群馬県の北西部、自然豊かな吾妻地域を走る JR吾妻線・長野原草津口〜大前間。
かつては観光客や地元住民で賑わったこのローカル線ですが、近年は人口減少やクルマ中心の生活によって利用者が減少。
とくに 学生の通学が生命線 とされるこの区間では、将来の存続をにらんださまざまな議論が重ねられてきました。
そんな中、2026年春、地域の自治体が一歩を踏み出しました――
鉄道に接続する「下校送迎バス」の実証実験 です。
【お知らせ】送迎バスを使って下校してみませんか?
嬬恋村ホームページ
~吾妻線下り列車から接続する下校送迎バスの実証実験の参加者募集について~
「下校送迎バス」実証実験とは?
alt="吾妻線の特急列車の終着駅「長野原草津口駅」" class="wp-image-8245"/>PDF資料でも公表されている通り、2026年5月25日〜7月21日にかけて、嬬恋村と長野原町が主体となり、JR吾妻線を利用する学生を対象に 送迎バスの無料運行実験 が行われています。この実験では、夕方の時間に吾妻線と接続したバスを長野原草津駅から5本運転します。
これは単なるバス運行ではなく、 鉄道の到着時刻に合わせたシームレスな移動づくり を目指したものです。
実証実験のポイント
- 対象者: 吾妻線の下り列車を利用する通学生や地域住民
- 運行主体: 嬬恋村・長野原町・群馬県・JR東日本
- 運行: JRバス関東による大型バス
- 運行期間: 平日中心の試験運行(長野原草津駅から嬬恋村方面へ夕方に5本運行)
- 参加条件: 事前申し込み・アンケート回答
この実証実験は地域の高校生の保護者から要望が多かった「駅から自宅までの送迎負担」を軽減する目的でスタートしましたが、その背景には もっと深い地域交通の課題 が横たわっています。
地域の現実:鉄道だけで足りない交通機能
長野原草津口〜大前区間の吾妻線は、地域住民にとって貴重な「足」である一方で、利用者数の減少が進んでいます。
具体的には 、2024年度の輸送密度が渋川駅~長野原草津駅間で2,584であるのに対し、長野原草津駅~大前駅間では278と厳しい数値となっています。特に利用者の少ない万座・鹿沢口駅~大前間については、列車の本数も下り4本・上り5本と少なくなっています。
また、沿線に通う高校生の利用割合が高く、実際に学校が終わった時間帯には保護者の送迎ニーズが強くなってしまい、
「鉄道ダイヤでは通学に使いづらい」
という声も聞かれていました。
この実証実験は、そうした 足元の生活課題を一つひとつ丁寧に拾い上げ、交通のあり方を再検討すること を目的としています。
吾妻線末端区間の長野原草津駅~大前駅間については、輸送密度が1,000を切っており廃線の議論の対象となっています。115系が走っていた時代に大前駅を訪問しましたが、乗客は数人しかいませんでした。その乗客は、全員折り返しの列車で高崎方面に帰っていったのを覚えています。
鉄道とバスのハイブリッド──未来をつなぐ視点
今回のバス運行は、単なる代替交通のテストではありません。
地域内の移動を「鉄道+バス」で最適化できるかどうか、
そして 地域住民が主体的に交通の未来を描く第一歩 なのです。
期待される効果
🔹 鉄道利用者の利便性向上
→ 駅での待ち時間削減や安心感の向上
🔹 保護者の送迎負担軽減
→ 高校生の安全で効率的な移動
🔹 将来の交通体系を見据えたデータ収集
→ 鉄道・バス・地域交通施策の統合検討
今回の実証実験は、地域の「足」を守るための地道でありながら重要な取り組みです。
そして、これは 地域住民、自治体、鉄道会社がともに未来を考えるきっかけ でもあります。
アンケートとデータ収集が鍵になる
実証実験では参加者にアンケートの記入が求められており、これが非常に重要な役割を持ちます。
ただ走らせるだけではなく、学生や保護者の体験、満足度、改善点を集めることで、
「何が必要で、何が足りないのか?」
が明確になっていきます。
このデータこそが、地域の未来交通をつくる最も貴重な材料になるはずです。
まとめ:地域の未来をつなぐ挑戦
吾妻線の長野原草津口〜大前区間は、地域の暮らしと深く結びついています。
単なる鉄道設備やダイヤの問題ではなく、 人々の生活、教育、地域経済までもが絡む複合課題です。
今回の下校送迎バス実証実験は、
- 「鉄道を守る」
という単純な思いだけでなく、
- 「地域の交通をもっと安心で豊かにする」
という未来志向の挑戦だと私は感じました。


