JR四国が、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の輸送実績を公表しました。
営業収益や黒字決算が注目されがちですが、地方鉄道の実態をより端的に示す指標が「輸送密度」です。
今回はこの輸送密度に注目し、JR四国の現状を読み解いていきます。
JR四国ホームページ
輸送密度とは何か?なぜ重要なのか
輸送密度とは、
「1kmあたり1日平均で何人が利用しているか」を示す数値です。
- 路線の利用実態を端的に表す
- 運行本数・設備維持・将来の存廃議論に直結
- 国や自治体の支援議論でも重視される指標
特にJR四国のように赤字ローカル線を多く抱える事業者にとって、輸送密度は経営の生命線とも言える存在です。
2025年度JR四国輸送密度
| 路面 | 区間 | 輸送密度 (2025) | 輸送密度 (2024) | 対前年度比(%) |
| 予土線 | 北宇和島~若井 | 107 | 118 | 90.6 |
| 牟岐線 | 牟岐~阿波海岸 | 183 | 150 | 121.9 |
| 予讃線(海線) | 向井原~伊予大洲 | 319 | 341 | 93.8 |
| 牟岐線 | 阿南~牟岐 | 395 | 405 | 97.5 |
| 土讃線 | 須崎~窪川 | 761 | 724 | 105.1 |
| 鳴門線 | 池谷~鳴門 | 1,818 | 1,823 | 99.8 |
| 徳島線 | 佐古~佃 | 2,175 | 2,205 | 98.6 |
| 予讃線 | 松山~宇和島 | 2,306 | 2,306 | 100.0 |
| 土讃線 | 琴平~高知 | 2,516 | 2,452 | 102.6 |
| 内子線 | 内子~新谷 | 2,780 | 2,779 | 100.0 |
| 土讃線 | 高知~須崎 | 3,007 | 3,028 | 99.3 |
| 高徳線 | 引田~徳島 | 3,172 | 3,138 | 100.8 |
| 牟岐線 | 徳島~阿南 | 3,870 | 3,844 | 100.7 |
| 高徳線 | 高松~引田 | 4,174 | 4,139 | 100.8 |
| 予讃線 | 観音寺~今治 | 5,064 | 4,977 | 101.7 |
| 土讃線 | 多度津~琴平 | 5,114 | 4,914 | 104.1 |
| 予讃線 | 今治~松山 | 6,217 | 6,133 | 101.4 |
| 予讃線 | 多度津~観音寺 | 8,127 | 8,006 | 101.5 |
| 予讃線 | 高松~多度津 | 24,085 | 22,927 | 105.1 |
| 本四備讃線 | 児島~宇多津 | 24,427 | 23,120 | 105.7 |
2025年度の全体傾向|回復基調だが「まだら模様」
2025年度は、観光需要の回復や都市部利用の戻りにより、
- 幹線区間や都市近郊では 前年度比で改善
- ただしコロナ前(2018〜2019年度)には 未達の線区も多い
という「回復はしているが均一ではない」状況です。
特に注目すべきなのは、前年を下回った路線が複数存在する点です。
経営の苦しさが際立つ「前年割れ3路線」
2025年度の輸送密度では、特に厳しい状況が続く3路線が浮き彫りになりました。
① 予土線(北宇和島〜若井)
- JR四国でも屈指の低輸送密度路線
- 観光列車の投入があるものの、日常利用は伸び悩み
- 沿線人口減少の影響が非常に大きい
→観光施策だけでは輸送密度の底上げが難しい ことを示しています。路線の存廃については、JR四国の中で一番厳しい状況にあります。
② 牟岐線(阿南〜阿波海南)
- 学生利用の減少が顕著
- 自動車依存の進行で定期利用が縮小
- 前年度比でも利用が減少
→通学・通勤需要の減少がそのまま輸送密度に反映 された形です。牟岐駅~阿波海岸駅は、2024年度の数値より増加していますが、路線距離の関係上阿南駅~阿波海岸駅の区間で見た場合は減少となります。増加の原因としては、特急「むろと」廃止の関係で鉄道ファンの利用者数が増加したことが考えられます。
③ 予讃線(向井原〜伊予大洲・海回り)
- 観光需要はあるが、日常利用が戻らず
- バイパス道路整備による競合も影響
- 幹線の一部でありながら厳しい数値
→「幹線=安泰」ではない ことを示す象徴的な区間です。景気の美しいことで知られる「下灘駅」がある区間ですが、利用者数的には苦しい状況となっています。
JR四国は、1日あたりの利用者数が1,000人未満となっている路線について将来のあり方を沿線自治体と話し合う方針を示しています。
黒字決算でも輸送密度は別問題
JR四国は2025年度、
非鉄道事業(不動産・ホテル・物販など)の好調により黒字を確保しました。
しかし――
- 鉄道単体では依然として厳しい線区が多数
- 輸送密度の低下は将来的な
- 減便
- 運行体系見直し
- 自治体との協議
に直結する可能性
「決算が良い=鉄道が安泰」ではないことが、輸送密度を見るとよく分かります。
まとめ
今回のデータから見えてくるのは、
- 回復している線区と、取り残される線区の二極化
- 観光頼みでは限界がある路線の存在
- 日常利用をどう確保するかという根本課題
です。
今後は、
「どれだけ乗られているか」=輸送密度を軸に、
- 路線の役割整理
- 自治体との費用負担議論
- 観光・生活輸送のバランス
が、より現実的なテーマになっていくと考えられます。
2025年度のJR四国は、決算上は黒字を維持し、回復基調が続いているように見えます。
しかし、輸送密度という指標に目を向けると、路線ごとの明暗はよりはっきりと浮かび上がります。
都市部や幹線の一部では利用回復が見られる一方、
予土線・牟岐線・予讃線の一部区間などでは前年を下回り、
日常利用の減少という根本的な課題が解消されていない現実が示されました。
輸送密度は、単なる数字ではなく、
その路線が「どれだけ生活に使われているか」を示す指標です。
今後の路線維持や運行体系の議論において、
この数字がより重みを持って語られていくことになりそうです。



