十国峠の名物ケーブルカーが世代交代 鉄道からスロープカーへ生まれ変わります

箱根十国峠ケーブルカー 富士急行

静岡県と神奈川県の県境、箱根外輪山に位置する十国峠。
この地で長年親しまれてきた 十国峠ケーブルカー が、大きな転換点を迎えることになりました。

運営する 富士急行 は、現在のケーブルカーを鉄道としては廃止し、2027年夏から新たに「スロープカー」を運行すると発表しました。

2027 年夏、十国峠に「動く展望台」誕生 ―新モビリティ「スロープカー」で、360°の絶景へ

富士急行ホームページ

70年以上活躍した鋼索鉄道、ついに役目を終える

十国峠ケーブルカーは、山麓の「森の駅」と山頂の「パノラマテラス」を結ぶ鋼索鉄道として、1956年10月16日から約70年以上にわたり運行されてきました。歴史としては、ほとんど期間は伊豆箱根鉄道(開通当初は駿豆鉄道でしたが1957年6月1日に会社名を変更)によって営業されています。そして2021年12月1日十国峠株式会社に会社分割され現在に至っています。


短い距離ながらも急勾配を一気に登る姿は、まさに“山岳鉄道”そのもの。鉄道ファンにとっても、観光客にとっても、十国峠の象徴的な存在でした。

しかし近年は設備の老朽化が進み、部品確保や将来的な安全対策が課題に。
こうした背景から、鉄道(鋼索鉄道)としての運行は終了 し、新たな方式へ移行する決断が下されました。


後継は「スロープカー」――鉄道ではない新しい乗り物

2027年夏から導入されるのが「十国峠スロープカー(仮称)」。
レールとワイヤーで結ばれるケーブルカーとは異なり、自走式で斜面を走行する乗り物 です。

最大の特徴は、これまで以上に“景色を楽しむ”ことに特化した設計。
大きな窓を備えた車両は、まさに 動く展望台。移動そのものが観光体験になることを強く意識したつくりとなっています。

2両編成で、1両あたり約40人が乗車可能。
所要時間は従来と同程度の約4分とされ、利便性を維持しながら、体験価値を高める狙いが見えてきます。


「鉄道の廃線」だが、観光としては進化

今回の発表で印象的なのは、「廃線」という言葉が当てはまる一方で、十国峠そのものの魅力が失われるわけではない、という点です。

確かに、鋼索鉄道としてのケーブルカーは姿を消します。
鉄道ファンの視点で見れば、一つの歴史が終わる瞬間とも言えるでしょう。

しかし一方で、スロープカー導入によって

  • バリアフリー性の向上
  • 将来にわたる安全性の確保
  • 観光体験としての魅力強化

といった、新しい価値が加わります。

「移動のための鉄道」から「景色を楽しむための乗り物」へ。
十国峠は時代に合わせて、その役割を変えていくことになります。

ちなみに、十国峠とは頂上から十国五島(伊豆・相模・駿河・遠江・甲斐・安房・上総・下総・武蔵・信濃、大島・新島・神津島・三宅島・利島)が見えることに由来しています。


鉄道ファンとして、今の姿を記憶に残したい

ケーブルカーが現役である今だからこそ、あらためてその存在を見つめ直しておきたいところです。
短い路線ながら、確かに“鉄道”として存在してきた十国峠ケーブルカー。

2027年夏を境に、十国峠の山腹を行き交うのは、レールとワイヤーの音ではなく、静かに進むスロープカーになります。
その変化をどう受け止めるか――鉄道ファンにとっても、観光地の進化を考える上でも、注目の話題と言えそうです。

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