富山地方鉄道の鉄道線について、2027年度から全線を「みなし上下分離方式」で維持する方針が決まりました。
これまで本線や立山線、不二越・上滝線の一部区間では存廃が議論されていましたが、9月29日に開かれた「富山地方鉄道鉄道線再構築検討会」で、2027年度以降の事業構造について大筋で合意。
検討会終了後、富山地方鉄道の新庄一洋社長も一部区間の廃線手続きを行わず、全線を存続させる意向を示しました。
私がこれまで記事にしてきた富山地方鉄道の存廃問題も、ここで一つの区切りを迎えることになります。
【速報】富山地鉄・新庄社長が「全線存続」を表明 来年度から全線「みなし上下分離方式」へ 維持費全体の半分を公費負担
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富山地方鉄道は2027年度から「みなし上下分離」へ
富山県と沿線7市町村、富山地方鉄道などで構成する検討会では、2027年度から鉄道線全線を「みなし上下分離方式」とする方針が示されました。
富山地方鉄道の鉄道線は、本線・立山線・不二越・上滝線の4路線からなります。
実際の運行は、不二越線・上滝線は一体のものとして運行されています。
今回決まった「みなし上下分離」は、一般的な上下分離方式とは少し異なります。
鉄道会社が車両だけでなく線路などの鉄道施設も引き続き所有・管理し、そのインフラ部分の維持管理費について行政が公的に負担する仕組みです。
今回の方針では、富山地方鉄道がこれまで培ってきた施設管理のノウハウを活用しながら、行政が維持管理費の一部を負担する形になります。
富山県が9月29日の検討会で示した案では、2027年度から10年間のインフラ維持管理費を78億円と試算。
このうち半分にあたる39億円を富山地方鉄道が負担し、残る39億円を富山県と沿線7市町村が負担する案が大筋で了承されました。
つまり、年間では約7億8000万円のインフラ維持管理費を見込み、その半分にあたる約3億9000万円を公費で負担するイメージです。
富山地方鉄道は全線存続を表明
今回の決定によって、富山地方鉄道の鉄道線をめぐる存廃議論も大きく動きました。
これまで富山地方鉄道は、自治体から十分な支援が得られなければ一部区間の廃止を検討していました。
実際に、2025年11月に2026年度の存続が決まった一方、当時の社長からは「1年単位での延長は今後しない」という趣旨の発言がありました。
そのため、今回の検討会は、富山地方鉄道の鉄道線が今後も全線で維持されるのかを左右する重要な会合でした。
検討会終了後、新庄社長は今回の決定を受けて、一部区間の廃線手続きを行わず、全線を存続させる意向を表明しています。
これまで私は、
という記事や、
という記事で、9月29日の検討会が大きなポイントになると書いてきました。
今回、その「全線存続」の方向が正式に示されたことになります。
7市町村の負担割合はこれから
ただし、今回ですべての問題が解決したわけではありません。
公費負担となる39億円のうち、富山県と沿線7市町村が負担するのは合わせて19億5000万円です。
富山県と7市町村の負担は1対1とする案が大筋で了承されているため、7市町村全体では10年間で19億5000万円、年間では約1億9500万円を負担する計算になります。
しかし、7市町村それぞれがいくら負担するのかは、これから協議されます。
沿線7市町村は、
- 富山市(本線・立山線・不二越線・上滝線)
- 魚津市(本線)
- 滑川市(本線)
- 黒部市(本線)
- 舟橋村(本線)
- 上市町(本線)
- 立山町(本線・立山線・上滝線)
です。
これまで2026年度の支援についても、富山地方鉄道、富山県、沿線7市町村がそれぞれ3分の1ずつ負担するスキームが決められ、自治体側の負担割合については列車走行キロや財政規模などを考慮して協議することになっていました。
今後は2027年度以降の新しい仕組みに合わせて、自治体間でどのように負担を分けるのかが重要になります。
「残す」だけでなく「活かす」ことができるか
今回の全線存続は、富山地方鉄道にとって大きな転換点になります。
