富山県高岡市を走るJR氷見線の雨晴駅が、改修に向けて動き始めます。
雨晴駅といえば、富山湾越しに立山連峰を望むことができる駅として知られています。近年は国内だけでなくインバウンドを含む観光客にも人気が高まっており、高岡市は2026年9月補正予算に、駅舎の改修に向けた基本方針を策定するための費用200万円を計上しました。
駅を単に「列車に乗り降りする場所」とするのではなく、雨晴海岸への観光の玄関口として活用していく取り組みが、さらに進むことになりそうです。
JR氷見線・雨晴駅を改修へ 富山県高岡市が補正予算案に事業費
中日新聞ホームページ
雨晴駅の改修に向けて基本方針を策定
高岡市が2026年8月に公表した令和8年度9月補正予算案では、「雨晴駅基本方針検討業務」として200万円が計上されています。
高岡市は、城端線・氷見線の再構築事業の実施にあわせ、駅を核とした賑わいの創出と鉄道利用の促進を図るため、インバウンドをはじめ多くの観光客が利用している雨晴駅について、現状や課題を踏まえた駅舎改修の基本方針を策定するとしています。
ここで注意したいのは、今回の200万円が駅舎の改修工事そのものに使われるわけではないという点です。
2026年度中に、どのような改修が必要なのか、どのように雨晴駅を活用していくのかといった基本方針をまとめるための予算と考えたほうがよさそうです。
雨晴駅から眺める富山湾と立山連峰
雨晴駅が観光客から注目されている理由の一つが、その立地です。
駅の近くには雨晴海岸があり、富山湾の向こうに立山連峰を望むことができます。
高岡市も雨晴海岸を観光地としてPRしており、海越しに標高3,000m級の立山連峰を眺められる景色を雨晴の大きな魅力として紹介しています。
そして、雨晴駅では2025年12月に、ホームに併設した展望デッキ「AMAHARASHI VIEW」の供用が始まりました。
この展望デッキは、雨晴駅の海岸側にある高岡行きホームに設置されたもので、海越しに能登半島や立山連峰を望める眺望スポットとなっています。
高岡市によると、面積は約43平方メートルで、腰掛けなども設置されています。城端線・氷見線の再構築事業と連動し、新型車両導入に伴う上りホームのかさ上げ工事の完成に合わせて整備されました。
駅そのものを観光資源として活用する取り組みは、すでに始まっているわけです。
雨晴駅の利用者は2年間で2倍以上に
今回の駅舎改修の背景には、雨晴駅を利用する観光客の増加があります。
読売新聞によると、2025年度の雨晴駅の乗車人数は6万9571人で、2023年度の2倍以上に増加しました。
また、富山県の統計によると、雨晴駅の2024年度の1日平均乗車人員は146人。年間では5万3290人となります。このうち定期利用は31人、定期外利用は115人で、定期外利用が約8割を占めています。
リンク:1nenkan_dat1002.xls(富山県ホームページ)
統計年鑑
インバウンドを含めた観光客の増加によって駅の利用が増える一方、周辺道路では観光客の増加による渋滞も課題になっているとされています。
車で雨晴海岸を訪れる人が増えるだけでは、道路や駐車場への負担も大きくなります。
そこで、雨晴駅を使って観光地を訪れてもらうことができれば、鉄道の利用促進と観光客の受け入れ環境改善を同時に進めることができます。
高岡市が今回の補正予算で「駅を核とした賑わいの創出と鉄道利用の促進」を明確に掲げているのも、このような背景があるのでしょう。
城端線・氷見線の経営移管とも関係する雨晴駅
雨晴駅の改修を考えるうえで、もう一つ注目したいのが城端線・氷見線の再構築です。
JR西日本は、城端線・氷見線について、あいの風とやま鉄道への経営移管を前提とした再構築を進めています。
2029年の経営移管後には、増便やパターンダイヤ化なども予定されており、これまで以上に地域の公共交通として利用しやすい路線になることが期待されています。
私も以前、城端線・氷見線のあいの風とやま鉄道への経営移管と増便・パターンダイヤ化について記事にしました。
氷見線は国の地域公共交通再構築事業の活用事例として紹介されています
国土交通省は、城端線・氷見線の再構築にあたって「社会資本整備総合交付金(地域公共交通再構築事業)」を活用する予定としており、対象設備には駅施設も含まれています。
城端線・氷見線では、JR西日本からあいの風とやま鉄道への事業主体変更を前提に、新型車両の導入や駅施設の改良、ICカード対応などが進められています。
雨晴駅の改修も、こうした再構築の流れの中で検討されることになりそうです。
鉄道の運行本数を増やすだけではなく、駅そのものを観光や地域の拠点として整備する。
城端線・氷見線では、こうしたハード・ソフト両面からの取り組みが進んでいることになります。
どのような駅に生まれ変わるのか
現時点では、具体的な駅舎の改修内容は決まっていません。
今回決まったのは、あくまで改修に向けた基本方針を策定することです。
一方で、報道ではコインロッカーやトイレなどの整備も検討されているとされています。
雨晴海岸を訪れる観光客にとっては、列車を降りてから観光地へ向かうまでの案内や待ち時間を過ごせる場所、トイレなどの設備も重要になります。
また、外国人観光客の利用が増えていることを考えると、多言語案内なども今後の検討項目になるかもしれません。
ただ、これは現時点で高岡市が決定した内容ではありません。
これから策定される基本方針の中で、雨晴駅にどのような機能を持たせるのかが決まっていくことになります。
「絶景を見るために鉄道に乗る」駅へ
鉄道駅というと、目的地へ移動するための場所というイメージが強いと思います。
しかし雨晴駅の場合は、駅そのものが観光の目的地の一つになりつつあります。
列車を降りて、ホームから富山湾を眺める。
さらに雨晴海岸へ歩いて向かう。
そして、再び氷見線の列車に乗って次の目的地へ向かう。
このような観光と鉄道を組み合わせた利用が増えれば、雨晴駅の存在そのものが氷見線を利用する理由の一つになるかもしれません。
すでにホームには「AMAHARASHI VIEW」という展望デッキも整備されています。
今後の駅舎改修によって、これがさらに観光客にとって利用しやすい駅になっていくのか注目したいところです。
城端線・氷見線の再構築、あいの風とやま鉄道への経営移管に向けた準備が進む中で、雨晴駅がどのような駅へ変わっていくのか。
富山湾と立山連峰を望む「絶景の駅」が、これからの氷見線の観光と地域交通を考えるうえで、一つのモデルになるのかもしれません。

