秋田県内を走る第三セクター鉄道、秋田内陸縦貫鉄道と由利高原鉄道が、2027年春ごろに運賃を大幅に値上げする方向です。
秋田県が2026年9月8日に開催された県議会産業観光委員会に提出した資料では、両社の運賃改定案が示されています。
県の資料によると、定期外運賃は秋田内陸縦貫鉄道が平均約36%、由利高原鉄道が平均約38%の値上げとなる案です。
正式な運賃改定は今後、各社から国への認可申請などを経て決定される予定です。
令和8年第2回定例会(9月議会)観光文化スポーツ部産業観光委員会【所管関係資料】
秋田県ホームページ
2027年4月ごろに運賃改定を予定
今回の運賃改定案は、秋田県、沿線市、鉄道事業者が協議したものです。
秋田県の資料では、近年の物価高騰に伴う経費の増加や労務コストの上昇などによって、第三セクター鉄道を取り巻く経営環境が厳しくなっていることを説明。
地域住民の日常利用に配慮しながら一定の価格転嫁を行い、持続可能な運行を目指すとしています。
今後の予定は、
- 2026年9~10月ごろ 鉄道事業者から地域住民へ説明
- 2026年度中 鉄道事業者から国へ運賃改定の認可申請
- 2027年4月ごろ 運賃改定
となっています。
そのため、現時点では「改定案」であり、今後正式な認可申請などを経て運賃が決まることになります。
秋田内陸線は定期外運賃が平均約36%値上げ
alt="秋田内陸縦貫鉄道 角館駅" class="wp-image-16503"/>秋田内陸縦貫鉄道では、定期運賃について通学・通勤とも平均約12%の改定、定期外運賃については平均約36%の改定案となっています。
定期外運賃は100円単位で改定する方針です。
具体例を見ると、初乗り運賃は現在の170円から200円へ引き上げられる案です。
また、鷹巣駅から角館駅まで全線を利用した場合の運賃は、
1,700円 → 2,300円
となる案です。
全線を乗り通す場合は600円の値上げとなります。
観光客などにも利用されている全線タイプの「ワンデーパス」についても、
2,500円 → 3,000円
とする案が示されています。
秋田内陸線を観光で利用する場合には、通常運賃だけでなく、こうしたフリーきっぷの価格も気になるところです。
由利高原鉄道は初乗り180円から300円へ
alt="由利高原鉄道yr3003" class="wp-image-16504"/>由利高原鉄道についても、通学・通勤定期は平均約12%、定期外運賃は平均約38%の改定案となっています。
こちらも定期外運賃は100円単位での改定です。
初乗り運賃は、
180円 → 300円
となる案です。
また、羽後本荘駅から矢島駅までの全線運賃は、
610円 → 800円
となる案が示されています。
全線を利用する場合は190円の値上げとなります。
1日フリー切符についても、
1,100円 → 1,500円
とする案です。
秋田内陸線と由利高原鉄道では路線の距離や利用状況などが異なるため、値上げ率にも少し違いがあります。
定期券は定期外運賃より値上げ幅を抑える
今回の改定案で注目したいのが、普通のきっぷなどにあたる定期外運賃と定期券で値上げ幅が異なることです。
両社とも通学・通勤定期は平均約12%の改定案となっている一方、定期外運賃は秋田内陸線が約36%、由利高原鉄道が約38%です。
沿線住民の日常的な利用への影響を考慮して、定期運賃については値上げ幅を抑える考えがあるようです。
さらに、沿線住民向けの割引施策も検討されています。
秋田内陸線では、通学定期に対する沿線市からの補助を継続するほか、沿線住民の急行料金無料化や1か月単位のシルバーパス導入などが検討されています。
由利高原鉄道でも、通学定期に対する特別割引の継続や沿線住民割引の導入が検討されています。
単純に運賃を値上げするだけではなく、沿線住民の負担を抑える施策も組み合わせる方向です。
急行料金や貸切料金なども改定へ
今回の資料には、普通運賃だけでなくその他の料金についても改定案が示されています。
秋田内陸線では、急行料金が50kmまでの場合、
160円 → 200円