しかし、鉄道を存続させることだけが再構築事業の目的ではありません。
富山地方鉄道の新庄社長は、今年7月の取材で、今後の具体策として
- 運賃の値下げ
- 運行本数の増加
- 他社との連携による鉄道ネットワークの拡充
を挙げています。
つまり、今後の議論では「どの区間を残すのか」ではなく、
「全線を残した鉄道を、どうすれば利用される鉄道にできるのか」
という段階に入っていくことになります。
これは今回の再構築事業を見るうえで、かなり重要なポイントだと思います。
例えば運賃を下げれば利用者が増える可能性があります。
列車本数を増やせば、通勤・通学だけでなく、買い物や観光などで利用しやすくなるでしょう。
また、あいの風とやま鉄道など他社との連携が進めば、富山県内の鉄道ネットワーク全体としての使いやすさを高められる可能性があります。
もちろん、これらはまだ「実現したサービス」ではありません。
今後、再構築事業の具体的な計画の中で、どのような利便性向上策が盛り込まれるのかを見ていく必要があります。
滑川~魚津間では運賃だけでなく乗り換えもポイントに
運賃は、あいの風とやま鉄道が240円・富山地方鉄道が480円
富山地方鉄道が今後どのように利便性を高めていくのかを考えるうえで、あいの風とやま鉄道と並行して走る区間にも注目してみたいと思います。
例えば、滑川駅から魚津駅までの区間です。
あいの風とやま鉄道では滑川駅から魚津駅まで240円。
一方、富山地方鉄道では滑川駅から新魚津駅まで480円となっています。
同じ滑川市と魚津市を結ぶ並行区間ですが、運賃は倍になります。
もちろん、両社では路線の成り立ちや運行本数などが異なるため、単純に運賃だけを比較することはできません。
乗り換えには地下道を通る必要があります
もう一つ気になるのが、両社を乗り換える際の駅の構造です。
魚津では、あいの風とやま鉄道の魚津駅と富山地方鉄道の新魚津駅が隣接しています。
ただし、両駅は同じ駅舎内で直接乗り換える構造ではありません。
富山地方鉄道公認の「富山地鉄の鉄道アテンダント日誌」では、富山地方鉄道とあいの風とやま鉄道の乗り換え駅となる新魚津駅と魚津駅・滑川駅での乗り換えについて、線路の下を通る地下道を利用することが紹介されています。
こうした乗り換え方法を考えると、今後の「利便性向上」は単に列車を増やしたり運賃を下げたりするだけではなく、他社線との乗り継ぎをどれだけ分かりやすく、利用しやすくできるかという点も重要になりそうです。
富山地方鉄道の鉄道線を全線存続させることが決まった今、次の段階では「どうすれば利用者が使いやすい鉄道になるのか」という視点も必要になります。
運賃、列車本数、乗り換えのしやすさ。
こうした一つ一つの改善を積み重ねることが、再構築事業の大きなテーマになっていくのではないでしょうか。
全線存続の次は「利用される鉄道」へ
富山地方鉄道の鉄道線については、これまで「廃止されるのか、存続するのか」という視点でニュースを見ることが多くなっていました。
今回、2027年度からの「みなし上下分離」の方向が決まり、少なくとも存廃問題については大きな区切りを迎えました。
ただ、これはゴールというより、再構築のスタート地点と考えたほうがよさそうです。
これからは、
7市町村がどのような割合で負担するのか
富山県と自治体がどこまで費用を負担するのか
運賃値下げをどのように実現するのか
列車の増便をどの区間・時間帯で行うのか
他社との連携をどのように進めるのか
といった具体的な議論が中心になっていくでしょう。
富山地方鉄道の鉄道線を「残す」ことが決まったからこそ、次は「残した鉄道をどう活かすのか」が問われることになります。
岡山県から見ると少し遠い地域の話ではありますが、人口減少や利用者減少を背景にローカル線の存続が課題となっている地域は全国にあります。
自治体と鉄道会社がどのような役割分担で鉄道を維持し、その先の利用促進まで進めていくのか。
富山地方鉄道の今後の取り組みは、同じような課題を抱える地域にとっても参考になる事例になりそうです。
今後、具体的な再構築計画や利便性向上策が明らかになった段階で、改めて取り上げたいと思います。



