかを示す指標です。例えば輸送密度169人とは、単純に「1日に169人が乗った」という意味ではなく、その区間の利用状況を1kmあたりの平均値に換算したものです。
営業係数は100円の収入を得るために必要な費用を示す指標で、100を越えた場合その路線は赤字であることになります。
つまり、今回のバス転換案は2022年の豪雨による被災だけを理由に浮上したものではなく、被災前から続いていた利用者減少や厳しい経営状況も背景にあるといえます。
JRの試算では、今泉~坂町間を鉄道として復旧するためには約86億円の費用が必要とされています。
バス転換なら地元負担を大幅に抑えられる?
新潟県は2026年4月の復旧検討会議で、鉄道を維持する場合とバスへ転換する場合の運営費について独自の試算を示しています。
国の補助金を差し引いた場合、自治体が負担する年間の運営費は、上下分離方式では約3億8000万円~5億1000万円、第三セクター方式では約3億3000万円~5億9000万円とされています。
これに対してバスへ転換した場合は、ダイヤを充実させたケースでも年間約5500万円~7000万円とされ、鉄道を維持する場合に比べて負担を大幅に抑えられるという試算です。
こうした費用面の違いが、今回のバス転換案を検討する大きな理由の一つになっているとみられます。
バスなら「柔軟な運行」が可能に
新潟県がバス転換を検討している理由は、単純に費用が安くなるからだけではありません。
バスに転換した場合、現在の鉄道駅に相当する場所だけでなく、病院や商業施設、公共施設など、利用者が実際に向かう場所の近くに停留所を設けることができます。
また、道の駅などを交通拠点として乗り合いタクシーやコミュニティバスと接続したり、村上市方面への直通便を設定したりするなど、地域の実情に合わせた交通体系を構築できる可能性があります。
新潟県の花角知事も9月1日の会見で、バスなら病院や商業施設、公的機関などへ路線を延ばしたり、新たな停留所を設置したりすることがやりやすいと説明しています。
そのうえで、花角知事は「もう、さすがに出口に近いところではないか」と述べており、方向性の決定が近づいていることを示しました。
山形県は「現時点で話は聞いていない」
新潟県がバス転換を軸に調整していることについて、9月2日には山形県の吉村知事も会見で発言しました。
新潟は“バスへの転換”軸で調整に対し…吉村知事「早く方向性を示したい」 運休続くJR米坂線 山形|ニュース|さくらんぼテレビ
さくらんぼテレビ
吉村知事は、バス転換を軸とした新潟県の調整について「現時点で話は聞いていない」としています。
ただし、山形県がバス転換そのものに反対しているわけではありません。
新潟県の花角知事がバスの利点として「非常に柔軟に運用できる」ことを挙げていることについて、吉村知事は「そこはそうだろうな」という認識を示しています。
さらに、両県が「足並みをそろえていくというのは1つの方向性」との考えも示しました。
そして、被災から4年以上が経過していることを踏まえ、沿線自治体の意見を集約しながら検討を進め、早く方向性を見いだしたいとしています。
今泉~坂町間だけでなく米坂線全体の今後にも注目
alt="JR米坂線・山形鉄道フラワー長井線 今泉駅" class="wp-image-14963"/>仮に今泉~坂町間がバスへ転換されることになれば、米坂線は鉄道として米沢~今泉間だけが残ることになります。
今泉駅は山形鉄道フラワー長井線との接続駅でもあるため、米坂線の一部区間をバスへ転換することは、米坂線全体の役割にも影響する可能性があります。
一方、バス転換によって病院や商業施設など鉄道駅以外へのアクセスを強化できれば、現在の代行バスよりも地域住民にとって利用しやすい交通体系を構築できる可能性もあります。
「鉄道を復旧させるか、バスにするか」だけではなく、地域の移動手段をどのように維持・改善するのかという視点が重要になりそうです。
まとめ 米坂線は大きな転換点へ
2022年8月の豪雨による被災から4年以上。
長期間にわたって運休が続いてきた米坂線の今泉~坂町間は、今回の新潟県の動きによって大きな転換点を迎えています。
現時点では、米坂線の今泉~坂町間を廃止してバスへ転換することが正式決定したわけではありません。
しかし、新潟県がバス転換を軸に最終調整を進め、山形県もバスの柔軟な運行というメリットについて一定の理解を示しています。
今後は、山形・新潟両県や沿線自治体、JR東日本などがどのように協議を進めるのかが注目されます。
米坂線が鉄道として復旧するのか、それともバスを中心とした新しい交通体系へ移行するのか。
被災から4年以上が経過した米坂線の今後について、近く大きな方向性が示されることになりそうです。
で使用される標準軌の719系5000番代-120x68.jpg)