JR四国は、1日あたりの利用者数が1,000人未満となっている路線について、沿線自治体との協議を開始する方針を明らかにしました。
今回対象となると思われるのは、以下の3路線・3区間です。
- 牟岐線:阿南 ~ 阿波海南
- 予土線:全線
- 予讃線:向原 ~ 伊予大洲
いずれも四国の中でも人口減少や自動車依存が進む地域を走る区間で、以前から利用者数の少なさが課題とされてきました。なお、土讃線(須崎~窪川)についても輸送密度は2024年度で891となっており1,000未満ですが、土佐くろしお鉄道中村線・宿毛線への特急列車「あしずり」乗り入れの関係もあるため対象からは外れるとみています。
JR四国の2024年度の輸送実績
JR四国は、全路線で営業状態について毎年発表しています。2024年度については、次の記事で紹介しています。
「すぐに廃線」ではないが、現状維持も難しい
今回の協議開始について、JR四国は直ちに廃線やバス転換を決定するものではないとしています。
ただし、
- 利用者数が長期的に低迷している
- 鉄道施設の老朽化が進んでいる
- 将来の更新費用が経営の大きな負担になる
といった背景から、「これまで通りの形での維持は難しい」という問題意識があるのは間違いありません。
JR四国はこれまでも、
「地域と一緒に最適な公共交通の形を考えたい」
という姿勢を示しており、今回の協議もその流れに沿ったものと言えそうです。
なぜ「1日1,000人」が一つの目安なのか
1日あたり利用者数1,000人という数字は、
鉄道事業として採算性を確保するのが極めて難しくなる水準とされています。
特に地方路線では、
- 車両・線路・橋梁などの維持費
- 雪害・台風など自然災害への対応
- 運転士・保守要員の確保
といった固定費が重くのしかかります。
利用者が少ないままでは、運賃収入だけで路線を支えるのは困難なのが現実です。
今回協議の対象とみられる3路線を簡単に解説
牟岐線(阿南~阿波海南)
徳島県南部を走る牟岐線のうち、阿南以南は特に利用者が少ない区間とされています。
かつては通学利用も多かったものの、人口減少や自動車利用の定着により、日中は利用が極端に少ない状況が続いています。
沿線は海や山に囲まれた地域が多く、生活路線としての役割をどう維持するかが大きな課題です。
予土線
愛媛県と高知県を結ぶ、いわゆる「しまんとグリーンライン」。
観光列車の運行や話題づくりで注目されることもありますが、日常利用は非常に少ない路線です。
沿線人口が少なく、駅間も長いため、鉄道としての維持コストが重くなりやすいのが実情です。
予讃線(向原~伊予大洲)
四国を縦断する予讃線の中でも、海岸部を走るローカル色の強い区間。
松山都市圏から離れるにつれ利用者は減少し、特急の設定がなく普通列車の利用が伸び悩んでいます。
地域輸送をどう確保するか、鉄道とバスの役割分担も含めた検討が求められています。
夕日の美しい駅として有名な下灘駅のある区間です。
対象3区間はいずれも「JR四国を象徴するローカル線」
今回挙げた3区間は、単に利用者が少ないだけでなく、
- 観光列車の運行実績がある
- 地域の高校生・高齢者の移動手段
- 「四国らしい風景」を走る路線
といった側面も持っています。
そのため、仮に将来の形が見直されるとしても、
鉄道を残すのか、別の交通手段に置き換えるのか、あるいは併用するのか――
自治体側の判断も非常に難しいものになりそうです。
今後の焦点は「地域がどう関わるか」
今回の協議でポイントとなるのは、
- 自治体がどこまで財政的に関与できるのか
- 鉄道以外の交通(バス・デマンド交通)との役割分担
- 観光や地域振興と結びつけられるか
といった点です。
全国的に見ても、自治体負担を前提に鉄道を存続させる例は増えており、
JR四国の今回の動きは、地方鉄道の「次の段階」に入ったことを示しているとも言えそうです。
この動きについては、先日発表された国からのJR四国に対する5年間での1,025億円の支援の影響も大きいと思われます。
まとめ
四国のローカル線は、数字だけでは測れない価値を持っています。
一方で、厳しい現実があるのも事実です。
今回の協議が、「なくす・残す」の二択ではない、地域に合った答えにつながるのか、引き続き注目していきたいところです。




