「減便だけじゃない。JR西日本が示した芸備線・三次~広島の機能強化策」

芸備線「快速みよしライナー」 JR西日本

「ローカル線は減らされる一方」――
そんなイメージを、少しだけ変えてくれる資料が公開されました。

JR西日本が、芸備線(三次駅~広島駅間)について示したのは、朝夕ラッシュ時間帯に利用者数の多い下深川駅~広島駅間で“毎時4本相当”の利便性を目指すという、これまでにない踏み込んだ機能強化策です。

この内容は、広島市がまとめた検討資料の中で示されたもので、単なる理想論ではなく、ダイヤ・設備・サービスを組み合わせた現実的な改善案として整理されています。

沿線のまちづくりを踏まえた
芸備線(三次駅~広島駅間)の機能強化策について

広島市ホームページ

「毎時4本」という言葉の意味

まず注目したいのが、アンケート調査結果を踏まえたダイヤ案(A案)で示されている「ラッシュ時は毎時4本」

これは、すべてが普通列車で4本という単純な話ではなく、

  • 普通列車
  • 快速列車(みよしライナー)
  • 行先・運転区間を工夫した列車設定

こうしたものを組み合わせ、都市近郊路線に近い感覚の利便性を目指す、という考え方です。

現在の芸備線(三次駅~広島駅)は、時間帯によっては1時間に1本程度という区間もあり、通勤・通学で使うには正直ハードルが高い状況でした。
そこを「まずはラッシュ時間帯からでも使いやすくしよう」というのが、今回の機能強化策の出発点です。


ダイヤ面のポイント|通勤・通学を強く意識

資料から読み取れる、ダイヤ改善の主なポイントはこちら。

● 朝夕ラッシュ時間帯の増発

広島方面への通勤・通学利用を想定し、朝の下り(広島方面)・夕方の上り(三次方面)を中心に本数を厚くする構想が示されています。

● 快速「みよしライナー」の活用

三次~広島間を結ぶ快速列車を、単なる観光・中距離向けではなく、毎日の移動手段として使いやすい存在に位置づけている点も特徴です。広島~三次間の普通列車の所要時間は約1時間45分、「みよしライナー」が約1時間30分となっており快速列車を利用することで約15分短縮することが可能です。

● 終電の繰り下げ検討

夜遅い時間帯でも利用しやすいよう、終電時間の見直しも検討項目に含まれています。現在、広島駅から三次駅への最終列車は21時17分(土曜休日は21時16分)とかなり早くなっています。一方、広島から三次へのバスの最終便は22:40分となっています。
「仕事帰りに使えないから車」という流れを、少しでも変えたい意図が感じられます。


設備面もセットで考えるのが今回の特徴

今回の資料で印象的なのは、ダイヤだけでなく、設備面の課題にも正面から触れていることです。

芸備線は全線単線。
このため、

  • 行き違いができる駅が限られる
  • 少しの遅れが全体に波及しやすい
  • これ以上の増便が困難

という弱点を抱えています。

そこで、

  • 行き違い設備の新設・見直し
  • 線路や軌道の改良による安定輸送
  • 駅設備の改善やバリアフリー化

といった項目が「検討事項」として整理されています。

「増便したくても、設備が追いつかない」というローカル線あるあるを、きちんと認識した上での提案と言えそうです。


利用者目線の改善も忘れていない

もうひとつ見逃せないのが、サービス面の話。

  • 車内Wi-Fiなど通信環境の改善
  • ICカード利用エリアの拡大検討(狩留家駅~三次駅間)

など、毎日使うからこそ気になるポイントにも触れられています。

派手さはありませんが、「使い続けてもらうための地道な改善」がきちんと盛り込まれているのは好印象です。


「存続か廃止か」ではなく「どう使うか」へ

芸備線というと、どうしても
「利用が少ない」「存廃問題」
という文脈で語られがちです。

しかし今回の資料から感じるのは、

減らす前に、まず“使える路線”にしてみよう

という、少し前向きな姿勢。

すぐに毎時4本が実現するわけではありませんが、
段階的にでも利便性を高めていこうという考え方が示されたこと自体が、大きな一歩だと思います。


気になる点も・・・

今回の強化策では、利便性の向上について書かれていますが個人的には少し気になる点もありました。

  • 費用は誰が負担するのか

 今回の強化策をすべて実行に移すとすれば100億円以上の費用が必要となります。このレベルの金額をJR西日本単独で負担するのは現実的には考えられません。すると、国の補助金を活用するとしても沿線自治体(広島市・安芸高田市・三次市)の負担も結構大きな金額になると思われます。その場合に、3市が協力して事業を行うことができるのでしょうか。

  • 本数が増えたとしても減車が行われるのではないか

 新型車両の導入の項目でキハ40系・キハ47系の置き換え車両として1両単位で運行可能なハイブリッド式気動車のDEC700形が示されていました。現在、芸備線(三次駅~広島駅)は最低でもキハ40系・47系もしくはキハ120形2両での運行が行われています(ダイヤが乱れた場合は1両の事もありますが・・・)。もし、増便が行われた場合には1両への減車が行われるのではないかという危惧があります。1両でも利用者の積み残しが発生しなければ問題はないのですがどうでしょうか。

  • 芸備線の増便が広島県内の他の路線の利用者に対しての説明ができるのか

 芸備線で利用者の多い区間である(下深川駅~広島駅)の輸送密度は8,829(2024年度)、山陽本線(糸崎駅~白市駅)の輸送密度は9,548(2024年度)となっています。ところが、山陽本線(糸崎駅~白市駅)の日中の時間帯の列車本数は1時間あたり1本となっています。この状態で芸備線を増便することが他の地域の利用者の理解が得られるか心配です。特に、国からの補助金を投入することになった場合には公平性の観点から問題になるような気がします。

まとめ

地方ローカル線の話題は、どうしても暗くなりがちですが、
今回の芸備線のように「増やす」「良くする」方向の資料が出てくると、素直にワクワクします。

今後、実際にどこまで実現するのか。
そして、沿線の利用がどう変わるのか。

引き続き、芸備線の動きは注目していきたいですね。

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