岡山―宇野から10年、213系「ラ・マル・ド・ボァ」は今も走る 

213系ラ・マル・ド・ボァ JR西日本

今や岡山発の観光列車としてすっかり定着した La Malle de Bois
その原点は、**2016年4月9日に運行を開始した「ラ・マル せとうち」**でした。

最初の舞台は、岡山―宇野間
宇野港から瀬戸内海の島々へと向かう航路と接続し、「鉄道と船をつなぐ旅」を演出する列車として、ラ・マルの物語は静かに始まりました。

La Malle de Bois 10 周年記念企画のお知らせ ~10年のご愛顧に感謝を込めて~

JR西日本ホームページ

観光列車らしからぬ、落ち着いた船出

岡山―宇野という距離は決して長くありません。
それでもラ・マル せとうちは、その短い移動時間を「ただの移動」で終わらせない工夫に満ちていました。

木目を基調とした車内、全車指定席のゆったりとした空間。
港町・宇野へ近づくにつれて、車窓の向こうに海の気配が漂ってくる――
そんな旅の助走区間として、実に完成度の高い列車だったように思います。

派手さよりも“質感”を重視したその佇まいは、
これまでの観光列車像とは一線を画すものでした。


岡山から広がっていった「ラ・マル」の世界

岡山―宇野間での運行を皮切りに、ラ・マルは少しずつ活躍の場を広げていきます。

  • 瀬戸内の景色を楽しむ「ラ・マル しまなみ」(岡山駅~尾道駅・三原駅:運行開始 2016年10月1日~)
  • 四国への玄関口へ向かう「ラ・マル ことひら」(岡山駅~琴平駅:運行開始 2017年4月2日~)
  • 刀剣文化のまちを訪ねる「ラ・マル 備前長船」(岡山駅~日生駅:運行開始 2021年7月30日~)
  • 「森の芸術祭 晴れの国・岡山」へのアクセスとして「ラ・マル やまなみ」(岡山駅~新見駅:運行開始 2024年11月2日~)

こうして「ラ・マル せとうち」は、やがて**総称としての「La Malle de Bois」**へと成長。
岡山を起点に、地域の魅力を“旅の箱”に詰めて運ぶ存在となっていきました。


主役は213系――生き残った理由

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213系 ラ・マル やまなみ(伯備線)

この列車を語るうえで欠かせないのが、車両の存在です。
使用されているのは 213系

国鉄末期からJR初期にかけて登場した形式で、
かつては快速列車などでも活躍しましたが、今では全国的に数を減らしています。

その213系が、観光列車として10年も走り続けてきた――
これは決して偶然ではありません。

軽快な走り、適度な車体サイズ、そしてローカル線との相性。
岡山―宇野という区間、そして“港へ向かう旅”というコンセプトに、213系は不思議なほどよく馴染んでいました。


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10周年、岡山駅で迎える節目の日

そんなラ・マルが、運行開始から10周年を迎えます。
これを記念して、2026年5月16日(土)岡山駅の5番ホーム9時50分から記念式典が開催されることになりました。

当日は、原点でもある「ラ・マル せとうち」号が記念列車として運行。
岡山駅のホームで、出発を祝うセレモニーが行われます。

10年前と同じように、
そして10年分の思い出を背負って、ラ・マルが動き出す――
ファンにとっては、見逃せない瞬間になりそうです。


10周年は通過点か、それとも…

記念企画は春から秋にかけて長期間実施され、
限定グッズの販売や車内サービスのリニューアル、アテンダント制服の復刻なども予定されています。

一方で、心のどこかで思ってしまうのも正直なところです。
**「213系としてのラ・マルは、いつまで走れるのだろうか」**と。

だからこそ今回の10周年は、
単なるお祝いではなく、この列車の存在価値をあらためて噛みしめる節目なのかもしれません。


ひとこと

岡山―宇野という短い区間から始まった一編成の観光列車。
それが10年後、岡山を代表する存在として走り続けている――
ラ・マルの歩みは、決して派手ではありませんが、とても誠実でした。

5月16日、岡山駅5番ホーム。
もし時間が合えば、その出発を見届けてみてはいかがでしょうか。

きっとそこには、
岡山の鉄道が紡いできた10年分の物語が、静かに流れているはずです。

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