JR北海道が単独では維持することが困難としている「黄線区」をめぐり、沿線自治体との協議が膠着状態となっています。
JR北海道は今年4月、黄線区を維持するための方法として「上下分離方式」などを提示しましたが、沿線自治体から反発や慎重論が相次ぎ、具体的な協議には入れない状態となっています。
こうした状況を受け、JR北海道は国土交通省と北海道に対し、自治体との調整役を求める意向です。
JR北海道が赤字8区間「黄線区」の調整役を国と道に求める意向 「上下分離方式」に自治体が強い反対
HTBホームページ
(2026年9月16日追記)JR北海道は、「黄線区」の上下分離案について撤回をしました。
JR北海道の「黄線区」とは?
JR北海道では、輸送密度が200人以上2,000人未満の線区を「黄色線区」としています。
現在の黄線区は次の8線区です。
| 線区 | 区間 | 輸送密度 2025年度 |
| 釧網本線 | 東釧路~網走 | 370 |
| 富良野線 | 富良野~旭川 | 1,213 |
| 花咲線(根室本線) | 釧路~根室 | 201 |
| 根室本線 | 滝川~富良野 | 427 |
| 石北本線 | 新旭川~上川 | 822 |
| 上川~網走 | 614 | |
| 室蘭本線 | 沼ノ端~岩見沢 | 303 |
| 宗谷本線 | 旭川~名寄 | 1,154 |
| 名寄~稚内 | 276 | |
| 日高本線 | 苫小牧~鵡川 | 424 |
JR北海道は、これらの線区について「当社単独では維持することが困難」としており、地域とともに持続的な交通のあり方を検討してきました。
線区ごとの利用状況や収支などについては、JR北海道が資料を公開しています。
ここで確認できる資料を見てみると、黄線区が北海道の広い範囲に存在していることも分かります。
今年4月に「上下分離方式」などを提案
黄線区をめぐっては、JR北海道が2026年4月に「黄8線区を維持する仕組みの構築に向けた当社の考えについて」を公表しました。
その中で示されたのが、以下のような4つの方向性です。
- 利用状況に応じた輸送体系のさらなる見直し
- 持続的な運行に必要となる担い手の確保
- 鉄道資産を自治体へ譲渡することによる固定資産税の負担軽減
- 運行会社と鉄道資産を保有する法人などを分ける「上下分離方式」
自治体にとっては「新たな負担」が問題に
今回の問題を考えるうえで重要なのが、自治体側の負担です。現在の黄線区はJR北海道が鉄道事業者として運行しているため、沿線自治体が鉄道の維持費を直接負担しているわけではありません。
上下分離をするとすれば自治体は、毎年数億円規模の支出が発生します。また、大規模災害等により鉄道施設に被害が発生した場合の負担は自治体となります。
自治体の財政規模が数十億円程度であれば、毎年億単位の支出が確実に発生する事業を抱えることは決して容易ではありません。
国などからの交付金や支援制度によって自治体が全額を負担するわけではないとしても、鉄道施設は橋梁や線路など大規模な設備を抱えているため、災害による被害や大規模修繕などで想定外の負担が発生する可能性もあります。
こうした将来のリスクまで考えると、自治体が上下分離方式を簡単に受け入れられないのも無理はありません。
同じことは名古屋鉄道広見線の新可児~御嵩間でも見られました。自治体が施設維持費を負担する「みなし上下分離方式」で存続を目指しましたが、負担額が大きな問題となり、2026年5月には沿線自治体が存続を断念しています。
一方、平成筑豊鉄道は第三セクターのため、もともと自治体などが経営を支えてきました。2026年3月の協議では、鉄道維持、BRT、路線バスを比較し、30年間の赤字額が最も少ない路線バスへの転換が選ばれています。
こうして見ると、黄線区の問題は単純に「鉄道を残すか廃止するか」ではなく、誰がどの費用を負担するのかという問題でもあることが分かります。
自治体との協議は事実上の見送りに
実際に沿線自治体からは反発や慎重論が相次ぎ、JR北海道は5月、自治体との協議を当面見合わせる考えを示していました。
そして今回、HTBが報じたところによると、JR北海道は国土交通省と北海道に対して、自治体との調整役を求める意向であることが分かりました。
JR北海道の綿貫泰之社長は、黄線区について「抜本的な収支改善にはいたらず、黄8線区の収支は依然として厳しく維持困難な状況が続いている」と説明しています。
2025年度の黄線区合計の赤字額は約156億円で、前年度から約8億円悪化しました。
JR北海道は国から、2026年度末までに黄線区について抜本的な経営改善策をまとめるよう求められています。
期限が迫る中で、JR北海道だけで自治体との協議を進めることが難しくなっていることが今回の動きにつながったとみられます。
上下分離方式はいったん議論の対象から外す
今回の動きで注目したいのは、JR北海道が国や北海道に調整役を求める一方、上下分離方式についてはいったん議論の対象から外す方向になっていることです。
HTBによると、10月には国や北海道を交えた初会合が開かれる見通しです。
つまり、4月にJR北海道が示した案をそのまま自治体に受け入れてもらうという段階から、まずは国・北海道・JR北海道・自治体などの関係者が、黄線区をどう維持していくのかを改めて話し合う段階へ戻ったことになります。
これは問題が解決したということではありません。
むしろ、これまで利用促進や経費削減などを進めても大幅な収支改善には至らず、JR北海道単独での維持が難しい一方、自治体側も大きな負担を簡単には引き受けられないという、難しい状況が続いています。
まとめ 国と北海道はどこまで調整できるのか
今回、国と北海道が調整役となることで、協議が前に進む可能性はあります。
国土交通省もこれまで、黄線区についてJR北海道と地域の関係者が一体となり、線区ごとに抜本的な改善方策をまとめることを求めてきました。
一方で、国がどこまで財政的な支援を行うのか、自治体がどこまで負担するのか、JR北海道がどこまで経営努力を続けるのかなど、簡単には決められない問題も残っています。
北海道の鉄道は、地域住民の移動手段だけでなく、観光や物流などにも関係します。
特に石北本線や宗谷本線などは、都市間を結ぶ鉄道としての役割もあり、単純に一つの線区の赤字だけで判断することが難しい面があります。
だからこそ、JR北海道と沿線自治体だけでなく、国や北海道も加わった議論が必要なのかもしれません。
2027年3月までの改善策取りまとめに向けて、10月に予定される協議がどのような議論のスタートになるのか、今後の動きに注目したいところです。





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