となる案です。
貸切料金についても片道5万円から7万円への値上げ案となっています。
由利高原鉄道では貸切料金が片道2万8,000円から3万3,000円、1日フリー切符が1,100円から1,500円となる案が示されています。
今後正式に運賃改定が決まれば、普段利用する運賃だけでなく、観光で利用する場合の料金にも影響することになります。
交通系ICには対応していないが電子チケットを販売
今回の運賃改定案では、今後の利便性向上策としてキャッシュレス決済の導入も検討されています。
秋田内陸縦貫鉄道と由利高原鉄道は、現在のところ交通系ICカードによる乗車には対応していません。
一方で、両社ともスマートフォンを使った電子チケットの販売はすでに行っています。
由利高原鉄道では、1日フリー乗車券「楽楽遊遊乗車券」のデジタル版を「TOHOKU MaaS」で販売しています。TOHOKU MaaSではスマートフォンから電子チケットを購入・決済できます。
また、秋田内陸縦貫鉄道では、ジョルダンの「モバイルチケット」で「秋田内陸ワンデーパス」を販売しています。
秋田内陸ワンデーパスは秋田内陸線全線が1日乗り放題となるきっぷで、スマートフォンに表示したチケットを使って乗車できます。
このように、両社では交通系ICカードによる乗車サービスはありませんが、観光客などを対象としたデジタルきっぷの販売はすでに始まっています。
今回の運賃改定に合わせて「キャッシュレス決済の導入」が検討されていることから、今後はこうした電子チケットの拡充なのか、それとも交通系ICカードなどによる乗車時のキャッシュレス化なのか、具体的にどのようなサービスが導入されるのかにも注目したいところです。
また、沿線住民向けの割引施策について検討するとしています。
100円単位の運賃改定にも注目
今回の運賃改定案を見ていて、もう一つ気になったのが、定期外運賃を「100円単位」で改定するとしていることです。
秋田内陸縦貫鉄道、由利高原鉄道とも、定期外運賃について100円単位での改定が示されています。
これは利用者にとっても分かりやすい運賃設定ですが、鉄道会社側にとっても現金を扱う際の負担を抑える効果があるのではないかと感じました。
私は以前、仕事で現金を収受する業務を経験したことがありますが、現金を扱っていると「おつり」の準備や管理は意外と大変です。
特に地方鉄道では、駅員が常駐していない駅や車内で運賃を収受するケースもあります。運賃が細かい金額になるほど、必要な硬貨の種類が増え、両替や現金管理の負担も大きくなります。
もちろん、今回の秋田県の資料には「現金収受の負担を考慮して100円単位にした」と明記されているわけではありません。
ただ、運賃を100円単位にすることで、利用者側も支払いが分かりやすくなり、鉄道会社側にとっても細かな硬貨を大量に扱う必要性を減らせる可能性があります。
今後、両社でキャッシュレス決済の導入も検討されていることを考えると、今回の運賃改定は「運賃をいくらにするか」だけでなく、現金を含めた運賃収受の仕組みをどうしていくのかという点からも見ることができそうです。
正式な運賃は今後決定
今回発表されたのは、あくまで秋田県、沿線市、鉄道事業者が協議している運賃改定案です。
2026年度中に各鉄道事業者が国へ認可申請を行い、2027年4月ごろの運賃改定を予定しています。
そのため、実際の運賃や各種きっぷの価格については、今後の正式発表で確認する必要があります。
秋田内陸線の全線運賃は1,700円から2,300円、由利高原鉄道の全線運賃は610円から800円という具体的な改定案が示されているため、利用者にとってはかなり大きな変化になりそうです。
一方で、通学・通勤定期については平均約12%の改定にとどめ、沿線住民向けの割引制度も検討されています。
今後、両社から正式な運賃改定の発表があれば、改めて詳しい内容を確認したいと思います。
※本記事は2026年9月23日時点の情報をもとにしています。掲載している運賃は秋田県が2026年9月8日に示した改定案であり、正式決定後に変更される可能性があります。

