名古屋鉄道(名鉄)は2026年8月3日、広見線の新可児駅~御嵩駅間について、2029年4月1日に廃止することを発表しました。
対象となるのは新可児駅から明智駅、顔戸駅、御嵩口駅を経由して御嵩駅までの7.4km。1920年に開業した歴史ある区間ですが、少子化や人口減少などによって利用者の減少が続き、今後の設備更新も課題となっていました。
今回の廃止決定によって、広見線の新可児~御嵩間は2029年3月31日まで運行されることになります。
つまり、2026年4月に高校へ入学した生徒にとっては、卒業する2029年3月まで利用できる鉄道路線ということになります。
名古屋鉄道ホームページ
廃止されるのは新可児~御嵩間7.4km
今回廃止の対象となるのは、名鉄広見線のうち新可児駅~御嵩駅間です。
区間内には次の5駅があります。
| 駅名 | 所在地 |
|---|---|
| 新可児駅 | 岐阜県可児市 |
| 明智駅 | 岐阜県可児市 |
| 顔戸駅 | 岐阜県可児郡御嵩町 |
| 御嵩口駅 | 岐阜県可児郡御嵩町 |
| 御嵩駅 | 岐阜県可児郡御嵩町 |
区間の営業キロは7.4kmです。
新可児駅ではJR太多線の可児駅とも接続しており、可児市方面から御嵩町方面へ向かう地域交通として利用されています。
一方、広見線は新可児駅を境に運行系統が分かれており、今回廃止される新可児~御嵩間は、現在は普通列車による運行が中心となっています。
2029年4月1日に廃止 2028年度末まで運行
名古屋鉄道は、広見線新可児~御嵩間について2029年4月1日に廃止する方針を決定しました。
今回の発表では、2026年8月3日に沿線市町と2028年度末までの運営に関する協定書を締結したことも明らかにされています。
今後、名鉄は8月4日に国土交通大臣へ廃止届出書を提出する予定です。
そのため、実際の鉄道としての最終運行日は2029年3月31日となります。
ここで注目したいのが、現在高校1年生の世代です。
2026年4月に高校へ入学した生徒は、通常なら2029年3月に卒業します。今回の運行継続期間は2028年度末までとなるため、今年高校に入学した生徒が高校を卒業するまで、広見線新可児~御嵩間の列車が走り続けることになります。
もちろん、実際にどのような列車を利用するかは生徒によって異なりますが、地域の高校生にとっては通学手段の一つでもあるだけに、この約2年半の期間は大きな意味を持ちます。
「廃止が決まったからすぐ列車がなくなる」というわけではなく、現在利用している人が次の交通手段へ移行するための準備期間が設けられる形です。
2007年から廃止問題が続いていた広見線
今回突然廃止が決まったわけではありません。
広見線新可児~御嵩間をめぐっては、2007年に名鉄が沿線市町に対して、これ以上の維持存続は困難との考えを伝えていました。
その後、沿線自治体と名鉄は協定を結び、利用促進や地域の活性化などに取り組んできました。
しかし、少子化や人口減少などを背景に利用者の減少が続き、鉄道設備の老朽化も問題となりました。
名鉄は2023年には、現在の方式のまま運行を継続することが困難との考えを示し、沿線自治体と持続可能な地域公共交通について協議を進めていました。
その中で検討されていたのが「みなし上下分離方式」です。
一般的に「上下分離」とは、鉄道事業における「上」の部分である「列車の運行・運営」と、「下」の部分となる「鉄道施設などのインフラの保有・管理」を分離する仕組みを指します。
日本の鉄道では、鉄道会社が列車の運行を担い、自治体などが線路や駅などの鉄道施設を保有・管理する形態がその一例です。
「みなし上下分離」と呼ばれるのは、鉄道施設などの管理を実際には鉄道会社が引き続き担いながら、その維持・管理に必要な費用を自治体などが負担することで、実質的に上下分離と同様の仕組みにする場合です。
沿線の御嵩町、可児市、八百津町などと協議が続けられていましたが、最終的にみなし上下分離方式による鉄道存続の協議を終了することになりました。
名鉄も、一民間事業者の自助努力だけで今後も路線を存続させていくことは極めて困難と判断。今回の廃止決定につながっています。
1920年開業 100年以上続いた鉄路
alt="名鉄広見線(御嵩駅)" class="wp-image-12581"/>広見線新可児~御嵩間は、長い歴史を持つ路線です。
区間の開業は1920年8月21日。2026年現在で開業から100年以上が経過しています。
御嵩方面と可児方面を結ぶ地域の鉄道として長年にわたって利用されてきました。
今回の廃止によって、100年以上にわたり地域を走り続けてきた鉄道路線の一部が姿を消すことになります。
ただし、廃止までにはまだ時間があります。
2026年8月の発表時点では、廃止まで約2年8カ月。今すぐ乗れなくなるわけではありません。
むしろ、これから廃止までの期間をどのように活用するかが重要になりそうです。
沿線では、現在の利用者が鉄道から別の交通手段へ移行できるよう、バスなどを含めた新たな地域公共交通について検討・準備が進められることになります。
「廃止まで乗る」だけではなく、地域交通の変化にも注目
鉄道路線の廃止が決まると、どうしても「最後に乗っておきたい」「廃止前に写真を撮っておきたい」といった鉄道ファン目線の話題が中心になりがちです。
もちろん、100年以上続いた路線だけに、最後の姿を記録しておくことには大きな意味があります。
しかし、広見線新可児~御嵩間については、それだけではありません。
現在も沿線で生活している人にとっては、廃止後の通学や通勤、通院、買い物などの移動手段をどう確保するかという問題があります。
特に自動車を運転できない高校生や高齢者などにとって、鉄道の代替となる交通手段がどのように設定されるのかは非常に重要です。
2029年4月1日の廃止という日付が決まったことで、今後は「廃止するか、存続するか」という議論から、「廃止後にどのような公共交通をつくるのか」という段階へ移っていくことになります。
まとめ 2026年入学の高校生にとって「卒業まで乗れる」広見線
今回の広見線廃止で印象的なのは、2026年に高校へ入学した生徒が卒業する2029年春まで運行されることです。
2026年夏の時点では、高校1年生ならまだ卒業まで時間があります。
これから高校生活を送り、2027年に2年生、2028年に3年生となり、2029年春に卒業。その直後に広見線新可児~御嵩間が廃止されることになります。
今回の決定は学生が主な利用客という点で似ている青森県の弘南鉄道大鰐線(2028年4月1日休止予定)と同じパターンとなります。
もちろん、すべての高校生が広見線を利用しているわけではありません。
それでも、鉄道がある状態で高校生活を始め、鉄道がなくなるタイミングで高校生活を終える世代が存在することになります。
地域の公共交通の変化を考えるうえでも、象徴的な時間軸ではないでしょうか。
今後は廃止日までの運行だけでなく、代替となるバスなどの交通体系がどのように整備されるのかにも注目したいところです。
また、廃止までの間には、記念列車やイベント、駅や沿線を訪れる企画などが実施される可能性もあります。
100年以上にわたって地域を走ってきた広見線新可児~御嵩間。
2029年4月1日の廃止まで、まだ時間は残されています。
まずは日常の利用者が安心して利用できる環境を維持しながら、地域交通の次の形を準備していくことが重要になりそうです。
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