「路線は必要、でも税金投入は反対」富山地方鉄道本線存続を巡る滑川市住民アンケートが示した厳しい現実

富山地方鉄道17480形 富山地方鉄道

地方鉄道の存続問題が全国各地で議論される中、富山県でも重要な動きがありました。

富山地方鉄道と滑川市は、利用者の減少や経営悪化が続く富山地方鉄道本線・滑川駅以東区間について住民アンケートを実施。その結果、多くの住民が「鉄道は必要」と考えている一方で、「税金による負担には慎重」という、地方鉄道が抱える難しい現実が浮かび上がりました。

全国のローカル線でも共通する課題だけに、今回の結果は富山県だけでなく、多くの地域にとって参考になる内容と言えそうです。

富山地鉄が廃線検討の滑川駅以東区間 約7割が「必要」 滑川市が市民対象にアンケート 富山県滑川市

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滑川駅以東区間の将来を考えるためのアンケート

富山地方鉄道では、利用者減少や人口減少などを背景に、経営状況が年々厳しさを増しています。

特に滑川駅から宇奈月温泉方面へ向かう区間は利用者が少なく、今後のあり方について県や沿線自治体、富山地方鉄道が検討を進めています。特に滑川駅~新魚津駅については、あいの風とやま鉄道が運営する「あいの風とやま鉄道線(旧北陸本線)」と並走しているため将来の存廃について議論の対象となっています。

今回、滑川市は市民の意向を把握するためアンケートを実施しました。

その結果、「滑川駅以東の鉄道は必要か」という問いには68.2%が「必要」と回答しました。

約7割の住民が鉄道の存在そのものは必要と考えていることになります。

一方で、「必要ではない」は31.8%でした。

数字だけを見ると、多くの住民が鉄道存続を望んでいるようにも見えます。

しかし、本当の課題はここからでした。

行政負担については意見が真っ二つ

鉄道を維持するためには、自治体による財政支援が欠かせません。

そこで「路線維持のため行政が財政負担を行うべきか」と質問したところ、

  • 負担すべき 49.1%
  • 負担すべきではない 50.9%

という結果となりました。

わずかな差ではありますが、「行政が負担すべきではない」が上回っています。

つまり、

「鉄道は必要だと思う」

という人が多い一方で、

「そのために税金を使うことには賛成できない」

という人も同じくらい存在していることになります。

これは地方鉄道では全国各地で見られる傾向ですが、今回のアンケートでもその構図がはっきりと数字で示された形です。

「必要」と「利用している」は必ずしも一致しない

さらに興味深いのが利用状況です。

アンケートでは、

  • 週1日以上利用する 3.2%
  • 月数回利用する 3.4%
  • 年に数回利用する 23.0%
  • 利用していない 70.4%

という結果になりました。

つまり、日常的に利用している人はごく少数で、7割以上は普段ほとんど利用していません。

それでも「必要」と回答する人が多い背景には、

「高齢者や学生のために残してほしい」

「自分は使わないが、地域には必要」

「災害時などを考えると鉄道は残しておくべき」

といった考えがあるものと思われます。

地方鉄道は利用者だけのためではなく、地域インフラとしての役割も期待されていることが、このアンケートからもうかがえます。

一部廃止でも大幅な改善にはならない

では、滑川駅以東の一部区間を廃止すれば問題は解決するのでしょうか。

これまで示された試算では、

  • 全線維持では年間約8億8,000万円の赤字
  • 滑川~新魚津間を廃止しても年間約7億4,000万円の赤字

とされています。

つまり、一部区間を廃止しても赤字は約1億4,000万円しか減らず、経営改善効果は限定的です。

そのため、「赤字だから一部区間を廃止すれば解決」という単純な話ではありません。

滑川駅以東だけでなく、路線全体の運営や公共交通全体のあり方を考える必要があります。

市長「鉄道だけではなく公共交通全体で考える」

滑川市の水野達夫市長は、アンケート結果について、

「鉄道を残すことだけが目的ではない。住民の移動をどう確保するかが重要であり、鉄道だけでなく公共交通全体として考える必要がある」

との考えを示しています。

これは近年、多くの自治体が掲げている「地域公共交通」の考え方と共通しています。

鉄道だけにこだわるのではなく、

  • 路線バス
  • デマンド交通
  • コミュニティバス
  • タクシーとの連携

なども含め、地域全体で持続可能な交通体系を構築していくという考え方です。

一方で、鉄道は一度廃止されると線路や施設が撤去され、将来的に復活することは極めて困難です。

そのため、住民や自治体にとっては非常に重い判断となります。

全国のローカル線にも共通する課題

今回のアンケート結果は、富山地方鉄道だけの問題ではありません。

近年はJR各社のローカル線をはじめ、第三セクター鉄道や私鉄でも利用者減少が続き、「維持か廃止か」が議論されるケースが増えています。

そこで共通して見られるのが、

  • 「鉄道は残してほしい」
  • 「しかし税金投入には慎重」
  • 「自分自身はあまり利用していない」

という住民意識です。

鉄道は地域にとって大切な存在である一方、その維持には多額の費用が必要です。人口減少や少子高齢化が進む中で、その費用を誰がどのように負担するのかという問題は、今後さらに大きなテーマになっていくでしょう。

今回のアンケートは、地域住民の率直な思いを数字で示した貴重な資料と言えます。

今後は、この結果を踏まえて県や沿線自治体、富山地方鉄道による協議が進められる見通しです。

滑川駅以東区間がどのような結論を迎えるのか。その議論は、全国のローカル線の将来を考える上でも注目されるものとなりそうです。

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