2026年7月3日、JR北海道 2025年度 輸送密度・営業係数・収支データ 公表資料が公開されました。 全体的な傾向としては2024年度より悪化しており経営的に苦しい状況であることに変わりはないようです。
黄線区については、JR北海道よし上下分離を求めていく方針が発表されていましたが、現在協議は一時中断の状況にあります。しかし、今回の発表があったことで再び自治体との協議が始まるのではないかと思われます。
JR北海道ホームページ
「輸送密度」「営業係数」とは? そして「黄線区」って何?
まず数字の話を理解するために、言葉の説明からしたいと思います。鉄道ファンの方はよくご存じだと思いますので読み飛ばしてください。
輸送密度とは、
→「1日に1kmあたり何人が列車を利用しているか」を示す値です。
これは単に利用者数を見るだけでなく、「路線が地域でどれだけ生活・経済に根ざしているか」を端的に示す重要な指標です。
路線の状況にもよりますが、一般的には5,000以上が黒字の目安とされています。また、国鉄末期の赤字路線の廃線に際には、4,000が目安とされました(今のように区間ごとの数字ではなく、路線ごとに判断したため特例がたくさんありました)。JR以外の大手私鉄の場合は、2,000が路線の存廃の基準となる事が多いようです(廃線が決まった名鉄広見線(新可児駅~御嵩駅)の場合は、コロナ前の2017年の輸送密度は1,904でした)。
JR北海道ではこの輸送密度を基準にして、路線を区分しています:
| 色分け | 輸送密度 | 意味 |
|---|---|---|
| 🔴 赤線区 | 200人未満 | 利用が極めて少なく、経営維持が非常に困難 |
| 🟡 黄線区 | 200〜2,000人 | 中間ゾーン。維持は可能だが経営負担が大きい |
| 🟢 緑線区 | 2,000人以上 | 利用が多く、比較的安定 |
※ 赤線区は2026年3月31日の留萌本線の廃線をもってすべて廃線となったため残っていません。現在は「黄線区」が大きな焦点となっています。
営業係数とは、
→「100円の収入を得るために必要な経費」を示す値です。JR北海道では、総務部門の経費を入れた数値と入れない数値の両方を発表していますが、他のJRでは総務部門の経費を入れない値を公表していることが多いためここでは入れない値を使用します。こちらは、単純に100より小さければ黒字・100を越えていれば赤字となります。
黄線区8路線 2025年度の輸送密度 — 苦戦の数字
石北本線は、新旭川駅~網走駅までのすべての区間が黄線区となっていますが、今回の発表では、新旭川駅~上川駅・上川駅~網走駅で分けて発表していますので別々に表にしています。
| 路線 | 輸送密度 2025 | 輸送密度 2024 | 営業係数 2025 | 営業係数 2024 |
| 宗谷本線(名寄~稚内) | 276 | 273 | 793 | 710 |
| 根室本線(花咲線・釧路~根室) | 201 | 217 | 732 | 704 |
| 根室本線(滝川~富良野) | 427 | 457 | 767 | 705 |
| 室蘭本線(沼ノ端~岩見沢) | 303 | 327 | 1,012 | 1,012 |
| 釧網本線(東釧路~網走) | 370 | 378 | 531 | 573 |
| 日高本線(苫小牧~鵡川) | 424 | 388 | 676 | 990 |
| 石北本線(新旭川~上川) | 822 | 843 | 512 | 454 |
| 石北本線(上川~網走) | 614 | 627 | 582 | 532 |
| 富良野線(富良野~旭川) | 1,213 | 1,304 | 399 | 361 |
公表された2025年度の数字を見ると、8つの黄線区は依然として低い利用水準にとどまっています。これは、北海道の広大な土地と人口減少、モータリゼーション(自動車利用の増加)などの影響が続いていることを如実に示しています。
日高本線は、2014年度と2015年度とで営業係数が大きく改善していますが、列車本数(下り8本・上り9本)・列車編成・使用車両(キハ40またはキハ150)に変更がないため何故かはよくわかりません。
石北本線では、特急「大雪」を特別快速「大雪」に格下げして経費の削減を図りましたが、営業係数の改善には繋がりませんでした。
営業係数の“重み” — 赤字の構造
輸送密度の低さは、そのまま会社の収支にも影響します。JR北海道の2025年度データでは、黄線区は営業収益に対して大きな営業費用を抱えており、収支面で大きな赤字が続いています。
これはつまり…
→ 利用者からの収入だけでは、線路・駅・車両の維持費や人件費などの「固定費」を賄いきれないということ。人口減と利用減が続けば、いつまでも同じ補填をし続けることは難しくなっています。
どうしてこうなった? 背景を探る
数字だけ見ると「ただ利用者が少ない」ように思えますが、背景にはいくつもの要因があります。
地域別輸送密度が低い要因として、研究でも以下の点が示唆されています:
- 沿線人口の少なさ
- 列車の運行本数の少なさ
→ どちらも利用者を増やす力の弱さにつながっています。
一方で運賃の高さは利用減の直接的な要因とは言えないという分析もあり、地域生活の交通需要全体としての減少が根本的な課題であることが示唆されています。
これからの選択肢 — 「維持」と「構造改革」
JR北海道は黄線区について、ただ「存続したい」と言うだけではなく、方向性も打ち出しています。
主なポイントは次の4つ:
- 輸送体系の見直し(本数調整など)
- 担い手の確保(沿線自治体との連携強化)
- 鉄道資産の譲渡による負担軽減
- 上下分離方式の検討
※ 運行をJRが担当し、線路や施設は自治体等が所有する方式。
これらは単に「維持のための方策」を並べただけでなく、地域交通の在り方そのものを見直す提案でもあります。
4番の上下分離については、以前にJR北海道が沿線自治体に打診を行いましたが、反発もあり現在は交渉が中断している状況です。
地域との共存 — みんなで守る鉄路の未来
もちろん、「列車が走り続けること」は地域の人々にとって大きな安心材料でもあります。病院や学校、通勤・通学、観光…列車が果たす役割は数字以上に深いものです。
JR北海道も地域の自治体や住民と一体となって、「日常生活に欠かせない交通としての鉄道」を維持しようと模索しているのです。
最後に — 苦しい今だからこそ知ってほしいこと
今回の公表データは、単なる統計ではありません。
それは、地域の暮らしと鉄道会社の未来を繋ぐ大きな問いそのもの。
ブログ読者のみなさんへ──
数字の裏にある、北海道の人々の暮らし、地域交通の選択、そして鉄道を愛するがゆえの苦悩と希望を、ぜひ感じてもらえたら幸いです。



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